熟成が進みオンロードで輝く新型GT-R|日産 GT-R 2020年モデル 基準車 試乗レポート

日産 新型GT-R 2020年モデル 基準車

豊かなポテンシャルを余裕として味わえる基準車

GT-R NISMOの2020モデルをサーキットで味わった後、オンロードで基準車である2020年モデル(以下MY20モデル)にも試乗することができた。

NISMOでその刺激を味わった後だけに、一般公道ではGT-Rの魅力が味わえず物足りなくなるのではないか? と心配したが、むしろGT-Rが持つ「ロードゴーイング性能」を確認することができた。

日産 新型GT-R 2020年モデル 基準車

MY20モデルの魅力は、そのポテンシャルを“余裕”として味わえることだ。

タービンはGT3譲りの高性能版ではく、ブレードが12枚のMY17仕様。しかしNISMOと同じチューニングとして、「アブレダブルシール」を採用しているのが、基準車におけるひとつのトピックである。

アブレダブルシールとはコンプレッサーハウジングとタービンブレードの間に挟み込まれる樹脂製のシールで、これを挿入することで吸入空気経路のクリアランスは50%も狭められた。その結果タービンのピックアップレスポンスが高まったという。

日産 GT-R 2020年モデル 基準者
日産 GT-R 2020年モデル 基準者

アブレダブルシールの挿入は量産化の難しい技術だが、これをクリアしたことによって基準車にも採用ができるようになったとのことだった。

またRモードを選んだ際はNISMOと同じくシフトスケジュールが先鋭化され、より低いギアで積極的にパワーバンドを維持するようになった。

日産 新型GT-R 2020年モデル 基準車

大人の振る舞いを演じるノーマルモード

そんな“ノーマル”のGT-Rをオープンロードで走らせると、実に心地良い瞬間が得られる。重厚なボディを土台に、ガッシリとしたステアリング周りの剛性感とシートのシッカリ感がミックスされ、自分がGT-Rを運転していることを強く意識させられる。

MY20モデルに進化する上ではそのサスペンションにもリセッティングが行われたが、それはMY14モデルで得たしなやかさを損なうものではなかった。減衰力の立ち上がりが素早くなったことで初期のロールスピードが抑えられ、なおかつ路面からの入力をきちんといなしながら、ハンドルを切り込むほどに車体の動きをわかりやすく乗り手に伝えてくれるのである。

日産 新型GT-R 2020年モデル 基準車
日産 新型GT-R 2020年モデル 基準車

惜しいのはこのしなやかな足回りに対して、タイヤの剛性が少し高過ぎること。GT-Rの性能を安全性と共に担保するためにはこうしたタイヤのしっかり感が必要なのだろうが、高額なロードゴーイングカーとしては、もう少し上質なダンピング特性が欲しいと感じた。

追従性の高いシャシーに対して、エンジンもリニアな反応を見せる。アクセルの踏み始めから過給が素早く立ち上がり、なおかつギクシャク感なしに加速してくれるのは、アブレダブルシールの恩恵か。どこまでも気持ち良く伸びて行く加速には高級感さえ感じられ、少なくとも公道では、570PS/637Nmの数値に不満など抱かない。

Rモードではアグレッシブに

そんな“大人の振るまい”を演じるGT-Rも、シャシーの制御を「R」モードに入れると、その本性を少しだけ覗かせてくれる。ダンパーは減衰力をさらに高め、操舵に対し車体が素早く反応するようになる。サーキットで感じられる慣性重量の大きさも、公道では意識されない。むしろグイグイと、その鼻先を内側へネジ込んで行く圧倒的なグリップ感が支配的になる。

日産 新型GT-R 2020年モデル 基準車

シフトスケジュールの先鋭化は公道の方がよりアグレッシブに感じられる。クラッチのつながりはダイレクトになり、ブレーキングからのオートブリップで減速感を楽しみながら、素早く加速体勢に転じることができる。

その痛快極まりないターボパワーを公道で解き放つことはモラルとしてできないが、それでも日常領域から感じる分厚いトルク感や、エンジンブレーキを効かせた際のシフトダウンレスポンス、追い越し車線へ出るときのタイムラグのない加速によって、VR38ユニットの存在感は大いに楽しめた。

日産 新型GT-R 2020年モデル 基準車

NISMOと基準車という両翼

GT-Rは未だに油圧制御式パワーステアリングを採用しているため、スカイラインがいち早く実現した「プロパイロット2.0」の自動運転領域に踏み込んでいないが、こうしたハイパフォーマンスカーだからこそオンとオフの切り替えがある方が望ましい。

次期型があるとすれば当然スカイラインのようにDAS(ダイレクト・アダプティブ・ステアリング)を投入してくるだろうが、それだけ現行GT-Rは長生きをしたということでもある。

ともあれ「NISMO」と「基準車」という両翼を得たことで、GT-Rは本音と建て前、いや開発側の情熱と、ユーザー側の実益を美しく補完したと感じた。NISMOは確かに素晴らしいけれど、日常を共にするなら見た目や価格的にも、基準車はバランスがいい。個人的には4ドアだったら、なおよいと感じる。

継続して欲しいGT-Rという存在。次期モデルの開発はいかに?

ちなみにいま最もGT-Rが売れているのは、実は日本。輸入車組が、その乗りやすさと速さに驚きを感じて、乗り換えているケースが多いのだという。

スカイラインの名を捨てグローバル展開したGT-R。本来であれば数を稼げる北米マーケットが一番売れているべき。また登場から7年経ってようやく一般的な乗り心地を持つMY14モデルが登場し、ここから徐々に一般的ユーザーが評価するようになったというのも、実に対応が遅い。しかしその頑固さやストイックさがあったからこそ、GT-Rは未だに古さを感じさせず現役なのだろう。

次期型の開発がどう進んでいるのかは未知数だが、とにもかくにも日産にはGT-Rというクルマを継続して欲しいと願う。できればもう少し安く、など様々な思いはあるが、一番大切なのはその歩みを止めないことだ。

[筆者:山田 弘樹/撮影:佐藤 正巳]

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