<インタビュー> 政策研究大学院大学・福井秀夫教授 「公共」のためかどうか

© 株式会社長崎新聞社

 昨年、石木ダムの建設予定地のうち、反対住民の家屋がある土地を含む約12万平方メートルが明け渡し期限を迎え、県と佐世保市は同事業にかかる全ての土地について行政代執行の手続きに入ることが可能になった。行政代執行とはどんなものか、公共事業の望ましい在り方とは-。有識者に話を聞いた。

 ■政策研究大学院大学・福井秀夫教授

 行政は一般論として、投資して回収できなくなった費用(サンクコスト)を考慮しがちだ。だが、公共事業では原則としてサンクコストを考えてはいけない。今後、ダムの完成、維持にどれだけ費用が生じ、ダムができたときにどれだけの社会的利益が生じるかを天秤(てんびん)にかけ、後者が大きいときにのみ継続すべきだ。
 司法の判断にも限界がある。裁判官は法律の専門家であって費用便益分析の専門家ではない。行政の主張を覆す証拠を住民側が用意するのは困難。こうして、公共事業は一度走りだすと止まらなくなる。
 憲法第29条第3項に「私有財産は正当な補償の下に、公共のために用いることができる」とある。判断の焦点は「公共」のためなのかどうかだ。公共性を検証するためには、ダム建設による社会全体の利益・不利益全てをまな板の上に載せる必要がある。環境や生態系保全などの視点も重要になるだろう。
 日本に欠けているのは、本当に必要な事業かどうかを科学的・第三者的に検証するシステムだ。得られる利益・失われる利益のどちらも、全ての要素について第三者が反証可能な状態で検証しなければ、公金も、生活、環境も容易に失われてしまうだろう。

 【略歴】ふくい・ひでお 東京大法学部卒、京都大博士(工学)。1981年に建設省(当時)に入省。法政大社会学部教授などを経て現職。著書に「司法政策の法と経済学」など。61歳。

この記事はいかがでしたか?