ゴーン被告が名前を出す予定だった政治家とは “トークショー”と揶揄された会見の裏側に見えるもの

画像はテレ東NEWS・YouTubeチャンネルより

日本時間1月8日22時に始まった記者懇親会で、カルロス・ゴーン被告は、被告の追い出しに動いた日産幹部の名前は挙げたが、協力した政治家の名前は口にしなかった。

ゴーン被告は「日本政府関係者の名前は明かさない」と言う一方、「安倍首相が自身の逮捕に関与したとは考えていない」と語った。

安倍首相以外の政治家の関与は否定しないワケだ。もともと当初から西川廣人代表取締役(当時)が、ゴーン被告を日産から追放するにあたって官邸に根回しをしたのなら、窓口になるのは、菅義偉官房長官だったはずと言われていた。

非世襲議員で叩き上げの政治家だった菅氏には、有力な大企業のスポンサーが少なかった。菅氏が政治家になる時の最大の支援者は、”ハマのドン”こと藤木幸夫氏(藤木企業代表取締役会長)だった。藤木氏は、稲川会系埋地一家の初代総長だった藤木幸太郎氏の息子だ。総理大臣の椅子を狙う菅氏としては、あまり表に出て欲しくない御仁だ。

そんな菅氏の気持ちを知ってか知らでか、藤木氏は写真週刊誌に登場して「俺が山下埠頭にカジノを作る。菅にはもう言ってある」などと、自分の力を誇示したりした。菅氏としては、ヤクザの親分の息子から支援されて総理大臣になろうとしていると批判されないためにも、地元横浜経済界で藤木氏の替りとなるスポンサーが欲しかったはずだ。日産幹部らが菅氏にゴーン追放を相談したとすれば、渡りに船だった。ただし、これは推測に過ぎない。

ゴーン被告の会見を見る限り、政治家の関与について確実な証拠を持っているようには見えない。仮に西川氏らが政府に根回しをしたにしても、ゴーン被告には気づかれないように細心の注意を払っているはずである。ゴーン被告も噂されている以上のことは、知らないように思われた。

今回のゴーン被告の会見について期待ハズレという声も多かった。

筆者も密出国の方法についてなら詳細を明らかにしてくれるか、と思っていた。当初、組織的にガセ情報が流されたし、米元軍人の作った民間警備会社の関与も報道されており、ゴーン被告の密出国には、レバノンやフランスよりも、アメリカの一部勢力が関与しているように思えた。

徹底的なコストカッターとして、リストラと賃金の引き下げて、不採算部門の切り捨てを実施。株主(金融資本)の利益に奉仕するゴーン被告は、新自由主義経済の経営者の鑑だった。ゴーン被告を擁護するのはグローバル経済の国際金融資本だろう。ゴーン被告も、レバノン国民でありながら、禁止されるイスラエルへの入国を果たすなど、国際金融資本に協力することで自らの利益を図ろうとした。

新自由主義経済の申し子であるゴーン被告については、稿を改めて報告したい。(文◎橋本征雄)

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