コスメブランド設立 収穫した果実や花を活用 利益投資で土地再生へ 

収穫した果実や花を原料とするオリジナルコスメブランド「junero(ジュネロ)」を立ち上げた山辺さん=佐世保市針尾東町

 長崎県佐世保市と西海市でミカンやネロリなどの果樹園を営む農家、山辺吉伸さん(38)は、収穫した果実や花を原料とするオリジナルコスメブランド「junero(ジュネロ)」を立ち上げた。将来的には利益を荒廃した土地に投資。再生させて雇用を拡大する仕組みづくりを目指している。
 佐世保市針尾東町出身で、実家はミカン農家。2011年ごろから、皮に傷があるミカンの活用策を模索していた。取り組んだのは果皮から天然精油を抽出したアロマオイルの製造。独学でアロマを学び、13年にミカンの皮からオイルを抽出することに成功した。
 力試しのつもりで14年に東京のイベントに出店した。「オーガニックですか」。客からたびたび尋ねられ、無農薬栽培が求められていることに気が付いた。当時、無農薬のミカン農家は県内に見当たらなかったため、挑戦を決めた。
 無農薬栽培をする土地を探していた15年ごろ、西海市で多くの荒れた畑を目の当たりにした。「30~40年前は有名なミカンの生産地だったのに…」。血の気が引き、がくぜんとした。「どうにかしないといけない」。将来の農業に危機感を抱き、商品開発への思いを強くした。
 付加価値のあるミカンを販売し、利益を荒廃した土地に投資して再生させる仕組みづくりを考案。福岡県の化粧品を取り扱う製造会社に飛び込んだ。「原料はある。新しいものをつくりたい」。思いは通じ、話し合いや試行錯誤を重ね、オーガニックの化粧品ができた。19年夏、ようやく商品化にこぎつけた。
 商品は、妊娠線の予防効果があるネロリの精油を配合したモイスチャークリームや、髪にツヤとコシを与える効果がある青ミカンのエキスなどを配合したシャンプーなど7種類を展開。関東の美容院ではすでに導入され、関西の産婦人科から「使いたい」という声が寄せられているという。
 地域の活性化につなげようと、11月に針尾東町の西海橋公園に店を設けた。山辺さんは「荒廃した土地を再生させる目標に向かい、販売に力を入れたい」と意気込む。問い合わせはYAMABE KAJUENの電話(0956.76.9342)かフェイスブック(@yamabekajuen)。

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