「共に生きる」意義

 文字通り「共に生きる」ことの意義を改めて教えてもらった。昨年、全国中学生人権作文コンテスト県大会の審査に携わる中で、共生社会の大切さを訴えた最優秀賞2人の作文は何度も首肯しながら読ませてもらった▲県立長崎東中1年の松尾果凛さんは、水泳や日舞などに挑戦する発達障害のある友人に刺激を受け、尊敬しているとし、「障がいがあるなしを意識することなく、当たり前の友達だった」とつづった▲諫早市立小野中3年の林楓花さんは、ダウン症の弟の成長を家族らが焦らず見守っていることを知り、「弟は弟のペースでいいんだ。周りと比べる必要はない」と考えられるようになったという▲2人にとって、2016年に相模原市で起きた知的障害者施設殺傷事件は衝撃的だった。身勝手な理由で凶行に及んだ元施設職員に対し「障害のある人もできる事はたくさんある」と強く反論した▲2人に共通するのは、日々の暮らしや交流の中で培われた障害への深い理解だろう。松尾さんは、障害者が身近にいなければ、その特性を知り、接し方を学ぶ機会を失ってしまうとも指摘した▲障害者施設に勤めながら、差別的な思考に陥った元職員との違いはどこにあるのか。相模原事件の裁判員裁判が8日から始まる。動機の解明が進むのか注目される。(久)


© 株式会社長崎新聞社