日経平均は2万7000円も視野? 2020年の日本株相場見通し

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主要な金融商品の2020年相場について、業界を代表する専門家に聞く短期集中連載。第1回目は日本株です。

2019年秋から年末にかけて、年初来高値を更新する強さを見せた日経平均株価。新しい年もこの勢いは続いていくのでしょうか。JPモルガン証券・株式調査部の阪上亮太チーフ株式ストラテジストに、2020年の株式市場の見通しについて話を聞きました。


「横ばい相場からの年末ラリー」は典型パターン

――ちょうど1年前となる2019年元日配信の記事中で紹介した「1万9,500円から2万4,000円」という阪上さんの日経平均株価のレンジ予想は、見事に的中しました。振り返って、2019年は日本株市場にとってどのような1年だったでしょうか。

阪上さん:大発会からの大幅下落でスタートして以降、春までは持ち直す動きも見られましたが、その後は世界経済の減速や冴えない企業業績、米中関係の悪化に対する警戒感が強く、株価は一進一退のレンジ相場が続きました。

それでも、3月期決算企業の中間決算が発表される10月以降は、通期業績の下方修正も出尽くしたと判断され、底入れ感が意識されるようになりました。さらに、米中関係の改善期待や来期業績への反発期待から株価が押し上げられる「年末ラリー」となり、高値で締めくくる1年となりました。

「年前半は膠着し、年末にかけて高くなる」というのは、日本の株式市場にはよく見られる値動きです。特に企業業績が良くない年に出現しやすいパターンといえます。

――投資家はどんな状況だったでしょうか。

年前半は日本を代表する優良企業の株価が素直に上昇していたので、2018年ほどは難しくなかった相場だと思います。セクターでいうと、年前半は精密機器や電気機器、特に5G(次世代通信規格)関連の有望銘柄が買われていました。年末ラリーでは一転して、出遅れ気味の銘柄を物色する動きが強まったので、逆張り派に有利な展開となりました。

一方で、素材や資源、食品など、テーマ性に乏しいセクターは低迷しました。中でも銀行は、FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げの影響で、逆風にさらされたといえるでしょう。

足元の勢いはどこまで続く?

――年末の勢いは、2020年も継続できるでしょうか。

世界経済の底入れ感や米中関係の改善期待、企業業績の反発期待は3月ごろまでは持続し、株価は好調なスタートを切ると予想しています。しかし、現実の経済回復の足取りは鈍く、春以降も上昇を持続させるには力不足でしょう。

具体的には、1~3月の間に2万5,000円近くでピークをつけ、4月以降は方向感のないレンジ相場が続くと予想します。

――ピークをつけても、そこから下落に転じるというわけではないのですね。

上を目指すエネルギーに乏しい反面、下値は底堅く、大きく下落する可能性も低いと考えています。年末ラリーで多少修正はされましたが、まだ日本株は世界的に見て割安な水準にあります。

企業の自社株買いも増えており、日本銀行のETF(上場投資信託)買いと合わせると、2019年は16兆円近い買いとなりました。この傾向は2020年も続くと考えられ、株価の強い下支えとなります。

1つの目安として、明確な景気後退局面でない限りはPBR(株価純資産倍率)が1倍を割ることは考えづらいので、PBRが1倍となる2万1,000円程度が下値メドとみています。

堅調相場に潜む下振れリスク

――2020年に警戒すべきリスクには、どんなものがあるでしょうか。

このメインシナリオから、上にも下にもブレるリスクは当然あります。景気拡大により企業の設備投資の回復が予想以上に進んで世界の経済成長率が3%を超えてくることがあれば、日本企業の収益は大幅増益が期待できます。このシナリオが実現すれば、日経平均株価は2万7,000円台も狙えるでしょう。

一方、国内の景気が本格的な後退局面に入ることがあれば、大きな下振れリスクとなります。過去の例を見る限り、五輪開催国の大会後の経済成長率は減速するという経験則もあります。

特に建設需要の落ち込みが心配されていますが、実際には建設以外にも、小売り分野での訪日客対応やシステム投資など、さまざまな領域で五輪を意識した投資が行われてきただけに、反動減が心配されます。

政府は東京五輪後の経済活力維持などを目的とした26兆円規模の経済対策を閣議決定しているので下支えは期待できますが、それでも現状維持が精一杯でしょう。

また、2020年は米大統領選が控えます。トランプ再選なら大きな変化はないでしょうが、民主党候補が勝利すれば、規制強化や増税といった株式市場にネガティブな政策に転換するおそれもあります。米中関係もまだ先は見えず、再燃すれば下振れリスクはさらに高まります。この場合、日経平均株価は1万7,000円台をつける可能性もありそうです。

上振れと下振れ、どちらのリスクが大きいかといえば、やはり下振れる可能性のほうが高いと言わざるを得ません。年の終盤から翌年にかけて、こうした下振れリスクはより強く意識されるようになるでしょう。

期待の5G関連はすでに買われ過ぎ水準

――日本株の売買高の過半を占める外国人投資家は、日本の株式市場をどう評価していますか。

「アメリカがくしゃみをすると、日本が風邪をひく」とはよく言われますが、日本株は世界経済、すなわち米国景気に敏感に反応します。2019年までは世界経済の減速懸念を先取りする形で外国人投資家の売り越しが続いてきましたが、下げ止まったと判断されれば買い戻しも真っ先に行われるという特徴もあります。このため、短期的には日本株を見直す動きはみられます。

