月刊牧村 冬期ゼミ#4 『イエロー・マジック・チルドレンの逆襲』その3

月刊牧村 冬期ゼミ#4

『イエロー・マジック・チルドレンの逆襲』その3

2019年2月11日(月・祝)ROCK CAFE LOFT is your room

【講師】牧村憲一

【ゲスト】高野寛、吉村栄一

長時間にわたったイベントも後半に。私は進行に徹して聞くばかりの楽しい日でした。(文責・牧村憲一)

YMCバンドのメンバーからのメッセージ

牧村:では、後半を始めたいと思います。

吉村:まず、今度のYMCのバンド・メンバーからのビデオ・メッセージをご覧いただきましょう。細野(晴臣)さんのツアーに参加している高田漣さん(Gt, etc)だけ間に合わなかったんですが。

ゴンドウトモヒコ(Computer, etc):YMOとの出会いは、1995年に(高橋)幸宏さんの事務所に入ってからでした。ライブはスケッチ・ショウが始まってからで、そこに教授(坂本龍一)が入ったり、HASYMOという形になってYMOになったり、そこからずっとライブは一緒にやってます。メンバーとの一番の思い出は、バルセロナのソナーというフェスにYMOで参加した時のことです。ライブが無事終わって、みんなでビーチで打ち上げをしている時に僕が酔っ払って海に飛び込んでからの事件が思い出となっています。これは界隈ではわりと伝説になっています。いまだに幸宏さんに言われます。今度のライブのほうですが、久しぶりに会うメンバーもいるのでとてもワクワクしています。加えて豪華なゲストもたくさんいますので、みなさんぜひお越しください。ゴンドウトモヒコでした。

沖山優司(Ba):YMOとの初めての出会いは、1978年に出たファースト・アルバムです。大学1年の時でした。それからA&M盤を青山にあるレコード屋で買ったんですけど、封を開けたらなんと同じレコードが2枚入っていたんです。それを友達と分け合いました。メンバーとの思い出としては、幸宏さんのライブに何回か参加させていただいたことがあります。あと忘れられないのは、そんなにお会いしたことはなかったんですけど、細野さんにベースのヘッドにサインをしていただきました。次世代に継承されるべき〈YMOのいいところ〉ということですが、すべてです。YMOに関しては単なるファンなので、今度のYMCコンサートはなるべく舞い上がらないように落ち着いて演奏させていただこうと思います。

白根賢一(Drs):YMOの音楽に初めて触れたのは、小学5年生の音楽の時間でした。曲を聴いて鑑賞文を書くという授業で、一般的にはクラシックとかを書くと思うんですけど、その時に聴いたのがYMOの「CASTALIA」でした。それが初めてのYMOとの出会いでした。次世代に継承されるべき〈YMOのいいところ〉、これはたくさんありますが、まず機械と人力の良い関係ですかね。それはリズムにおいて特に言えることだと思うんですけど、微妙な〈跳ね〉と機械のジャストとのセンスが素晴らしい。YMCコンサートでやってみたいことですが、YMOチルドレンの自分としては、お父さんに会ってみたいですね。幸宏さんとツインドラムとかやれたりすると、最高に嬉しいです。

網守将平(Key):皆さん、こんにちは。YMCのコンサートでキーボードを担当します網守将平です。今回、YMCのコンサートには高野寛さんから直接お誘いいただいたんですけど、すごく嬉しかったし、何よりすごくびっくりしました。本当に光栄に思ってます。自分がYMOをカバーする一員になるのはすごい緊張するんですけど、頑張ろうと思います。僕のYMOとの出会いとか思い出は、世代的なこともあると思うんですけど、先にスケッチ・ショウという細野さんと幸宏さんのユニットから入りました。スケッチ・ショウにはすごく影響を受けていて、それからYMOも聴き始めたという感じです。えーと、これどういう状況なんだっていう話なんですけど、ここはインドのコチンという街で、友人の美術家の人と一緒に遊びに来ています。コチンに滞在中に熱を出したり下痢などしましたが、今はもう大丈夫です。もしかするとYMOファンの方なら心当たりのあるシチュエーションかもしれませんが、ここはインド的にはゴミ捨て場なんですけど、これはゴミ捨て場に落ちていたいい感じの袋で、せっかくなんでツーショットでコメント動画を撮っています。というわけで、3月14日のYMCコンサートをぜひ楽しみにしていてください。僕も頑張ります。ではでは。網守将平でした。

高野:いやぁ、それぞれ面白いですね。

吉村:いま網守さんが言った〈心当たりのあるシチュエーション〉というのは、細野さんの『コチンの月』というアルバムのことですね。細野さんが横尾忠則さんと一緒にインドを旅行して、その時に熱を出して下痢をしたという。その経験をもとに『コチンの月』を作ったんですよね。

高野:しかも美術家の友人と一緒にいると言っていたので、細野さんと全く同じことをやろうとしているのかもしれない(笑)。

吉村:インドで下痢に悩まされるところまで影響されていると(笑)。

演奏が難しい「MAD PIERROT」をやることになったら…

吉村:今ちょうどYMCコンサートで聴きたい曲のリクエストをフェイスブックやツイッターで募っていて、このあいだ牧村さんのラジオでその途中集計が発表されたんですけど、ちょっと変わった選曲でした。「TECHNOPOLIS」や「RYDEEN」といった有名曲は入っていなくて、「MAD PIERROT」や「U・T」辺りの曲が入っているようです。最終的にどうなるかわかりませんけどね。

