ビリー・ジーン / アルバム「スリラー」から生まれた名作ミュージックビデオ

1983年 1月2日 マイケル・ジャクソンのシングル「ビリー・ジーン」が全米でリリースされた日

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MTVに風穴を開けた「ビリー・ジーン」のミュージックビデオ

マイケル・ジャクソンのモンスターアルバム『スリラー』からは収録楽曲全9曲中7曲がシングルカットされ、3本のミュージックビデオが制作されました。ここでは歴史を塗り替えたと言われるその3本のミュージックビデオを検証してみたいのですが、まずは MTV が台頭してきた当時の音楽シーンの背景。

既にラジオというメディアを凌駕する勢いがついていた MTV はなかなか黒人のミュージックビデオをオンエアしないという状況がありました。そこに待ったをかけたのがマイケルの所属レコード会社である CBS。マイケルのスーパースター化を画策していた CBS が破格のプロモーションを展開しようとしており、MTV にも相当の圧力をかけたようです。

めでたくマイケルの PV は頻繁にオンエアされることになりましたが、作品力を考えればそんな CBS の努力が報われるのも時間の問題だったわけですよね。あと黒人アーティストのミュージックビデオを解放したという点でも歴史を塗り替えました。

さぁ、まずは「ビリー・ジーン」。

監督はスティーヴ・バロン、作品のテーマはパパラッチ

この作品を今改めて見て思うことは、マイケルを生涯苦しめ続けたパパラッチをこの83年の時点で題材にしているということ。歌詞の内容もグルーピーからいわれのない「子供を認知して」と詰め寄られるというもの。なんともスキャンダラスなテーマに真っ向から対峙しているというところがスゴイですし、色々と考えさせる部分があります。

ビデオ監督は80年代のミュージックビデオ界を支えた大御所スティーヴ・バロン。アイルランド出身の彼はアダム&ジ・アンツなど UKアーティストのミュージックビデオを制作し、ヒューマン・リーグの「愛の残り火(Don't You Want Me)」のヒットで名を上げます。「ビリー・ジーン」で更に評価を高め、その後も a-ha の「テイク・オン・ミー」やダイア-・ストレイツの「マネー・フォー・ナッシング」などの傑作を残してます。長編映画も『ミュータント・タートルズ』など数本手掛けてます。

見どころはマイケルのステップと曲に合わせて道路のタイルが光るところでしょうか。決して大げさではない演出ではあるものの、何故かこのシーンは脳裏に残り続けます。マイケルが階段を上る際に「HOTEL」のネオンもステップに合わせて光るところなど、よく見ると結構細かい描写。

ディズニー「ファンタジア」に匹敵? キレのあるダンスと映像のマッチング

それにしてもキレのあるダンスによるウォーキングの凄まじいこと。爪先立ちのカットは、もはや伝説的ですね。この音楽とダンスシーンの映像のマッチングの見事さは、ディズニー映画『ファンタジア』における「魔法使いの弟子」のミッキーと箒のダンスに匹敵すると個人的には思います。

残念ながらセットは今見ると時代を感じさせるものがあり、スケール感を出し切れませんが、それでもマイケルの存在感に目が釘付けになるのでそういった背景やパパラッチの設定がどうでもよくなってくるのも事実。

ただし、スティーヴ・バロンによる作品全体の質感を決定付けるトーンや色使い、ホームレスなどの細かいディテール演出などは流石のもの。結果、マイケルのカリスマとしてのオーラを初めて映像作品に閉じ込めた作品と言えるでしょう。

ちなみにこのビデオでは披露されませんでしたが、あのムーンウォークはこの曲で披露されることが多いようです(1983年のモータウン25周年記念コンサートで初披露)。

※ 歴史を塗り替えたと言われるその3本のミュージックビデオについて、「今夜はビート・イット」と「スリラー」についても検証しています。ぜひこちらもご覧ください。

■ ビート・イット / アルバム「スリラー」から生まれた名作ミュージックビデオ
■ スリラー / アルバム「スリラー」から生まれた名作ミュージックビデオ

※2017年12月2日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: DR.ENO