火星のリアルな映像・音を狙う進化した探査車「マーズ2020」

今年7月に打ち上げを予定しているNASAの火星探査車「マーズ2020」は先日走行テストを終え、準備を進めています。この画像の左側は2012年に火星に着陸した探査車「キュリオシティ」(MSL: Mars Science Laboratory とも呼ばれています)、右側はマーズ2020です。一見するとそっくりに見えますが、どこが違うのでしょうか?

キュリオシティは火星の「ゲールクレーター」と呼ばれるクレーターにかつては湖が存在していたことを発見するなど大きな成果を上げましたが、マーズ2020は「ジェゼロクレーター」に着陸し、岩石や土壌に隠されたはるか昔の生命の痕跡を捉えようとしています。このミッションを達成するため、キュリオシティとは異なるツールを備え、さらに進化した探査車となっているのです。

全体としてはマーズ2020のほうがキュリオシティより約13センチメートル長く、127キログラム重くなっています。両探査車とも2.2メートルのアームを備えていますが、マーズ2020のほうが大きなドリルを持っており、これを使って岩石の中心部を採取します。カメラはキュリオシティの17台(一部は白黒)に比べ23台となり、ほとんどがカラー画像を撮影できる上に、「Mastcam-Z」というカメラはキュリオシティのカメラに比べてズーム機能が改良され、高解像度で撮影することができます。またマイクも2台搭載しており、火星に着陸する音、火星の風の音などを聞くことができる予定です。

さらに、足となるアルミホイールも大きく厚くなり、鋭い岩石があってもダメージを受けにくいように改良されています。テスト走行でも実証された自律的な走行を行う機能はコンピュータ技術の進歩を取り入れ、キュリオシティの5倍の速さで軌道を導き出すことが可能です。これにより、キュリオシティのミッションでは地球のプロジェクトメンバーが行う日常のオペレーションに7時間かかっているところを5時間に短縮することができるようになります(しかもキュリオシティの「7時間」は数年をかけて改善・短縮してきた結果で、かつては19時間でした)。

火星への着陸の際にも工夫が凝らされ、「地形照合航法」と呼ばれる新機能でより正確に着陸することを目指しています。NASAは複数の探査車を火星に到達させてこれまでにも成果を上げていますが、カラー画像で音も聞けるとなるとまさに火星にいるような映像が見られるかもしれません。

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Image: NASA/JPL-Caltech
Source: Space.com
文/北越康敬

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