堀ちえみ「待ちぼうけ」竹内まりやから女性アイドルへの楽曲提供第1号 1982年 8月21日 堀ちえみのサードシングル「待ちぼうけ」がリリースされた日

80's Idols Remind Me Of… Vol.18
堀ちえみ / 待ちぼうけ

3枚目のシングルは歌手生命を占う試金石

デビューからある程度注目を浴びた新人シンガーにとって、3枚目のシングルは結構重要な役割を果たす場合が多い。ある意味その後シンガーとして生き残られるのか否か、歌手生命を占う試金石になりうる場合が多い、ということだ。今振り返れば、松田聖子「風は秋色」(80年)、中森明菜「セカンド・ラブ」(82年)なんぞは、そんな立ち位置の作品だったと気付かされる。

さて花の82年組、我らが堀ちえみの3枚目のシングルはというと、堀史上最も脱力なオチが配された「待ちぼうけ」(82年8月リリース)!

デートさえも夢の中、(比喩表現としての)セクシャリティを一切排除したデビュー曲「潮風の少女」、路線変更なく前作を踏襲、一定数の特定男子を悶絶死させたセカンド「真夏の少女」に続く待望のシングルが「待ちぼうけ」だった。

ロリータ路線の堀ちえみ、アイドルの処女性はキープできるのか?

用意された世界観は… ようやくデートにこぎつくものの、お互いすれ違いで結局デートそのものが実現せず…という、まあ言ってみれば他愛もない内容の作品。この他愛なさこそが、徹底した “ロリータ路線” が敷かれた堀ちえみにとっては、実はかなりキモだと言えよう。

男と1対1で会うデート… 深読みすれば、これは処女性の危機を想起させるわけで、デートの不成立は受け手側にひとまずの安心感を与えていたのだ。一方、ダサめな “ディズニーウォッチ” や “おろしたてのワンピース” みたいな言葉は、ヴァージニティへの設定ワードとして功を奏してもいる。

ソングライター竹内まりやが用意した脱力の、いや驚愕のオチ!

作詞(作曲も)はデビューからおよそ4年を経て、山下達郎と結婚直後だった竹内まりや。女性アイドルへの楽曲提供は、河合奈保子「けんかをやめて」(82年9月リリース)に脚光が浴びられがちだが、第1号提供作は「待ちぼうけ」だったのですね。気になるオチは… すれ違いの原因は、女の子が2時間も待ち合わせ時間を間違えていたという、聴く者全員が脱力の、驚愕のオチが用意されていた。

結果として本作は前2作を上回るおよそ10万枚を売り上げ、いよいよアイドル・シンガー堀ちえみが盤石の態勢になっていく。

ということで、ファースト、セカンドでデートを夢見て、サードでデートが実現しそうになる… 「待ちぼうけ」発売時点では、“これは壮大な3部作か!?” と思わされたもの。ところが、いよいよデートが実現した4枚目「とまどいの週末」(82年)、その後の意外な顛末を描いた5枚目「さよならの物語」(83年)が控えていたわけで、なんとその後壮大な5部作が完成したのだった。

※ KARL南澤の連載「80's Idols Remind Me Of…」
80年代の幕開けとともに、新たなアイドルシーンが増幅・形成されていった。文字通り偶像(アイドル)を追い求めた80年代を、女性アイドルと、そのヒットソングで紐解く大好評連載。

■ 80年代最大の問題作!おニャン子クラブ「セーラー服を脱がさないで」
■ 岡田有希子と竹内まりや、80年代の革新が普遍化した「ファースト・デイト」
■ 早見優「急いで!初恋」キラキラ眩しくキャッチーな、弾ける極上ポップソング
etc…

カタリベ: KARL南澤

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