魚の「脂」の正体は? なぜ、美味しく感じるの? 津本式を学び考察する!

さぁ、話題沸騰中の魚の締め方「津本式」のマニュアル本の編集も終わり、1月20日に本は発売しますので、買ってね。と、雑に宣伝しつつも、それよりこの本の取材の最中に、もう語りきれないくらい「魚と食」にまつわる様々なオモローネタを多角的にブチ込まれましたので、本取材からのコアネタ、また投入しますよ!

「うわぁ、この魚、脂がのってるぅ!美味しそう〜」はて。脂の旨味って?

魚は脂がのっていると美味しい。当たり前のように言われるけど、あるとき思いました。えっと、脂の旨味ってなんやねんと。よく言われるのは、「香りや甘みが脂から出る」みたいなお話。

じゃぁ、掘り下げるか!と調べていくと、わかったこと。魚の脂は不飽和脂肪酸とよばれる脂に分類されること。有名なドコサヘキサエン酸だとかイコサペンタエン酸なんてのも、まぁ、魚の脂の成分ですよ〜というのがわかりました。

はぁ。でも旨味とどう直結するんだ。香りってのも眉唾だなぁと。でも、そんな疑問に悶々としていると……。

「魚の脂ってね、その魚の食べてきた餌の影響を結構受けるんだよ。例えば、以前ね、津本式で寝かせたブリを2週間目に食べたんだけど、甘海老の香りがふわりとしたんだよね」

と、識者の方の情報が飛び込んできます。ん? ちょっとまってください。甲殻類を主食としている魚って、身にその臭みが移って食味が落ちるという印象があるのですけど、甘海老の香りがいい塩梅で残っていたんですか?

「あ、確かにね。甲殻類が腐敗すると脂や血中に香りが移るんです」

あ。なるほど、だから早く内蔵を処理する必要があるんですね。

「もとい、津本式が良いのはそういうところです。血を抜いて、水でしっかりとそういった臭み(の元)を洗い流すからね。だからこそ、今ままで美味しくないと言われていた魚が、劇的に変わると言えます。脂の話でもう少し付け加えると、不飽和脂肪酸って融点がとても低いんです。なので、口の中に入れると溶け出すので、香りと脂肪味が良い感じに口溶けする。そして、鼻に抜ける芳香を生み出してくれるんですね。ほら、津本式って冷温保存するでしょ。あれも大事なんですよ。あと、脂って酸化して腐敗していくのですが、脱気処理をすることでそれを防いでいるんですね。それも合理的です」

津本式では、しっかりと血を水で抜いて、そこから内蔵などを取り除き、仕立てた魚を紙に包んで、ビニール袋にイン! そこからビニールの空気をホースやクリーナーで抜いて真空状態みたいにして、それを氷水で冷やして保存(寝かせる)する。そういった処理が、色々と魚を良い方向に向かわせているんですね。

津本式のメソッドで処理した魚を、保存する方法。2種類の紙で本家津本さんは魚をまずは包みます。まず、ミートペーパーを魚に巻きます、これでドリップを吸収、次に、グリーンパーチペーパーで保護して魚をビニールに入れて、ホースなどで脱気。機械などで真空パックにするのは、やや、やりすぎ。適度な圧を魚に掛けるぐらいで良い。この状態で氷水に保管することで、長期の保存が可能になる。

津本式仕立ての魚を扱ってお寿司のネタとして提供している、東京・西新宿の「sushi bar にぎりて」のヘッドシェフ・保野淳さんも魚の脂について補足してくれた。

「不飽和脂肪酸が香り成分と結びつくことがわかっていますので、魚の脂に香りってのは間違ってないと思いますよ」

ははーん。少し見えてきましたね。脂の正体とやらが!

味の5大要素。甘味・苦味・酸味・塩味・うま味。

そして、近年、基本味要素として新たに加わりそうなのが「脂味」!!!

根源的に、人間は脂を欲す。ゆえに脂は美味しく感じるのであーる。みたいなソースはどこやねん的なお話をされても納得できないタチなのですが、どうやら、納得できそうな話を耳にします。

なんでも、人間には脂を旨味と感じる神経があるっぽい研究結果が発表されているんですよ。しかも甘味を感じる神経とも関連があるとか。その情報提供者から提示された情報ソースを見ると、難しぃ! でもなんとなくわかるっっ!↓

香りは嗅覚ですし、良い香りがすれば、美味しさにも直結するというロジックはよく理解できますよね。でも、甘みはどうなんだろうと思っていたのですが、こちらのリンク先の資料を見ると「脂に甘みを感じる」という感覚は、甘味神経が脂肪酸を感じることに起因してる的なお話もあります。

そっか、オラ、難しいことはよぐわがんねけど、脂は旨味と人間(生き物)は感じるんだな。で、魚の脂って旨く感じるわけだなぁと。

あと、脂はほら、液体ですからね。魚の身からドリップされた旨味や風味と程よく混じり合い、美味しさが増すという副次的な効果もあるんですね。

兎にも角にも近年、脂味も基本の5味のひとつに加えてもいいんじゃないか。なんて議論がなされているほど、味覚に重要な影響を与えている要素のようなんです。

魚の風味は「脂」に強く結びつく

ということで結論。魚に脂がのっているということは、魚が良い環境で餌を豊富に食べ、腹などに脂肪が付いた状態ということです。津本式を勉強していくと、脂がのっていないから美味しくないではないことも考察はできるのですが、どちらにせよのっていたほうが美味しい魚になるポテンシャルは高いということもできます。

脂は劣化しなければ、「風味」「香り」「味」と言う味覚への広がりが期待できる言えるからです。ぐるっとまわって、この脂は、本来、新鮮な状態でないと、力を発揮しにくい要素とも言えるんですね。劣化しちゃうといきなり、臭みに変わっちゃうモノでもあるので。なので、そういった劣化を抑える技術である津本式の凄さが、このあたりでも発揮されちゃうワケなのであります。

内蔵を取り出すと脂肪の固まりが! よく餌をたべ、ほどよく運動している魚は美味しい。写真は天然魚です。ちなみに、養殖魚はちなみに脂はのっていますので美味しい。飼料などの餌の臭みが抜けると抜群なわけです。でも、、、(その先の話はいずれっ!)

脂は美味しい、脂は正義! 人間が魚の脂だけでなく「油」を求める生き物である以上、それを美味しさと感じるのは必然というわけですね。

さて、脂の旨味がほんのりわかってきたら、次は「血の旨味」ってなんぞや。というところが気になりますよね。津本式の象徴的効果「血抜き」はメリットなのですが、それをデメリットだと唱える人も確かにいます。そのデメリットって何か?を近いうちに考察したいと思います。でも、今回の脂の正体を理解すれば「血抜き」のデメリットって割に薄いことがわかってくるんですよね。

マニアックな津本式談義、発売される小社の本を購読いただければ、さらに楽しめると思います。では、ここでも雑に宣伝しつつ締めさせていただきます。

© 株式会社 内外出版社