増税でおせち料理や帰省費用は節約傾向?でもお年玉は減らせない事情

消費税率が8%から10%に引き上げられて約3ヵ月。キャッシュレス決済によるポイント還元制度の導入がありましたが、消費マインドの冷え込みは続いており、いまだに回復する兆しが見えません。

年末年始はお年玉、帰省の交通費、おせち料理など出費が重なるシーズン。消費増税は、これらにどのような影響を与えるのでしょうか。


おせちの品数・ランクを落とす声が多数

全国スーパーマーケット協会が12月20日に発表した調査によると、消費増税後の消費についてスーパー業者の約4割が「想定よりも悪い」と回答。今後の消費回復についての予想も、「しばらく回復しない」が6割を超えています。

また、経済産業省が27日に発表した11月の商業動態統計(速報)でも、小売販売額は前年同月比2.1%減と2ヵ月連続で減少しています。増税後、消費がなかなか回復しない様子がうかがえます。

こうした中で増税後に初めて迎える年末年始。ONE COMPATHの運営する電子チラシサービス「Shufoo!(シュフー)」が実施した意識調査によると、消費増税後の年末年始の出費について「影響がある」「やや影響がある」と答えた人が70.6%に上っています。

特におせち料理は品数やランクに影響があるようで、「おせちの品数を減らす」(50 代)、「おせちのランクを下げる」(30 代)という声が多くあったそうです。この調査は同サービスのユーザーである既婚女性8,759人を対象に実施したもので、増税後のお金のやり繰りに苦心する主婦の生活が浮かび上がります。

おせち料理はどこでどんなものを購入?

増税の煽りを受けそうなおせち料理ですが、どのように用意するのかについても、同調査で質問しています。「一部を作り一部を購入予定」が最多の34.2%で、「すべて購入する予定」が12.1%、「すべて作る予定」が4.3%という結果に。一方、「作らないし購入もしない」が37.6%、「わからない」は11.7%となっています。

購入予定の人におせちの購入場所について聞くと(複数回答)、70.1%が「スーパーマーケット」と回答。次いで「百貨店・デパート」(18.0%)、「インターネット販売」(12.6%)という順になっています。

この結果について「重箱詰めおせちのセットが主流ですが、伊達巻や栗きんとん、数の子など食べたいものを単品購入するニーズも増えているため、気軽に購入できるスーパーマーケットが重宝されていると思われます」と、同調査では分析しています。

一方、インターネット通販でおせちを購入する人も増えています。楽天の発表によると、楽天市場のおせち関連商品の売り上げは、2018年は2年前に比べて約1.2倍に成長しているそうです。

2018年の販売実績は冷凍おせちが8割以上を占め、冷蔵を大きく上回っています。作りたてをすぐ冷凍しているため日持ちするのが好評で、「三段重」「3〜4人前」「1万円〜1万5,000円」が人気のラインナップといいます。

帰省の交通費も節約志向?

前出のシュフーの調査によると、消費増税による影響を受けているもう1つの出費が「帰省の交通費」です。「帰省先の宿泊をやめ日帰りにする」(40 代)、「ガソリン代が高くなるので公共交通機関を使おうか迷っている」(30 代)と、例年より帰省の費用を抑えようとする動きもあるといいます。

その結果、「年末年始を通した、もっとも高い出費は何になりそうですか?」という質問に関して、「帰省の交通費」が昨年の1位から3位にランクダウン。代わりに昨年3位の「お年玉」が今年はランクアップして、年末年始を通したもっとも高い出費となったといいます。

お年玉に関しては「ケチなことはしたくはない」(50 代)という声があるといい、消費増税でも子供のお年玉は減らしたくない心情が表れているのかもしれません。

世帯年収減でもお年玉の額は変えず

住信SBIネット銀行が12月20日に発表した「お年玉に関する意識調査 2020」を見ても、「お年玉をあげる予定がある」と答えた人は67.8%と、前年調査結果(67.3%)からほぼ横ばい。お年玉の平均支出予定額も2万6,642円と、前年の2万6,166円とあまり差はありません。

一方で、2019年の世帯所得が「減った」と回答した人が24.8%と約4分の1を占めており、「世帯年収が減ってもお年玉の額はなかなか変えられない様子がうかがえます」と、同行は分析しています。

頭を悩ませがちな年齢ごとのお年玉の相場に関しては、未就学児「1,000円以下」、小学校低学年「3,000円以下」、小学校高学年「5,000円以下」が最多。中学生になると「〜5,000円」派と「〜1万円」派に分かれ、高校生以上になると「〜1万円」が相場といいます。

つまり、子供の年齢が上がっていくにつれて、お年玉の相場の水準も切り上がっている様子が読み取れます。その結果、お年玉の金額は下方硬直的になり、世帯年収が減ったり、増税による負担が増えたとしても、金額を簡単には減らすことが難しくなっているようです。

例年であれば財布のひもが緩くなる年末年始ですが、消費増税が家計に影を落としています。2020年は東京五輪など注目のイベントが盛りだくさん。これらをテコに、消費を回復させることができるでしょうか。

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