清新な日を

 スポーツ選手の言葉には印象的なものが多い。東京五輪・パラリンピックの年の初めに、かつて書き留めたり、物の本で読んだりした言葉をたどってみた。マラソンの高橋尚子さんは現役の頃、レース前に語っている。「今までに、いったいどれだけ走ったか。残すはたった42キロ」▲積み重ねたことを、あとは本番で出すだけだ。そういう誓いだろう。何かの言葉を胸に置き、自分に前を向かせることの大切さを、才華を輝かせた人は教えてくれる▲新年の紙面を繰っていると、数々の清新な誓いの言葉が目に留まり、胸に広がった。帰省の時期に合わせた成人式が各地であり、「二十歳の誓い」を新成人が語っている▲高校の書道部の生徒は新年の誓いを揮毫(きごう)した。「手の中には僅(わず)かな勇気 仲間とともに一歩前へ」…。心にも大書は残り続けるに違いない▲高橋尚子さんにエピソードがある。日曜日には練習がなく、自主的に走った。地図を買い、そのとき走った道を赤鉛筆で塗ったという。努力の跡である赤い線が1本増えるたび、新鮮な気持ちになれたのかもしれない▲胸に誓いの言葉を、心の地図に日ごと一筋の線を-と、鍛錬の足りないわが身にささやいてみる。今日が仕事始めの人も多い。慌ただしい毎日の始まりであり、清新な思いが胸に広がる一日でもある。(徹)

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