簡宿をホテルに一新 外国人客ターゲット 川崎区

共有リビングに立つ吉崎さん(左)と清水さん=川崎市川崎区日進町

 簡易宿泊所(簡宿)が立ち並ぶ川崎市川崎区日進町に8日、外国人客をメインターゲットとしたホテルが誕生する。もともと簡宿として使われていた築約30年の物件を、市の補助金を利用しリニューアルした。運営する「NENGO HOTELS」(川崎区)の執行役員・吉崎弘記さんは「旅行客だけでなく地域住民にも交流の場として利用してほしい」と話している。

 8日に営業を始めるのは「Japanese style-inn スワロー」。1988年に完成した簡宿「ビジネスホテルスワロー」の建物を2千万円を投じて改装した。

 もともとの簡宿は3畳一間を21室備え、トイレや風呂、洗面所などは共用だった。改装後は、グループでも使いやすいように1部屋を7~10畳程度に広げて8室に集約したほか、トイレを和式から洋式にして数を増やすなどした。近年要望の高い無線LAN(Wi-Fi)や英語対応の案内看板も導入した。

 日進町は、高度経済成長期に京浜工業地帯を支える簡宿街として発展したものの、近年は建物の老朽化や経営者の高齢化、宿泊者の好みの変化などで宿場町としての衰退が目立っていた。

 そこに追い打ちをかけたのが、2015年5月に犠牲者11人を出した簡宿2棟の火災だ。「スワロー」の管理人を約30年務める清水保子さんは「それから一気に簡宿が減少した」と振り返る。

 平成初期に50軒近くあった簡宿は20軒弱まで減少した。スワローも利用が低迷し、老朽化も目立っていたことから営業形態を変えることを決断。「NENGO HOTELS」に運営を委託することにした。

 同社は18年1月、日進町の簡宿をゲストハウス「日進月歩」にリニューアルさせる事業を手掛けた。日進月歩の運営では、「和室を体験できてよかった」「家族や友人と同室で泊まりたい」などの意見が数多く寄せられたといい、そこで培ったノウハウを今回の事業に還元することにした。

 改装には、川崎駅周辺で散見される遊休不動産の有効利用を目指した市の補助制度を活用。インバウンド(訪日外国人客)ビジネスの推進を目的としたリノベーションに対し、最大で500万円の補助金を出して支援している。

 吉崎さんによると、簡宿の経営者には街に愛着がある人も多く、「売却してマンションになるより、既存の施設を生かしてほしい」との意向の人が多いという。清水さんは「壁などもきれいになり見違えるようになった」と話し、吉崎さんも「この宿だけでなく、地域みんなが元気になれば」と意欲を見せている。

 「Japanese style-inn スワロー」は1泊3千円から。

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