まだ始まっちゃいない

 遠くかすんで見えるような昔だが、二十歳の頃の自分だったら何と答えただろう。日本の未来は明るいと思うか、市場調査会社が全国の新成人500人に聞くと、「明るい」と答えたのは31%だった。昨年より6ポイント下がったという▲少子化が進み、先を見れば年金制度はどうもおぼつかない。若くして案じる人も多いのだろうな-と、あれこれ想像する▲若い自分がどうだったかといえば、未来はただ茫洋(ぼうよう)として、見当のつかなかった覚えがある。きょうの「成人の日」を前に、きのう県内8市町で成人式があった。代表たちの決意は頼もしく、未来を切り開く志は見上げたものだと感じ入る▲将来を語る新成人に祝辞を送る一方で、昔日のわが身と重なるのか、自分は何をしたいんだろう、未来はどうなるの?…と中ぶらりんでいるような若い人にも言葉を贈りたくなる▲1996年公開の青春映画「キッズ・リターン」(北野武監督)の一場面を。それぞれ夢破れた同級生2人は久しぶりに高校を訪れ、自転車で校庭を回りながら短く会話を交わす。シンジ「マーちゃん、俺たち、もう終わっちゃったのかな」。マサル「バカヤロー、まだ始まっちゃいねえよ」▲多くの人の心に、ぼやき、嘆くシンジがいて、どやすマサルもいるのだろう。これから始まる未来に幸多かれ。(徹)

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