【2020年新春大放談!】平野悠(ロフトプロジェクト創設者)×加藤梅造(ロフトプロジェクト社長)- ロフトの下北沢因果鉄道! 2020年、ライブハウスは社会問題に対してなにをしていけるか。

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ロフト、はじめての共同出資店舗

──2019年を振り返ると、松本と高円寺にロフトとして初めての共同出資店舗ができました。

平野:2017年に社長が変わってからいろんなことがあったけども、俺の今の興味はトークライブハウスを全国に広めて、できれば世界に持っていきたいってことなんですよ。アメリカとか、銃を持ち込めるような場所でトークライブハウスができたら最高でしょ(笑)?俺が若かったら絶対やってますよ。本当は台湾に新店舗を作る話もあったんだけどさ、人員が足りなくて無理だったんだよ。とにかく俺は海外移転をやりたくてしかたない。でもいまはテニスやってるときが一番楽しくて、最近は中級クラスにあがったんだけどさ…。

──えっ、店舗の話は?

加藤:もうテニスの話でいいですよ、健康が大事って話ですよ(笑)。

平野:小学生とかと対戦して、「学校ではどんな人がモテるの?」とか聞いたりしてさ。楽しいよ。

──…でも考えれば2014年に大阪にロフトプラスワンウエストができて、今年まで5年間で、LOFT9 Shibuya、LOFT HEAVEN、ROCK CAFE LOFT is your room、松本ロフト、LOFTX Koenjiと6店舗も増えているんですよ。

平野:むちゃくちゃだよな、5年で6店舗だよ(笑)。でもさ、日本社会に文化を知らしめていくには、地方の文化をボトムアップして、地方から発信をしていかなければ成り立たないだろうと思うんですよ。カルチャーというのはサブカルチャーとメインカルチャーがあって、俺たちはサブカルチャーを支えている側。だけど、サブカルチャーがあるからこそメインカルチャーがあるんだという信念のもとで毎日やっているわけですよね。松本ロフトができたのは、昔から付き合いのある上條俊一郎(G.G)という男の存在なんです。これまで彼はいろんなところでイベントをやっていたんですけど、「自分も拠点を持ちたい」と言い出したんですよ。

──松本ロフトは、平日はフォーク酒場やカラオケタイムがあって、週末はイベントをやるっていう西荻ロフトのころのスタイルですね。

平野:そうですね。俺は歌舞伎町のROCK CAFE LOFTを作ったときに、自分の青春時代にあったようなロック喫茶を作りたくて、イベント開催なんてほんとはどうでもよかったんだよ。店で若いやつにいいカッコして、「これがレッド・ツェッペリンだよ」とか偉そうに言ってレコードを聴かせたかったの。でも誰も来なくて、毎日イベントをやるようになっちゃった。それなのに、今、松本ロフトが同じことをやり始めようとしているんだよ(笑)。

加藤:でもROCK CAFE LOFTは画期的だと思いますけどね。トークをしている店やロック喫茶やロックバーはいっぱいあるけど、毎日音楽に関するトークだけをしている店なんて他にないですから。

平野:東京なんて1千万人も人口がいるのにお客を15人集めるのってたいへんでしょ?それなのに松本の20万の人口でやっていくんだからね。たいへんだと思いますよ。店舗っていうのはさ、やっぱりどこもそうだけど、店長がどう客を迎えてどう送り出すか、どんなブッキングをやるかってことが大切だから。ただ、G.GはSNSをうまくつかっているよね。

──平野さんがこだわっていた中央線の最終駅である松本にロフトができたっていうのはいい話ですよね。

加藤:松本ロフトはおもしろくなりそうな予感がしますよね。

平野:それで、今度は中央線の高円寺にLOFTXがオープン。これは社長が音楽大好きだから。それだけだよ。

加藤:うちの社員はみんな音楽大好きじゃないんですか(笑)?

