航空機産業に照準 長崎県内企業 参入の動き 造船技術生かす 県も支援

大手重工メーカーへの試作品を確認する黒﨑社長(右)=時津町久留里郷

 世界的な市場拡大が見込まれる航空機産業への参入を目指す長崎県内企業が増えている。造船業で培った技術力を結集して外貨獲得を目指し、長崎県は新年度も企業の挑戦を後押しする。その先には「造船業で減った仕事量の2~3割を補えるのでは」との期待感がある。
 船舶や風力発電部品などの加工を手掛ける東亜工作所(西彼時津町)。金属の伸び縮みを防ぐため室温を管理した工場で、担当者が大手重工メーカーから受注した航空機エンジン部品の試作品を最終確認していた。図面通りにできているのか、装置を使って1ミクロン単位でチェックするその目は真剣だ。
 同社が航空機産業参入に向けて動きだしたのは2015年。1年以上をかけた試作品の採用が決まれば、3~4月に大手重工メーカーへの納入が始まる。「息の長い安定的な収益が見込める」。黒﨑智社長(40)の期待は大きい。
 航空機産業に事業を拡大する動きは広まりつつある。県が支援する航空機産業クラスター協議会の会員数は発足した18年の41社から54社に増えた。大手重工メーカーと取引の条件となる認証の取得企業(予定を含む)は計7社で、九州で最も多い。
 こうした流れの背景には長崎県の基幹産業の造船業が苦戦を強いられていることがある。対する航空機産業をみると、17年からの20年間で約2倍となる約3万9千機のジェット機の製造が世界的に見込まれる。国内生産額は15年の約1兆8千億円から30年には3兆円を超えるとも予測され、成長産業の一つとなっている。
 長崎県には追い風も。三菱重工業は2020年に長崎市の長崎造船所内に航空エンジン部品工場を新設予定。県によると航空機は同じ型のエンジンを約25年間造り続け、メンテナンス期間も入れると、約50年間仕事が続く。県は「県内で受注できるよう、実力を高めていきたい」と準備を進める。
 県は、2020年度は航空機関連の学科がある県外大学との連携体制を整え、県内企業の人材確保をサポート。企業群として受注獲得を目指す取り組みや販路開拓も支援する。県企業振興課は「航空機といえば長崎、となるよう、売り上げと技術力で九州ナンバーワンを目指す」としている。

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