他人下げ、自分上げ

 「他人下げ、自分上げ」と言えばいいだろうか。いつの世にも、他人をけなすことで自らの価値を上げる人は存在する。恥ずかしながら、自分自身もなきにしもあらずだ。言われてみて、はっとする人もいるのではなかろうか▲「あいつはこうだからだめだ」。これが上司の指導だとしても理解できないが、同等の立場、年齢の人同士のそれは、もっと見苦しい。満たされない自己承認欲求の裏返しとして、人をおとしめているように聞こえる▲この「他人下げ」が横行している社会は多々ある。残念ながら、スポーツ界の選手勧誘もその一つだ。高校や大学の指導者が自らの理念を説く前に、他チームの欠点を並べる。そこにはアスリートファーストの精神など見当たらない▲もちろん、大多数は勧誘のルールを順守している。そう、信じたい。だが、この時期になると例年、指導者たちから同じ言葉を耳にする。「また、あることないこと言われたみたいですよ…」と▲勧誘される側も問題がある。親や周囲までが一緒に「他人下げ」をうのみにする。これだけ情報がある時代に、なぜ片方だけの意見に同調できるのか▲勧誘する側は自らを磨き、される側は最も成長できるところを選ぶ。冷静に、常識で判断するだけでいい。そこで双方が謙虚なら、なおいい。(城)

© 株式会社長崎新聞社