今世界で一番楽しいFFスポーツカー|ルノー メガーヌR.S. トロフィー サーキット試乗

ルノー 新型メガーヌ R.S. トロフィー

4コントロール付きモデルで最強スペック

筑波サーキットの最終コーナーを軽めのブレーキングでアプローチすると、メガーヌRSトロフィーは弱オーバーステアを示した。ここで少しだけカウンターを当てながら、アクセルで姿勢を安定させて立ち上がることができたとき、こんな運転ができる市販車があるのか!? と嬉しくなった。

ルノー メガーヌRSトロフィーは、間違いなく今世界で一番楽しいFFスポーツカーだと私は思う。

ただその挙動を頭の中で今一度整理すると、ちょっと「?」マークが浮かんだのも事実だった。なぜならオーバー100km/hの領域でメガーヌRSの後輪操舵「4コントロール」は、同位相をもって挙動を安定させるはずだからだ。

最終コーナーへの進入速度は、目視していなかったが150km/h以上。そして減速を行ったとしても、ターンインでの速度は優に100km/hを超えている。しかし実際の挙動は、高速コーナーのターンインではっきりとオーバーステアだったのである。

ニュル最速モデルは4コントロールなし

ルノー メガーヌR.S. トロフィーR 2019年11月鈴鹿サーキットで記録更新

なるほど、ここに“トロフィー”の意味が隠されていたのだ。

メガーヌRSはそのグレードを「スポーツ」「シャシーカップ」(100台限定・完売)「トロフィー」「トロフィーR」と4段階に分けている。そして今回のトロフィーは、4コントロール付きのグレードの中で最もレーシングライクな仕様となっているのだった。

「4コントロール付き」と限定したのは、ニュル最速タイム(7分40秒1)をたたき出したトロフィーRが、これをキャンセルしてまで軽量化を推進し、その分サスペンションセッティングをより先鋭化させたからである。

ルノー 新型メガーヌ R.S. トロフィー

本格的なレーシングセッティング

トロフィーのセッティングは、その車高バランスやサスペンション剛性を、かなりオーバーステア方向にセットしていると予想できた。それは同位相をもってしてもリアが追従するような、本格的なレーシングセッティングだ。

そんなメガーヌRSトロフィーのシャシーには、先ほど限定発売された「シャシーカップ」仕様のパーツが奢られている。

スプリングレートは最もベーシックな「スポーツ」に対してフロントで23%、リアは35%剛性を向上。これに合わせてダンパー剛性も25%高められ、さらにフロントのスタビライザーは7%ハイレートなものになっている。

そして駆動系には、メンテナンスフリーなトルセンLSDを装着。ターンインで作動制限をしない1WAY方式になっているのがミソで、ここでもルノー・スポールが、徹底的にアンダーステアを嫌っているのがわかる。さらにトルクバイアスレシオ(2.6:1)は、ルノー・スポールモデル専用にチューニングされているという。

シリーズ最強の300PSがカタログモデルに

ルノー 新型メガーヌ R.S. トロフィー

さらにこのトロフィーは、1.8リッター直列4気筒エンジンが、シリーズ最高出力となる300PSにまで引き上げられている。そして今回からこのトロフィーは、なんとカタログモデルになるのだという。

そうなると限定発売であったシャシーカップに飛びついたオーナーが可愛そうな気もするが、そこはルノー・ジャポンもよく考えていて、トロフィーの価格は499万円(6速EDC)。対してシャシーカップは、その出力も279PSながら価格は450万円に抑えられていた。

ルノー 新型メガーヌ R.S. トロフィー

素人お断りではなくむしろいい教材になる一面も

話をコースへと戻そう。

本格的な挙動に「素人お断り」的な緊張感を漂わせてしまったかもしれないが、メガーヌRSトロフィーはスポーツドライビングを愛するドライバーにとって素晴らしい教材になる一面もきちんと持っている。

前述の通り4コントロールは、通常モードからスポーツモードにおいて時速60km/hまでの領域を逆位相、それ以上で同位相となる。そして「レース」モードになるとこの閾値が100km/hにまで引き上げられ、横滑り防止装置も解除される。

この制御は低速コーナーでのアンダーステアを相殺してくれるから、サーキットのような高負荷領域ではその効果をとても感じやすい。たとえば筑波ならふたつのヘアピンがある。ここでハンドルを大きく切って行くと、メガーヌRSトロフィーは驚くほどわかりやすく向きを変えてくれる。人によっては「曲がり過ぎる!」と感じる場合もあるだろう。そんなときこそ、アクセルを踏み出すポイントなのである。素早くターンし、アクセルオンで脱出する。その走りはスポーツドライビングそのものである。

独特のコーナリングがクセになる!?

ルノー 新型メガーヌ R.S. トロフィー

折しも当日は最終日の最終枠で、何人ものジャーナリストが走ったタイヤはほとんど使い切られた状態だった。それでもメガーヌRSトロフィーは、そのサスペンションバランスとリアステアを上手に使って、フロントをネジ込んでくれた。フロントタイヤのグリップが明らかに低いのに、リアステアで曲がって行く感覚は一種独特。そしてこの制御は、ブレーキングで突っ込み過ぎたときの“気づき”にもなってくれると思えた。

またアクセルオンではトルセンLSDとエンジン、そして6速EDCの連携が秀逸だった。セラミック式ボールベアリングを採用したターボのレスポンスはリニアで、LSDがトラクションを掛けて行く様子がとてもわかりやすい。だからコーナー脱出時において、パワーを掛けて行くタイミングや、その細かい修正が非常にしやすいのである。

ルノー 新型メガーヌ R.S. トロフィー

ドライビングに向き合いたいユーザーに

クルマの動きは極めて本格的なのだが、それがわかりやすい。だから真摯にドライビングに向き合うドライバーには、これが素晴らしい教材になると思えたのだ。

ただダンロップコーナーのような中途半端な速度域のコーナーではオーバーステアが急激に起こりやすく、これをバランスさせるのはビギナーには難しいとも感じた。対処としてはアクセルオンで挙動を安定させるのだが、それができるくらいならとっくに上級者だとも言える。

また前述した最終コーナーなどではサスペンションセッティングそのものがオーバーステア傾向となっているため、未知の領域としてはかなりチャレンジングである。

ルノー 新型メガーヌ R.S. トロフィー
ルノー 新型メガーヌ R.S. トロフィー

それでも目指すところとしては、こうした領域にこそスポーツドライビングのゴールがあるのは事実だ。そして、モードを通して段階的に学んで行けば、このゴールに一歩ずつでも近づいて行くことができると私は思う。

約500万円というプライスは決して安くはない。しかしより高額な後輪駆動のハイパフォーマンススポーツカー、たとえばBMW M2コンペティションのようなモデルはその高出力に安全性を与えるべく、押し並べてそのハンドリングはアンダーステア傾向に調律されている。これをさらにニュートラル方向へとチューニングして行くのはひとつの楽しみだが、メガーヌRSトロフィーならば、それが最初から手に入る。現状こうした本格的なドライビングを得られる素材としては、トヨタ スープラの2リッターターボモデル「SZーR」くらいしか思いつかない。

ルノー・スポールは、いつだって本気だ。いつだってスポーツドライングを愛するドライバーに向き合ってくれているのである。

[筆者:山田 弘樹/撮影:佐藤 正巳]

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