老朽化した公共施設の点検は「ドローン」とAIで 二宮町

空中から施設の点検作業をする小型無人機ドローン=二宮町生涯学習センター「ラディアン」

 老朽化した公共施設の点検に小型無人機ドローンによる空撮と人工知能(AI)による解析を駆使する取り組みが、二宮町で始まった。官民による先端技術の活用を目指す県のモデル事業の一環で、県内自治体では初の試み。作業日数の短縮やコスト削減を狙い、実用化に向けてデータを蓄積していく。

 9日午前、二宮町生涯学習センター「ラディアン」の上空を1機のドローンが風切り音を響かせて飛んだ。ドローンを活用したビジネス展開を支援する「パーソルプロセス&テクノロジー」(東京都江東区)のスタッフが操作。ドローンは空中を旋回しながらラディアンの外壁にカメラを向け、写真に収めた。

 地上3階建て、高さ25メートルの南北の外壁をくまなく撮影するのに約1時間。空撮した画像データは同社で3Dモデルに再現し、AIがひび割れやさびなどを自動的に検出する。視覚化した上で年明けにデータを町に提供するという。

 本来、詳細な点検には足場を組んで数週間にわたる作業が必要となる。空撮に立ち会った町担当者は「本来の点検作業と比べれば時間も雲泥の差」。同社の担当者は「足場を組む点検は約1千万円かかる。ドローンを使えば作業は1日で終わり、費用も200万~300万円で済む」とメリットを強調する。

 県は官民による「かながわ前提社会ネットワーク」の初会合を9月に開くなど、社会的課題解決に向けたドローン活用を目指している。11月には企業と自治体が連携した初のモデル事業としてパーソル社の提案を含む7事業を選定した。

 その第1弾の舞台となった二宮町。2000年に完成したラディアンは開館20周年も控え大規模改修も検討しなければいけない時期に差し掛かっており“渡りに船”。これまで年1回は目視で点検してきたが、高所部分は手つかずだった。

 町は今回のデータを基にドローンの有用性について検証し、今後の本格的な活用を検討していくという。パーソル社の担当者は「ドローンのマーケットとしては施設点検のニーズが最も高い。災害対策も含め、ドローンの活用が広まってくれれば」と期待した。

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