農福連携でレインボーフラワーづくり 加工委託、生産に専念

鮮やかなグラデーションを描くレインボーフラワー

 雲仙市瑞穂町の花き生産・販売会社「TSUYOSHI FLOWER」(浜塚剛代表)が、諫早市小野町の障害者福祉施設「トアルク」と協力し、花びらを多色染めしたレインボーフラワーづくりに取り組んでいる。農家としては手間がかかる工程を委託することで生産に専念でき、福祉施設は利用者の就労支援とともにフラワーセラピーの効能も期待できる。それぞれ「互いに助け合いながら、農福連携の形をつくっていきたい」と意気込む。

 同社は、ハウスなど約90アールでカーネーションを栽培し、年間約80万本を出荷。代表の浜塚さん(33)は2018年の全国花き品評会で農林水産大臣賞の受賞をはじめ、県知事賞など数々の受賞歴を持つ。22歳で就農して以降、意欲的に新商品開発に取り組む。
 商品価値を高めるため、多色染めした花の生産に着目。摘み取った生花の茎を染料に浸して花びらに色を付ける「染め加工」をした商品は、高値で取引される。だが、手間ゆえに農家では敬遠されてきた。浜塚さんが取り組むのは、茎を四つに分けて4色に浸す「レインボー」。通常よりさらに手間がかかるが、多色が混ざり合って描くグラデーションは、レインボーの名に恥じぬ彩りが特長だ。
 以前から福祉との連携を考えていた浜塚さんは、「トアルク」管理者の山口正幸さん(51)に相談。2019年10月から染め加工の委託を始めた。約10人の利用者が、茎を四つに切って染料に浸す作業を担う。茎から吸い上げられた染料は、半日ほどで花びらに達する。
 完成品を農家に渡し、全国へ出荷。レインボーフラワーは通常品種の約2倍の価格で取引されるという。加工を委託することで、農家は生産に専念しながら収入の安定性を確保できる。現在、同社を含め雲仙市内3農家が委託して月3千本を生産。今後、月5千本に増やせるよう体制づくりを進め、将来的には同市内に作業所を開設することを視野に入れる。
 山口さんは「生花に触れながらみんな楽しそうな表情を見せ、働く喜びにつながっている」。浜塚さんは「人の手でやるからこそ、それぞれの彩りがある。互いに助け合い、商品価値を高めていきたい」。作業を終えた白いカーネーションを前に笑顔を見せる2人。ともに育てた花たちは、ゆっくりと虹色に輝く時を待つ。

加工を終えた花を前に笑顔を見せる浜塚さん(左)と山口さん=諫早市、トアルク

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