【相模原・障害者殺傷】被害者家族「解明を」 暴れ退廷の被告「なんて愚かな」

植松被告の法廷での様子をスケッチしたメモを示す尾野剛志さん=横浜市中区

 2016年7月に相模原市緑区で発生した「津久井やまゆり園」事件から3年半。8日に開かれた初公判には、元施設職員の植松聖被告(29)と関わりのあった被害者家族や施設関係者らも傍聴した。「なぜ犯行に及んだのか」。法廷で暴れた被告に戸惑いつつ、今後の公判で真相解明が進むことに期待を寄せた。

 息子の一矢さん(46)が重傷を負った尾野剛志さん(76)は今も、心の中で葛藤しているという。愛息の心身を傷つけたとされる男のことは「憎むべき、許してはいけない」気持ちは強いが、「施設では朗らかで優しそうに見えた好青年がなぜ犯行に及んだのか」という疑問が拭い去れないからだ。

 被告は、意思疎通が難しい重度の知的障害者の存在を否定する考えをなお変えていない。「障害者差別がある現状を変えていくための分岐点の裁判になる」。そう願い、傍聴に通い続けるつもりだ。

 この日、被告が法廷で暴れたことについては「精神障害で責任能力がないように見せかけたパフォーマンスではないか」と切り捨てた。

 入倉かおる園長(62)は法廷中央の最前列で傍聴し、被告が退職して以来、約4年ぶりにその様子を間近で見た。「ぽっちゃりしたな、年を取ったなという印象。声はか細く、緊張してこの日を迎えたのだろう」と推測した。

 被告がおわびの言葉を述べたことについては、「障害のある被害者本人に向けられたものではなく、自分の心を開いて償うという態度を示したとは思えなかった」と受け止めた。

 検察側の冒頭陳述では、やまゆり園での勤務経験と社会情勢が犯行の要因となったとされた。「重い障害のある人の支援は苦手で、施設利用者と一緒に過ごすことを楽しめなかった人だった。そういう意味では私たちの指導不足なのかもしれない」と指摘。一方で、入所者の体調を気に掛けるなど愛情を注ぐ一面もあったといい、「被告の心の変化はいつだったのか、キャッチしきれなかった」と悔やんだ。

 暴れたことについては「法廷に身を置いている度胸がなく、なんて愚かなのか」とあきれた様子で語った。

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