平野:俺はもう昔の音楽だけでいいの、新しい音楽はもう知らない。

お客と店と出演者はすべて平等である

平野:俺はLOFTXに期待しているの。そうだ、俺も内装のデザインに加わることになったんだよ。だって彼らスタッフは小滝橋通り時代の新宿ロフトにすごくこだわるんだもの。

加藤:LOFTXはバック・トゥー・西新宿っていうコンセプトですからね。床も市松模様だし、会場がたまたま昔のロフトっぽい形になっていて。

平野:でさ、松本も高円寺も共同出資の店舗なんだけど、「ロフト」って名前をどうしても使いたいって言うんだよ。俺だったら意地でも「ロフト」なんて使いたくないけどね。

加藤:自分で作った店を「ロフトなんて」とか言わないでくださいよ(笑)。

──共同出資店舗ってロフトの歴史ではじめてのことですよね。

平野:そう、これがうまくいけばいたるところが手を挙げてくるんじゃないかって。九州とか札幌だって手を挙げているところがあるし。探せばもっとありそうだよね。いや、相手もお金を持ってないとしかたないけどさ(笑)。でも、トークはまだまだうちの天下だから、もっと全国にロフト文化を広めていきたいんですよ。ロフト文化っていうのは空間理論なんだよ。ひとつの空間の中で、お客と店と出演者がすべて平等であるというところから出発しないといけないんだよ。だから、トーク中も平気で手を挙げて質問するとか、フリーな空間を願っているんです。俺だったら「イベント中に写真を撮るな!」なんて死んでも言わない。それって本当に三者が平等に自由なの?って疑問だよ。

加藤:いまはインスタ時代だから、写真撮影にも意識が変わってきてむしろ撮ってくれっていう人も多いですよ。

平野:俺は50年近くこういう商売をやってきたなかで、創業者がなにを思ってその場所を作ったのかっていうのを従業員にも理解してほしいと思うんだよな。できれば、日本の文化に対してアカデミックな意味でどういう風にアプローチしていきたいのか、もっと考えてほしい。原発問題でも、桜を見る会の問題でも、本当だったらロフトが真っ先に手を打たないといけないじゃん。でも最近はエンターテイメントジャンルのイベントばかりになってきて、これでほんとうに社会にリンクしているのか?って思うよ。……なーんて、これが赤字だったら文句も言えるんだけどさ。お客が入って会社が儲かってるからなにも言えないよな(笑)。

下北沢因果鉄道

加藤:2020年は下北沢にロフト直営の新店舗・Flowers Loftができますからね。下北沢にはもともと下北沢ロフトっていう店舗があったんですが、今は経営権を渡してしまっていて。

平野:そう、俺はまだ下北沢になんにもないときに下北沢ロフトを作ったんだからな(※1975年12月オープン)。

加藤:下北沢シェルターもあるけれども、もう一度「ロフトを下北沢に」っていうことで、この店舗は頑張りたいですよね。まず、駅の目の前っていう立地条件が素晴らしいですよね。たまたまなんですが、Save the 下北沢(※下北沢の大規模道路反対運動)で知り合った人がビルオーナーを紹介してくれたんです。

平野:人の繋がりって大事だよ。出演者が関わっていればデモも手伝うし、イベントも見に行くし、演劇も見に行く。でもそれは全部自分の財産になるんだよ、そこからまた新しいことが始まっていく。これはロフトの社員に向けて言いたいんだけど、ただ、ブッキングしましたはい終わりさよならっていうことじゃないんだよ。みんなこの対談だって読んでるのかな。これは義理だよ、義理。

──それにしても、あんな立派なビルにロフトが呼ばれたってすごいですよね。

加藤:3.11後、世田谷区長に保坂展人さんが当選したっていうところからの流れだと思います。これはもう因果ですよね(笑)。2011年に平野さんが保坂さんを応援をして、保坂さんが区長に当選を果たして、そこから世田谷区が変わったわけで。下北沢駅前の再開発もそれで変わったんですよ。だから、そこにロフトが入るっていうのは因果が循環しているのかなって。

