正社員を辞めた28歳フリーターが社会保険に加入すべき理由

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、夢をかなえるために正社員を辞めたという28歳フリーター。転職に備えるための出費が多いので支出を改善し、貯金したいといいますが……。FPの横山光昭氏がお答えします。

あと3年ほどで200万円を貯めたいと思っています。前職を辞め、現在はフリーターです。東京の出版社で編集者として働きたいと思っており、そのための資金を貯めたいのです。

親に専門学校に行かせてもらい、パティシエとして正社員で働いていました。ですが本が好きで、やはりどうしてもその業界で仕事をしてみたいと思いました。30歳手前の今しか転職の好機はないのではないかと思っていますが、お金がありません。正社員で働いて貯めた貯金も、少しずつ目減りしています。

バイトは2つ掛け持ちをしています。今は給与明細から所得税しか引かれておらず、住民税は納付書で自分で納めていますが、正社員の時と同じほどの手取り収入を維持しています。ですが、東京に行くためにパソコンができなくてはいけないと思いますし、英語も必要かもしれません。一人暮らしに備え、健康維持と自活のためにフィットネスに通い、料理教室にも通っています。結局、そのために収入をすべてを使うことになってしまいました。

ほかにも、今は実家暮らしですが、外食が多くなっています。これも支出を増やしてしまった原因かもしれません。バイトで疲れてやむを得ずそうなっています。できれば、いろいろな支出を改善して、貯金だけではなく将来のために投資もできるようになりたいと思っています。まずは何から始めるとよいでしょうか。

<相談者プロフィール>

・男性、28歳、未婚

・職業:フリーター

・毎月の手取り金額:24.3万円(変動あり)

・年間の手取りボーナス額:なし

・普通預金:70万円

【支出の内訳(24.3万円)】

・住居費:4.5万円(家に入れるお金)

・食費:5.2万円(外食とコンビニが多い)

・通信費:0.9万円

・交通費:1.6万円

・日用品代:0.6万円

・教育費:6.2万円(パソコン、英語、フィットネス、料理教室、書籍)

・被服費:1.4万円

・交際費:1万円

・その他:2.9万円


横山:ご相談ありがとうございます。転職したいとお考えなのですね。その資金を自分で準備しようと考えられていることは立派ですが、バイト2つとなると時間のやりくりも大変でしょう。その中で相談者さんが今なすべきことを考えましょう。

今すぐ必要か?しっかりと考えて支出を

教育費は収入の約25%を占めています。結構大きな割合ですね。バイトを2つもしていて、習い事に多く通い、習得することができているのでしょうか。

家で食べれば親御さんが準備してくれてお金もかからないでしょうに、バイトに疲れて外食やコンビニでの買い物が増えているのであれば、すべてが悪い循環にはまってしまっているように思えます。どれも必要なことでしょうが、今はこれ、次にこれというように、優先順位を付けて順に取り組むとよいのではないかと感じます。

例えばバイト2つが譲れないこととしましょう。そうであれば、習い事はまずどれを優先させるか考え、その1~2つ程度に取り組みます。一度にあまり複数やっても身につかないでしょうし、忙しくて通えないということもあると思うからです。せっかくやっているのに、それではもったいないですよ。

しかも支出状況から見ると、色々なところに行くために洋服代がかかったり、交通費もかかっているように思えます。何か1つでも2つでも習い事を減らせると、お金の循環も、習得の度合いもよくなるのではないかと思えます。料理教室に通っているのに、外食とコンビニ弁当では、その習ったことも活かせていないということになりますよね。もったいないことです。

またこれらとは関連しませんが、通信費も見直せるはずです。最近は安いプランが出ていますし、格安通信業者も質が良くなっていると思います。基本料金が下がれば利用料全体が下がると思いますので、見直しの価値はあります。

このように一つずつについて、「今必要か」「後でもいいのか」「必要がないのか」、その辺りを考えて支出をコントロールすることに取り組んでみてください。ゆとりが出てくるとそれを貯金しながら、一部を投資するということも可能になってきます。

税金は納めているけれど…

アルバイト先で所得税は納められているようですが、社会保険はどうなっているでしょうか。

正社員の時は自動的に給与から天引きになっていて、知らないうちに、当たり前に加入していた健康保険や年金保険も、退職してアルバイトになってしまうと自分で手続きをしない限り加入できません。未加入のままになっている可能性があれば、早急に役所の窓口に行って手続きをしましょう。意外と「手続きを忘れていた」とか「自動的に入っているものだと思った」などという人が多いです。

健康保険に入っていないと、医療費が通常3割負担でいいところ10割負担になってしまいます。万が一高額な医療費がかかっても、高額療養費制度などを利用することもできません。

また年金保険料を納めていないと、将来の老齢年金に影響が出ますし、障害年金なども受けられなくなります。もしご家族ができたら、遺族年金の元にもなります。高い金額だと思われるかもしれませんが、支出を見直し、しっかりと支払っていきましょう。

貯金の他に投資もしたいとありましたが、投資をするにも年金保険料を納めていないとできないものがあります。私的年金制度のiDeCo(個人型確定拠出年金)です。加入には「公的年金を支払っている」ことが条件になります。ですから、加入手続きをしていても国民年金保険料の免除や猶予を受けている人はiDeCoで投資をするとこができないのです。

掛け金が全額所得控除になり、支払う所得税、住民税が安くなることで人気の制度ですから、利用するための準備は整えておいて損はないでしょう。

病気になってから後悔しても後の祭り、せめて医療保険への加入を

公的医療保険、年金制度への加入のほか、現在、生命保険とりわけ医療保険にも加入していないようです。もし、医療費の支払いをしても問題がないほどの貯金があればおすすめはしないのですが、今の貯金は70万円。公的医療保険もないのですから、万が一病気や怪我をしてしまうとあっという間になくなってしまいます。それは問題です。

ですから、万が一健康上の問題が起きた時に対応できるよう、医療保険には入っておいたほうがよいと思うのです。

よく若い方は健康に自信があるため、民間の医療保険に加入していないというケースを見かけます。ですが病気になってしまった後では保険に入りにくいことが多いですし、入っておけばよかったと後悔しても後の祭りです。

後悔しないよう、また今後、夢を叶える土台をしっかりするためにも、一度検討されるとよいと思います。特に、住む環境が変わると、体調を崩してしまうことがありますから、それに備えるためにも、です。お若いので保険料の負担は少ないと思いますよ。

夢に向かうことは素晴らしいですが、そのために取り組むことや行動が中途半端になってしまうと、社会的信用も失いますし、印象もよくありません。欲張らず、慌てずに一つずつ取り組めば、すべてこなしていけると思いますよ。頑張ってほしいと思います。

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