「ビル・マーレイの演技をパクって、“ナチスに幻滅したゲイの将校”を演じた」サム・ロックウェルが語る『ジョジョ・ラビット』

『ジョジョ・ラビット』サム・ロックウェル© HFPA

「これまでにも何度かビル・マーレイの演技をパクってきた(笑)」

第二次世界大戦下のドイツで、ナチスはヒーローだと洗脳されていた10歳の少年ジョジョが、ユダヤ人少女と交流し変わっていく姿を描いた『ジョジョ・ラビット』。

ドイツの敗戦を予測するアウトローなナチスのクレンツェンドルフ大尉を演じたサム・ロックウェルのインタビューをお届けする。

―ナチスの軍人を演じることに抵抗はありましたか?

企画を聞いたときはね。でも、いったん脚本を読んだら、ためらいは吹っ飛んだ。クレンツェンドルフ大尉は典型的なナチスじゃないからね。

『ジョジョ・ラビット』©2019 Twentieth Century Fox Film Corporation and TSG Entertainment Finance LLC

―どのように役作りをしましたか?

なによりも、脚本がとにかく素晴らしい。タイカ(・ワイティティ監督)は絶妙なバランスでコメディとペーソス(哀愁)を描いていて、撮影中もそのバランスに細心の注意を払っていた。ユーモアがすべてのページに盛り込まれ、言語はほとんど現代劇のようで、かつての『ヘザース/ベロニカの熱い日』(1989年)のように倒錯したストーリーになっている。

クレンツェンドルフ大尉のイメージについて、タイカはビル・マーレイを例に挙げていた。ナチスに幻滅したゲイの将校だ、と。『プールサイド・デイズ』(2013年)のときもそうだったけど、ぼくはこれまでに何度かビル・マーレイの演技をパクってきた(笑)。

『ジョジョ・ラビット』©2019 Twentieth Century Fox Film Corporation and TSG Entertainment Finance LLC

―そうだったんですね(笑)。

うん。今回は『ミートボール』(1979年)のビル・マーレイと、『がんばれ! ベアーズ』(1976年)のウォルター・マッソーを参考にしている。ドイツ訛りについては、『愚か者の船』(1965年)のオスカー・ウェルナーや、『若き獅子たち』(1958年)のマーロン・ブランドとマクシミリアン・シェル、もちろん『シンドラーのリスト』(1993年)のレイフ・ファインズなども参考にさせてもらったよ。

「C・イーストウッドもT・ワイティティも役者だから、演技しやすいように心を砕いてくれる」

『ジョジョ・ラビット』サム・ロックウェル© HFPA

―『リチャード・ジュエル』(2019年)にも出演されていますが、クリント・イーストウッド監督とタイカ・ワイティティ監督との違いは何ですか?

これ以上ないほど違ったアプローチをとる。でも二人とも役者だから、こちらが演技しやすいように心を砕いてくれるという点では共通しているね。クリントの場合、1日の撮影が6時間の日が何度かあって、ある日は4時間で終了して、みんな帰宅した。あれは最高だったね。タイカは笑いのプロフェッショナルだから、現場でさらに笑いを取れるようにいろいろと助言してくれる。ユーモアセンスが卓越しているからね。

『ジョジョ・ラビット』©2019 Twentieth Century Fox Film Corporation and TSG Entertainment Finance LLC

―『スリー・ビルボード』(2017年)や『バイス』(2018年)など、いわゆる悪役を演じることが多いですが、どのキャラクターも一辺倒の悪者ではありませんね。

演じる上で、その人物の人間性を見いだす必要がある。かつてジョン・リスゴーが言ったんだが、悪役を演じるためにはモンスターと友達にならなくてはいけないんだ。ハンニバル・レクターだろうと、リチャード三世だろうと、その人物の中になんらかの人間性と弱さを見つける。これがぼくの仕事なんだ。

『ジョジョ・ラビット』©2019 Twentieth Century Fox Film Corporation and TSG Entertainment Finance LLC

―どのキャラクターにもユーモアがありますよね。

ああ、ドラマにはコメディを、コメディにはドラマを持ち込むのが好きなんだ。『プールサイド・デイズ』のときもそうだし、『スリー・ビルボード』にしても同じ。『セブン・サイコパス』(2012年)もそうだね。どのキャラクターも2つの要素を併せ持っていなければいけないと信じている。ハンニバル・レクターを見てもらえばわかるはずだ。アンソニー・ホプキンスの演技には、たくさんのユーモアが盛り込まれているから。

取材・文:小西未来

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