映画「ロニートとエスティ 彼女たちの選択」
厳しい掟社会の中で、自分らしく生きることを“選択”した二人の女性

世間の偏見と対峙する映画「ナチュラルウーマン」でアカデミー賞外国語映画賞を受賞したセバスティアン・レリオ監督が、信仰と愛の間で葛藤する二人の女性の美しき純愛を描いた作品「ロニートとエスティ 彼女たちの選択」が2020年2月7日(金)より公開。

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超正統派のユダヤ社会に生まれ育ったロニートとエスティ。2人は親友、いやそれ以上の関係だったが厳格なユダヤ社会がそれを赦さなかった。
ロニートは厳格はユダヤ教指導者(ラビ)である父を捨ててニューヨークへ渡る、一方エスティは幼なじみの男性ドヴィッドと結婚し、そのまま故郷ユダヤの社会で新しい生活を営んでいた。

かつては信仰により離ればなれになった二人だったが、父の死をきっかけに故郷に帰ってきたロニートはそこでエスティと再会を果たす。そして、偽れない自分たちの想いを呼び覚ましていくことにーー。

人間は常に「選択」をし続けている。
大きい選択や小さい選択の積み重ねで人生を進んでいく。もちろん毎日の選択が正解かどうかは誰にもわからない。私たちは自分の選択した道を信じて、進んでいくしかないのだ。

だが、もし選んだ道に後悔をし、かつて選ばなかったもう一つの道が突然目の前に現れたら…。それを選び直せるとしたら、あなたはどうするのだろうか? 個としての自由な選択をするのか、信仰・社会としての抗えない選択をするのか。

この物語は二人の女性の愛と信仰をテーマにしたものではあるが、その二人を取り巻く大きな愛の話とも言える。
エスティを愛している夫ドヴィッドや、皆から厚い信頼を得ていたラビであるロニートの父。ロニートの父を偲ぶ者たち。それぞれの想いがとてもとても繊細に描かれていて、どの場面も愛おしく目が離せないのだ。

また、厳格な超正統派ユダヤ・コミュニティで育ったロニートの思想や価値観の相違も示唆できるのが興味深い。どこか「ナチュラルウーマン」の面影も感じられる反骨精神なのだが、肌の露出を避け、首の詰まった服に長いスカートなど、女性に「Modesty(慎ましやかさ)」が求められる故郷へ、ニューヨークで自由な暮らしを手に入れたロニートが帰ってくる。

ロニートの服装は、スカートの丈が短くシャツのボタンが開いていて、コミュニティの教えに反しているのだ。だがその服装はどこか味気ないようにも感じられる。これは父の死に対しての追悼の意の表れなのか、それとも捨てきれない自身の信仰の表れなのか…。
はたまた全体的にダークトーンな映像の中、ところどころに個性を惹くカラーが散りばめられ印象に残る。覆い隠された世界に映える鮮やかな色。そこに込められたメッセージとは。

そんな目線で観るのも面白いかもしれない。

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映画:ロニートとエスティ 彼女たちの選択
2020年2月7日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町他 全国ロードショー
配給:ファントム・フィルム

記事作成/カワムラナオコ
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