しかし、これも売った分を買い戻すレベルに過ぎず、積極的に買っていく材料には乏しい。企業業績は海外より見劣りしますし、マイナス金利政策を採る日銀がさらなる金融緩和を発動する可能性もほぼ見込めないからです。

唯一評価されていたのが近年のコーポレートガバナンスの改善でしたが、これも2020年春の施行が予定される改正外為法が冷や水を浴びせるおそれがあります。

これは安全保障上重要な日本企業への出資規制を強化するのが狙いで、「モノ言う株主」であるアクティビストの活動が制限されるおそれがあります。具体的な中身については詳細を定める政省令を待つ必要がありますが、外国人投資家の投資意欲を削ぐ内容になるようなら、株価への悪影響も考えられます。

――2020年相場で、注目している業種はありますか。

まずは、設備投資関連です。2019年までは米中貿易摩擦や自動車産業の落ち込みなどで手控えられていた設備投資が、世界的に回復してくることが見込まれるからです。ただ、機械株の優良銘柄はすでに買われているので、出遅れ気味の建設機械や工作機械などが狙い目とみています。

第2に、建設です。東京五輪後の需要減退が意識されて株価は長く低迷してきましたが、現実には政府の経済対策の効果で市場が懸念しているほどには悪化しないとみています。割安になり過ぎている株価が修正される余地は十分ありそうです。

第3に、ITサービスです。ここ数年は構造的な労働力不足や働き方改革といった追い風に加え、キャッシュレス決済やクラウド化などのイノベーションも進んでいます。企業のシステム更新需要も根強く、IT投資需要は底堅く推移しています。こうしたサービスを提供する企業は業績も好調で、株も買われていますが、引き続き有望と考えています。

一方で、あまり期待できない業種もあります。1つは電気機器を中心としたハイテク領域です。5Gへの期待が先行し、すでに株価は割高な水準まで買われています。

年末に発表された2020年の税制改正大綱で5G導入促進税制が盛り込まれたことで再評価する動きもありますが、これも相当織り込まれています。米中関係が悪化すると悪影響を受けやすいというリスクも無視できません。

また、小売りなどの消費関連も警戒が必要です。消費増税後の落ち込みがいつまで続くかが不透明な中で、労働力不足でコストは上昇しています。価格転嫁がうまくできないと利益が圧迫されてしまいます。

個人投資家は2020年相場にどう向き合うべきか

――個人投資家には、どのような戦略が考えられるでしょうか。

2019年はレンジ相場が長く続きましたし、為替もほとんど動かない年でしたが、2020年はより変動に乏しい年になりそうです。こうした相場では日経平均株価やTOPIXに連動する商品を買うインデックス投資では成果を上げにくいので、積極的に利益を狙うなら個別株への投資が必要です。

しかし、レンジ相場では物色の移り変わりも起こりにくくなるので、業績が良く割高感がないものを選ぶオーソドックスな銘柄選別が無難です。2019年は業績さえよければ買われる局面もありましたが、新しい年は割高な銘柄は避けたほうがいいでしょう。

米国の金利も大きく下がったので、高配当株に人気が集まることも考えられますが、どんなに配当利回りが高くても業績のブレが大きい景気敏感株は減配リスクも大きくなります。業績が安定し、景気敏感でない銘柄を選びましょう。

環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素を重視したESG投資の観点も、本格的に意識されてくるでしょう。特に欧州ではESGに対する意識が非常に高く、世界的な流れになりつつあります。

日本でも世界最大規模の機関投資家であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が積極的な姿勢を示しており、金融庁が2020年春に予定するスチュワードシップコードの改定でもESG投資について明示する方針を固めたと報じられています。

ESGの視点を投資に取り入れるには、2つの方法があります。1つは、ESGへの取り組みに優れた会社を選ぶこと。もう1つは、ESGの観点で良くない銘柄を避けることです。

特に後者は重要で、環境負荷の高いビジネスを手がける企業、ガバナンスに不安がある企業、エネルギーや軍事、たばこといったESGに沿わない業種は、機関投資家や外国人投資家のまとまった買いが期待できなくなります。こうした銘柄は今後、業績が良くても割安に放置される傾向がより鮮明になってくると思います。

――最後に、2020年の相場に向き合う個人投資家の心構えについて、アドバイスをお願いします。

もともと個人投資家は利食いを急いでしまう傾向がありますが、今年はその姿勢が吉と出るかもしれません。盛り上がりに欠ける相場では、欲張らないほうが良い結果を出せることが多いでしょう。

現在の状況下では、日本株だけでなく、為替などあらゆる資産クラスの専門家たちが、横ばい相場の予想でほぼ一致しています。マーケットに影響を及ぼすあらゆる要素を考え合わせても、こうした結論しか出ない状況だからです。

しかし歴史を振り返ると、誰もが「動かない」と考える相場でこそ、思わぬ波乱が起きているという皮肉な現実もあります。横ばいだからと油断することなく、十分に警戒しながら臨みたいものです。