雲仙・農業地帯で児童増加 若手後継者が定着

各校の児童数の推移

 長崎県雲仙市の農業地帯にある複数の市立小学校で、児童数の増加が続いている。山間部や農村部の多くが人口減や少子化に直面している中、基盤整備などが進んで農業所得が安定し、若手後継者が増えたことなどが背景にあるようだ。こうした動きを全域に広げようと、市も新たな子育て支援策で後押ししている。

 11月30日、国見町の丘陵地帯にある八斗木小。児童と保護者の約100人が恒例の餅つき大会で盛り上がっていた。5年の堀田美姫さん(10)と酒井羅夢さん(10)は「大人も子どももみんな集まるので楽しい。行事の中で一番好き」と声を弾ませた。
 140年以上の歴史がある同校は1960年前後に児童数が200人を超えたが、その後は減少が続き、2012年度にわずか40人になった。しかし、そこから増加に転じ、昨年度は60人に達して複式学級を解消。本年度はさらに増えて69人になり、5年連続の増加となった。
 市教委によると、今後3年間は増える見込み。「山間部の小学校なのに、子どもの数が増えている」。そんなうわさを聞き、県や市外の教育関係者も視察に訪れている。
 市南部にある南串山町の2校も児童数が増えている。いずれも段々畑などに囲まれた自然豊かな地域だ。南串第一小は10年前に84人だった児童数が急激に減少し、数年前に40人台に。しかし本年度は53人に回復し、4年後には再び80人台に戻る見通し。南串第二小も同様の傾向が見られ、今後5年ほどは増加が続くという。
 市中央部の吾妻町にある川床小でも増加が始まった。10年前に60人だった児童数は緩やかに減少を続けて30人台に。ところが本年度は4年ぶりに40人台に回復し、3年後には50人を超えると予想されている。
 これらの3地区はともに農業が盛ん。八斗木地区はブランド品「八斗木白葱」、吾妻町はブロッコリー、南串山町はジャガイモを主力に、質の高い野菜を生産している。十数年前からそれぞれ農地の基盤整備を進め、市を代表する産地に成長。市などは、農地改善で収入が安定的に得られるようになり、農業者の若返りが順調に進んでいるのではないかと期待する。JA島原雲仙青年部南串支部長の佐藤洋さん(36)は「先輩や同級生が近くにいるので相談しやすく、苦楽を分かり合える仲間がいることが活気につながっている」と話す。
 ただ、児童数の予測値は現在の0~6歳児の集計で、今後転出する可能性もある。市は若い世代の定住促進を図るため、本年度から15の施策で構成する「子育て応援パッケージ」をスタート。新居購入費の補助や産後ケアの拡大、育児用品の購入助成など“引き留め策”を充実させ、新規就農支援などと絡めて人口減少対策につなげたい考えだ。
 同市の今年の婚姻数は11月末現在、101組で前年同期比1.3倍。結婚を機に移住してきた夫婦も11組いた。市担当課は「あらゆる施策で子どもの増加を後押しして、暮らしやすいまちづくりを進める」と気合を入れる。

子どもの餅つきを笑顔で見守る地域住民ら=雲仙市立八斗木小

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