供養の一本門松、今年も 住民有志が代官墓碑に飾り付け 人吉市

一本門松を飾り付ける地元住民=人吉市

 鎌倉時代初期の人吉地方の代官で、相良氏に討ち取られた矢瀬主馬佑[やぜしゅめのすけ]を供養しようと、人吉市の住民有志が23日、同市東間下町の胸川沿いにある墓碑に「一本門松」を飾った。

 矢瀬は平家の家人。源頼朝の命で入国した相良長頼に、人吉城の明け渡しを拒否したことから、1198年12月、胸川沿いで暗殺された。門松を作っていた矢瀬の家臣はその一報を聞き、作った一本を残して駆けつけたという。

 この故事にちなみ、東間下町、同上町では正月に「一本門松」を飾る風習が残る。地元の山崎義則さん(85)ら有志は1995年から毎年墓碑の右側に高さ約2・5メートルの門松を飾り、左側には土を盛って供養を続けている。

 この日は10人がナンテンや松、ササを使って門松を飾り、墓碑を清掃した。山崎さんは「今年も立派にできた。今後もこの風習を残して矢瀬氏のことを伝えたい」と話した。(小山智史)

熊本日日新聞 2019年12月26日掲載

© 株式会社熊本日日新聞社