
任天堂(京都市南区)の創業の地に残る旧本社ビル(下京区)が、ホテルに生まれ変わる計画が9日までに分かった。かつて花札やトランプを製造し、世界的なゲームメーカーへと成長した任天堂の原点の建物で、地域住民の愛着も深い。趣のある外観を極力残して改修・増築し、2021年夏の開業を目指す。
ビルは、鴨川と高瀬川の間に位置。西側には東本願寺の飛び地境内「渉成園(しょうせいえん)」(枳殼(きこく)邸)があり、任天堂創業家の資産管理会社「山内」(下京区)が所有。1930年築で、59年に東山区に移るまで本社機能を担った。建物には今も「トランプ・かるた製造元 山内任天堂」の看板が残る。ゲーム事業の拡大に伴い、2000年には現在の南区上鳥羽に本社を移転した。
開業するホテルは、安藤忠雄建築研究所が設計を監修。国内外でホテルやレストランを運営する「Plan・Do・See(プラン・ドゥ・シー)」(東京)が開発、運営を担う。
計画では、建物を改修、一部増築して客室数約20室のホテルとする。宿泊者用のレストランやジム、温浴施設などの設備も想定している。21年春には予約受付を始める予定だ。
任天堂によると、所有企業の山内は「歴史のある建物を将来にわたり保存・継承するため、ホテルとして活用する」と説明しているという。
旧本社ビルの向かいで婦人服店を営む女性(80)は「昔は女性従業員がかるたをそろえるカンカンという音が建物から聞こえてきた」と懐かしみ、「重厚感のある立派な建物に愛着を持っていた。ホテルになっても、残るのは良かった」と話した。