走れ思い出のレール 南武線205系がラストラン

 JR南武線で27年間にわたり親しまれ、昨年末に引退した205系車両のラストラン「ありがとう運転」が9日、川崎−登戸間で運行され、多くの市民や鉄道ファンが別れを惜しんだ。「これからはお客さまの思い出のレールを走り続けます」−。車内アナウンスには大きな拍手が送られ、乗客や沿線からの「ありがとう」「お疲れさま」といった声に見送られながら終点の登戸駅を去った。

 午前10時43分、JR川崎駅。「おつかれさまでした」と書かれた横断幕を持つJR社員や市民らが見送る中、小川久光駅長の合図で、「ありがとう205系」のヘッドマークをつけた6両編成の臨時列車が出発した。車内は通勤ラッシュ並みの混雑で、武蔵小杉や武蔵溝ノ口など途中駅からも大勢が乗り込んだ。

 沿線からは鉄道ファンや親子らがカメラを向け、武蔵中原駅先の車両基地「中原電車区」では、長年205系の安全運行を支えてきた鉄道マンや清掃員ら数十人が、「27年間ありがとう」の横断幕を掲げながら手を振っていた。

 「晴れの日も雨の日も雪の日も走ってきました。これからはお客さまの思い出のレールを走り続けさせていただければ幸いです」。登戸駅到着前、車掌の肉声による最後のアナウンスが流れると、車内は大きな拍手に包まれた。

 先頭に乗車しようと、福岡市から駆けつけて午前3時半から並んだという男子専門学校生(24)は「大好きな通勤型電車で、先頭車両の表情が魅力的だった」。小川駅長は「南武線がこれだけ多くの人に愛されていることがあらためて分かり感慨深い」と話していた。

 同線の205系は1989年から運行。2014年秋以降に新型車両への置き換えが進み、15年4月からは120両がインドネシアの鉄道会社に譲渡された。中原電車区の中田智明副区長(50)は「コンピューター制御が多用された最新車両と違い、205系は人の手による細かな調整が必要で、手を入れる度に愛着が湧いた。手間をかけたらかけた分、応えてくれる車両でしたね」と話す。205系は県内では鶴見線などで運行されている。

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