『パラサイト 半地下の家族』 韓国の格差社会を痛烈に皮肉る悲喜劇

(C) 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

 『殺人の追憶』『母なる証明』などの韓国の若き巨匠ポン・ジュノの新作だ。昨年のカンヌ国際映画祭で韓国映画史上初めてパルムドールに輝いた。本当なら2004年にパク・チャヌクの『オールド・ボーイ』が受賞していたはずで、もし本作をもってしてもダメなら、そもそも韓国には縁がないんだと誰もが諦めたことだろう。これは、それほど突き抜けた傑作。実際、米アカデミー賞で外国語映画賞だけでなく作品賞にもノミネートされると、もっぱらの評判である。

 全員失業中の貧しい一家の長男が、IT企業を経営する裕福な一家の娘の家庭教師となったことから、長女と両親も素性を偽ってその家に入り込み…。裕福な家族に寄生する彼らを通して格差社会を痛烈に皮肉るブラックな悲喜劇だ。彼らは下層の、しかも路面より低い半地下住まい。一方、裕福な一家のモダンな豪邸は高台に建つ。そんな上下の空間設計が伏線のように緻密に張り巡らされ、本作の世界観を決定づけている。階段や坂道、水の流れ…とりわけバリエーション豊富に登場する階段が重要な役割を担い、視覚によって格差社会をじわじわと観る者の脳裏に植え付けていく。

 それでいて、サスペンスと笑い、詩情の緩急も秀逸で、中盤以降の二転三転する展開からは片時も目が離せない。社会性と娯楽性と芸術性が見事な融合を遂げた、まさにポン・ジュノの集大成と呼べる完成度である。★★★★★(外山真也)

監督:ポン・ジュノ

出演:ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク

1月10日(金)から全国公開

© 一般社団法人共同通信社