高野:有名どころが入ってないのはわかりますよ。「LOOM」や「茶柱」をリクエストした人もいるんですよね(笑)。

吉村:「茶柱」っていうのは、スーパー・エキセントリック・シアターのコントのバックに流れている曲ですね。

高野:『サーヴィス』に入っていて、「茶柱」という曲名で登録されているんですよね。

吉村:もうひとつ企画がありまして、当日の開演前に流す客入れのBGMを一般の方から募集したYMOのカバー曲にしようと思うんです。おそらく30分くらいの時間なので、5、6曲だと思うんですが、DTMやバンドをやっている方がカバーした曲を流します。

高野:ある種、デモテープ・コーナーみたいな感じですね。僕も高校の時に「中国女」をアコギで録ったことがあります(笑)。

吉村:その企画を昨日思いついたんですけど、高野さんも応募するということで音源を送ってくださいました。それをちょっと聴いてみましょうか。

──高野寛「中国女 / LA FEMME CHINOISE」

吉村:やっぱり高校生の時に作った音源とは全然違いますね。

高野:さすがに40年経ちましたから(笑)。まぁこれも30分くらいで作ったんですけど(笑)。僕は宮沢和史くんとおおはた雄一くんと3人でアコースティック・ライブを時々やるんですけど、その時に「中国女」を2回ほどやったことがあるんです。その2人にこういうことをやろうと説明するために作ったデモテープなんですよ。

吉村:皆さんからのリクエストで今のところ1位の「MAD PIERROT」はYMOも初期にしかやらなかった曲で、演奏するのが難しいんじゃないですか?

高野:そういう場合は、僕はただ踊ることにしようかな(笑)。

吉村:じゃあ、YMOの「MAD PIERROT」を聴いてみましょうか。

──YMO「MAD PIERROT」

高野:もし「MAD PIERROT」が1位になったらテンポを落とそうかなと、いま聴きながら思いました(笑)。まぁ、別にコピーするのが目的じゃないですからね。

吉村:そうですね。YMCバンドならではの「MAD PIERROT」をやっていただければと思います。

若い世代にYMOの魅力をどう伝えるか

牧村:では、ここでお待ちかねの質問コーナーに行きましょう。

客A:イベントに来ておきながらエッと思われるかもしれませんが、実はあまりYMOを聴いたことがありません。お聞きしたいのは、高野さんと吉村さんがこれからYMOを聴く人に勧めるオリジナル・アルバムは何なのかということなんですが。

高野:初めてYMOを聴く人にはオリジナルじゃないけど、テイ(・トウワ)くんが選曲してまりん(砂原良徳)がリマスターした『NEUE TANZ』をお勧めします。マスタリングがすごくいいので、現代的な音で聴けるんですよ。そこでいいなと思う曲があったら、その曲が入っているオリジナル・アルバムを聴くのが正しい道じゃないかと思います。

吉村:僕は逆に、『NEUE TANZ』には1曲も入ってない『SOLID STATE SURVIVOR』がいいと思います。あれはYMOのすべてが入っているアルバムなので。

客B:YMCのコンサートをやるにあたって、YMOの3人からコメントはいただけたんでしょうか。

高野:僕らが勝手にやるコンサートなので、コメントはいただいていません(笑)。3人にどこまで情報が伝わっているのかはわかりませんが、ここだけの話、幸宏さんはかなり関心を持ってくれているみたいです。

客C:YMOの魅力を今の20代に伝えるとしたらどのように伝えるかをお2人に伺いたいです。

高野:今の20代にとっては動画がメインの媒体になっている印象があって、1995年生まれ以降は完全にYouTube世代なんですよね。なので、YMOの格好いいライブの動画を見せるのが一番早い気がします。

吉村:格好いい動画とはたとえば何でしょう?

高野:最初と2回目のワールド・ツアーとかかな。鬼気迫るものが伝わるんじゃないかと思います。吉村さんはどうですか。

吉村:今の20代に聴いてほしいというのはおそらくYMOのメンバーが一番考えていることなんです。2011年にアメリカ・ツアーをやる時に『YMO』というベスト・アルバムが出ましたけど、あれはアメリカの大学生に聴かせてどれが一番伝わるか? という意見を参考にして選曲されたんです。それと今回ソニーから出るリマスター盤のアナログのBOXも、どういうデザインにすれば今の若い世代に伝わるかという視点で何十ものアイディアが出されたんです。動画を見てもらうというのは僕も正しいと思います。動画とストリーミングですかね。

客D:高野さんの初期のアルバムを聴いて、そこから幸宏さんに関心を持って、YMOにたどり着いた感じでした。高野さんのYMOのカバーは3曲とおっしゃっていましたが、私が印象に残っているのは『schola』で披露された「BEHIND THE MASK」なんです。欧米の人はあの曲をロックだと言いますが、日本人の私が聴くとあまりロックを感じないんです。「BEHIND THE MASK」のどの辺にロックを感じたのかを伺いたいです。

高野:このあいだ『SOLID STATE SURVIVOR』を解剖するというBSの番組を見て、タタタタタ、タタ、タタタタタ…というリフをちょっとキーを変えてギターで弾くとローリング・ストーンズっぽくなると高田漣くんが実演しながら解説していたんです。それを見てなるほどなと思って。ロックというのはリフレインの音楽で、「BEHIND THE MASK」はあのリフが印象的だからロックっぽく聴こえるのかもしれませんね。

牧村:何時間でも語れるテーマですが、頃合いですね。ゲストとしてお越しくださった高野さんと吉村さんに改めて拍手をお願いいたします。今日はどうもありがとうございました。

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