平野:俺はFlowers Loftっていう店舗名が気に入ってるんだよ。FlowerじゃなくてFlowers、花いっぱいですよ。これは平和をイメージしているんだから、かっこいいよな。

加藤:Flowers Loftはシモキタ系音楽の一大拠点にしたいですよね。世田谷区はオレゴン州ポートランド市のような環境都市をめざしていて、持続可能な未来の暮らしを考えた再開発を進めている。そこで、僕たち大人は次の世代が安心して生きていけるような社会を作っていかないといけないし、保坂区政もその方向を向いている。そこでロフトがどういう存在感で、なにをやっていくかが大切だと思うんですよ。音楽だけやってればいいわけじゃない。今の10代は気候変動問題にすごく危機感を持っていて、先日新宿で行われた「グローバル気候マーチ」にもたくさんの若者が参加してました。だってそうですよね、20年後に人類が住めなくなるかもしれないんですよ。果たして今の異常気象で生活していけるのか? 子どもを産んで育てていけるのか? それを大人も一緒に考えて若い世代に社会を渡していかないといけない。

平野:今の政権は全然そういう方向を向いてないからな。保坂展人か山本太郎が次期総理大臣になるべきだよ。

加藤:政治評論家の中島岳志さんは、保坂さんは将来総理大臣になるべきだって言ってました。この流れの全ては保坂区政からはじまっているんですよ。

平野:すごい男ですよ。でもあいつのツイッターはおもしろくないんだよ、なんて言えるのは俺だけか。偉そうだな、俺も(笑)。

ライブハウスは社会問題に対してなにをしていけるか

──2020年はどのような展開を考えていますか。

平野:俺は、今年、小説を出版するからそれがどうなっていくのか楽しみなんだよ。いったいなにが俺の前に出てくるんだ、そこにどう自分が立ち向かっていくのか。アウトならアウトでいいんだよ。でもさ、頑張ったらなにが起こるんだろうって。俺は利益を独り占めする気はまったくないから、もし成功したらロフトがどう広がっていくのかが楽しみだな。なにも広がらないかもしれないけど、やることが大事なんだよ。『ライブハウス「ロフト」青春記』だって新装版を出すし、ロフトブックスがどう再生していくか楽しみだよな。

加藤:今は文化が大きな岐路に立っていると思うんです。社会への問題提起はもうたくさんだ、じゃあいったいなにをしていくんだ?っていうのが我々大人に対する10代からのエクスキューズなんですよ。そこで、音楽もそうだし、サブカルチャーはなにをしていけるか。あと、2019年の大きなニュースは香港の民主化デモですが、これはジョージ・オーウェルの『1984』からずっと続くテーマですよね。たとえば中国の若い人の中には自由が制限されても、社会が安定して裕福なほうがいいって言う人も多いようですが、香港の若者はそれに対してNOを突きつけている。「俺らは管理されない。民主主義だ」って。民主主義か管理社会か、その戦いなわけですよ。気がつけば今の日本もそうなっていて、『表現の不自由展』についても、お国に逆らっちゃいけない雰囲気、お国の言うことを聞いていたらお前らの安全は保証してやる、っていう中国的な社会になりそうな予感があるじゃないですか。それに対してロックは、それでいいのか?って言わないとだめですよ。

平野:俺の希望は絶望に変わっていくんだよ。だってさ、安倍政権はあれだけめちゃくちゃな政治をしているのに、国民の支持率が50パーセント以上あるなんてさ。もうお手上げだよ。公文書まで書き換えるなんてアメリカだったら終身刑なわけですよ。それでも支持率が下がらない、どうなってるの?だから、俺たち世代はもうやることはやったよって諦めてしまいがちなんだよな。

加藤:そこに対して、ライブハウスはなにをするんだ、ミュージシャンや表現者はなにをするんだっていうところが2020年のテーマだと思いますよ。

平野:そう、俺はあとテニスができればそれでいいの。

加藤::まあ、健康な体に健全な精神が宿りますからね(笑)。