小泉進次郎環境大臣が育休を取得へ。国会議員の産休・育休取得事情は?

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小泉進次郎環境大臣が15日に行われた環境省での会議冒頭で第一子誕生後、2週間の「育児休業」(以下、育休)を取得する意向を表明しました。

小泉氏はこの発言の直後に自身のブログで、多くの人から育休を取得を望む声があったことに触れつつ「制度だけではなく空気も変えていかなければ、育休取得は広がっていかない」「公務を最優先にしながらも、柔軟に通算2週間を、確保していきたい」としています。

今回は国会議員の産休・育休を巡る事情についてまとめました。

国会議員の「産休」「育休」取得事情とは?

国会議員に「育休」の規定はありませんが、「産休」については、衆議院、参議院ともに規則で定められています。

衆議院規則:第185条2
議員が出産のため議院に出席できないときは、日数を定めて、あらかじめ議長に欠席届を提出することができる。

参議院規則:第187条
公務、疾病、出産その他一時的な事故によつて議院に出席することができないときは、その理由を記した欠席届書を議長に提出しなければならない。

もともと、両院には「産休」に関する規則はありませんでしたが、参議院では2000年になって改正されました。きっかけとなったのは同年6月、出産前日まで議員活動をしていた自民党の橋本聖子参議院議員が、参院議長に「出産による本会議欠席届」を提出し、受理されたことでした。これを機に参院規則が改正され、産休が認められることになりました。

衆議院はどうでしょう。こちらも、2001年9月に水島広子元衆院議員の出産を機に規則が改正されました。現在では、国会議員だけではなく、地方の女性議員についても産休を認める、または認めようという動きがあります。

改めて衆参両院の規則を確認してみると、「議員が出産のために議員に出席できないときは、その旨(理由)を議長に提出」となっています。女性議員の出産を念頭に改正されたのでしょうが、文言上は特に男女の区別はされていません。

「男性国会議員」として対象を絞って調べてみると、衆院議員の山花郁夫氏のプロフィールに「男性国会議員として憲政史上初めて『産休』を取得」との記載があります。すでに産休を取得した男性議員は存在しているようです。

他の国会議員の反応は?

今回の小泉環境大臣の育休取得に関する発言に対する他の国会議員のTwitter上での反応を見てみましょう。

音喜多駿氏 日本維新の会 参議院1期・東京選挙区

自身も2人の娘を持つ日本維新の会の音喜多氏は歓迎するとともに育休のルール化にも触れています。

森まさこ氏 自民党 参議院3期・福島選挙区

法務大臣でもある自民党の森まさこ氏は小泉氏の育休取得にあたって実は相談に乗っていたことを明らかに。小泉氏と同じ大臣という立場でもリーダーとして育休を取得したい人ができない現状を変えていくことが必要、としています。

東とおる氏 日本維新の会 参議院2期・大阪選挙区

日本維新の会の東徹氏も小泉氏の育休取得に好意的な反応。社会の空気の変化を期待しています。

平木だいさく氏 公明党 参議院2期・全国比例区

公明党の平木だいさく氏も育休取得を歓迎。これをきっかけに行政職員のみならずひとりでも多くの働く男性の育休取得が増えることを期待しているようです。

浦野靖人氏 日本維新の会 衆議院3期 比例近畿ブロック(大阪15区)

日本維新の会の浦野靖人氏も育休そのものには前向きな反応。生まれてくる子供との時間を作るのは良い事、というメッセージと共に「いいパパになってや」という暖かいエールを送っています。

伊藤たかえ氏 国民民主党 参議院1期 愛知県選挙区

超党派ママパパ議連で事務局長を務める国民民主党の伊藤孝恵氏はこの小泉氏の育休取得を「みんなで応援しなくては!」とコメント。育休取得の背中を押していなくては、と意気込んでいます。

丸山穂高氏 NHKから国民を守る党 衆議院3期 大阪19区

発言が度々話題になるNHKから国民を守る党の丸山穂高氏も「ドンドン取りゃいい」とツイート。むしろ2週間は短いのでは?というメッセージも添えています。

寺田静氏 無所属 参議院1期 秋田選挙区

無所属の寺田静氏も小泉氏の育休取得を歓迎。育休を巡る空気を変えられるのは小泉氏だけと訴えてきたとのことですがそれが実現した形になりました。

松川るい氏 自民党 参議院1期 大阪選挙区

自民党の松川るい氏も小泉氏の育休取得の決断を歓迎。公務と両立と社会の空気・文化を変えることに期待感を示しています。

泉健太氏 国民民主党 衆議院7期 京都3区

国民民主党の泉健太氏も小泉氏の育児休暇に言及。一般男性の育休取得のハードルが高いことに触れて制度と環境の改善を急ぐべき、としています。

以上のように与野党問わず様々な国会議員が小泉氏の育休取得にコメントをしていますが、評価はおおむね好意的な印象です。2015年に当時衆議院議員だった宮崎謙介氏が育休取得を表明した際には「国会議員は会社員ではない」「育休中にも議員報酬は満額出ている」といった賛否の声が出ましたが、好意的な声が多いのは時代の移り変わりを示しているのかもしれません。

これまで産休を取得した国会議員は?

国会議員として憲政史上初めての「産休」取得は、1949年の園田天光光氏です。橋本聖子参院議員は憲政史上2人目の産休取得となりました。以降、これまでの間に9人が産休を取得しています。主な国会議員を紹介します。

2000年 6月 橋本聖子参院議員(比例区、自民党、当選4回)
2003年11月 有村治子参院議員(比例区、自民党、当選3回)
2007年12月 小渕優子衆院議員(群馬5区、自民党、当選7回)
2011年 1月 野田聖子衆院議員(岐阜1区、自民党、当選9回)
2014年10月 吉川ゆうみ参院議員(三重選挙区、自民党、当選2回)
2015年10月 吉良よしこ参院議員(東京選挙区、共産党、当選2回)
2019年10月 鈴木貴子衆院議員(比例北海道、自民党、当選3回)

衆参両院の規則改正以降、衆参両院それぞれの議員が産休を取得していることが分かります。

まだまだ少ない女性議員の数

現在、女性国会議員は何人いるのでしょうか。

国会のHPで公開されているデータを見ると、衆議院46人(定数465人、2020年1月15日現在)、参議院56人(定数人、2020年1月15日現在)、計102人です。

1925(大正14)年に男子普通選挙が実現して以降、第二次世界大戦後の1945(昭和20)年まで、女性の政治参加は認められませんでした。その後、1946(昭和21)年の衆議院選挙で、39人の女性議員が誕生しました。(内閣府男女共同参画局サイト

民間企業で働く場合、産休の取得が難しく退職するケースも多く、働き続ける場合も育児と仕事の両立が難しいことも少なくありません。男性の育休取得も推進されていますが、一定期間、仕事を休むことや業務の割り振りをどうするかなど、ハードルが高いのが現状です。

小泉進次郎環境大臣の育休取得により、男性の「育休」についての議論や実際の取得の動きが進んでいくのかもしれません。永田町での育休だけでなく、社会全体の今後の動きに引き続き注目です。

参照:内閣府男女共同参画局HPより
衆議院議員総選挙候補者,当選者に占める女性割合の推移
参議院議員総選挙候補者、当選者に占める女性割合の推移

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