「仲間と運に恵まれた」 桐蔭学園・主将伊藤大に両親声援 全国高校ラグビー

応援席から暖かなまなざしで見守る父・英司さん=大阪府東大阪市の花園ラグビー場

 5日に大阪府東大阪市の花園ラグビー場で行われた全国高校ラグビー大会準決勝で、神奈川代表の桐蔭学園は前回大会に続き東福岡と対戦した。優れた判断で攻撃を操ったのが主将のSO伊藤大祐(3年)。両親の英司さん(51)、智子さん(51)が応援席で見守る中、世代最高の司令塔として、両校優勝した2010年度大会以来となる2大会連続の決勝進出を果たした。

 試合終了間際、ドロップゴールを決めた伊藤大からこの日一番の笑みがこぼれた。前回大会、8点差で競り勝った強豪に34─7で完勝。智子さんは「どきどきでした。最後に決まって良かった」と胸をなで下ろした。

 1年時から名門の主力を担い、将来の日本代表として期待される逸材。小学生の頃は柔道で九州王者に輝いたが、伊藤大は「一人で戦うのは嫌だった」。大阪体育大で活躍した父の影響もあり楕(だ)円(えん)球を追った。七つ上の兄拓海さんは長崎南山で花園出場、五つ上の姉優希さんは女子日本代表というラグビー一家に育った。

 家族の前では寡黙な男が、強い意志を示したことがある。中学3年の夏、父と足を運んだ長野・菅平。目の前に広がるテンポの速いプレーに魅せられ「桐蔭のラグビーは面白い。行きたい」。当時無敵だった地元の東福岡を倒したいという思いもあり進学先を決めた。

 10年前からタイに単身赴任中の英司さんは「出会った仲間と、運に恵まれたから今がある」。愛息を遠くからそっと見つめてきた。今大会も「平常心で戦いなさい」とアドバイスを送っただけだ。

 強豪を次々と倒し勢いに乗る桐蔭。初の単独優勝まであと一つ─。「(準優勝だった)去年の借りを返すときが来た。攻撃の判断は僕にかかっている。冷静に戦いたい」と伊藤大。希代のゲームメーカーが、決勝の舞台で最高の輝きを放とうとしている。

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