一昔前の缶コーヒーのテレビCMのイメージとして思い浮かぶのは、働く男性が一息つく場面。しかし、ペットボトルコーヒーの登場以後、そんなイメージが覆りつつあります。
日本コカ・コーラが展開する「ジョージア」ブランドから生まれる新商品がターゲットに据えるのは、20代前後を中心とした「カフェネイティブ世代」。「ジョージアらしくない」仕上がりになったという同商品は、従来品とどう違うのでしょうか。
ペットボトルのカフェラテは「味が薄い」
同社が3月30日から販売を始めるのは「ジョージア ラテニスタ」。まろやかなコクの「カフェラテ」と、ほろ苦いコクの「ビターラテ」の2種類を展開します。希望小売価格は139円(税別)。サイズは280ミリリットルと小型です。
マーケティング本部コーヒーカテゴリーの福江晋二バイスプレジデントによると、学生時代からチェーン系のカフェに慣れ親しんでいる「カフェネイティブ世代」を狙った商品だといいます。
この世代に調査すると、カフェで飲むカフェラテはミルク感がたっぷりで本格的というイメージがあるのに対し、ペットボトルの商品は「味が薄い。水っぽい。ミルクより甘さが立つ」という声があがったといいます。
「カフェネイティブ世代は、コーヒー豆や焙煎がどうというより、気分に合わせたミルク感を味わえるかが重要です」(福江バイスプレジデント)
そこでジョージア ラテニスタでは、独自開発した「ミルクブースト技術」を採用することで、従来品と比較して3倍の「ミルク感」(脂肪量)を実現。福江バイスプレジデントは「カフェで飲むものにかなり近づいた」と自信をのぞかせます。
今までのデザインは「おじさんくさい」
しかし、商品パッケージはシンプルで上記に関する説明は一切ありません。ダスティーカラーの少しくすんだ色合いのデザインに、商品名が書かれているだけです。
「今までのRTD(フタを開けてすぐに飲むことができる飲料)は若い世代にとっては、ともするとおじさんくさい、自分向けじゃないと思われてしまいます。プロトタイプでもパッケージに日本語の説明が入っただけで、格好良くないとなりました。今までのジョージアらしくないデザインをうまく表現できています」(福江バイスプレジデント)
スマートフォンで多くのことができるため、カフェネイティブ世代は持ち物が減り、かばんが小さくなっているそう。大きいサイズのボトルだとかばんから飛び出してしまうため、「持ち歩きに不便」という声を反映させたといいます。
味はもちろん、パッケージもカフェネイティブ世代のニーズに合わせて変更を加えました。徹底したこだわりぶりです。
ワンブランドで二兎を追う
同社が新たなユーザー層の取り込みにチャレンジをする背景にあるのは、ペットボトルコーヒー「ジョージアジャパン クラフトマン」の好調ぶりです。
オフィスで仕事をしながら少しずつコーヒーを飲む「ながら飲み」の需用に応えた500ミリリットルの商品で、「ブラック」と「カフェラテ」を2018年5月に、「微糖」を翌2019年6月に発売しています。トータルの売り上げは2019年11月時点で前年同月比3倍を記録しました。
ジョージアジャパン クラフトマンで従来からの顧客層であるオフィスワーカーの心をつかむと同時に、ペットボトルコーヒー飲料で新たに取り込める可能性のある層として目をつけたのが、RTDのコーヒーをあまり飲まないカフェネイティブ世代でした。
徹底した潜在顧客層への歩み寄りによって、二兎を追おうというジョージアのブランド戦略。思惑通りに、これまで獲得してきたユーザーとは異なる価値観を持つ若年層を取り込むことができるでしょうか。