地元の人に支えられ30年 割烹民宿「波ま夕」閉店

長崎県外出身の夫婦が切り盛り

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「支えてくれた皆さんのおかげでやってこれた」と話す原田さん夫妻=西海市大島町寺島

 長崎県西海市大島町寺島にある割烹民宿「波(は)ま夕」が31日、多くの常連客に惜しまれながら30年間の歴史に幕を閉じる。熊本県出身の店主、原田親(ちかし)さん(71)と佐賀県出身の妻静美さん(67)が二人三脚で営み、地域住民らに親しまれてきたが、「体力があるうちに幕を引きたい」と節目の閉店を決めた。

 開業は1989年。大島町の大島アイランドホテル長崎(現・オリーブベイホテル)で料理長を務めていた原田さんが「師と仰ぐ人が独立したのが41歳。その年に近づき、自分を生かすには料理しかない」と決意。大島と橋でつながったばかりの小さな島、寺島に土地を購入し、六つの客室と食堂を備えた「波ま夕」を静美さんとともに始めた。
 地魚の刺し身や茶わん蒸しなど7品の昼定食を680円で提供。たちまち人気メニューになり、お客が大島から橋を渡って訪ねてきた。長崎市のホテルや福岡市の料亭などでも経験を積んでいた原田さんの飾り切りなど繊細な包丁さばきも評判となり、冠婚葬祭でも利用されるようになった。
 そして99年、大島大橋の開通で寺島も本土の仲間入りを果たし、お客はさらに「どっと増えた」(原田さん)。
 西海市の観光振興にも力を入れた。西彼大島町時代には地元の観光協会長を務め、2005年の合併後は「さいかい丼フェア」の主催団体の代表として、16年までテレビ出演などPR活動に奔走した。
 原田さん夫妻が、今までお世話になったお客のために取り組んだ最後の料理は、おせち料理とちゃんこ鍋の仕出し。原田さんは「縁もゆかりもない土地だったが、地元の人たちが30年間支えてくれた。本当にあっという間だった。3人の子どもは独立し、もういいだろうと。大好きな料理を続けさせてくれた妻にも感謝したい」と笑顔で話した。引退後は釣りや旅行を楽しむという。