地方議会の役割って?地方議員の仕事と地方自治の仕組み

日本で議会といえば、NHKで中継放送されることの多い「国会」をまずイメージされると思います。憲法41条で国権の最高機関であり、唯一の立法機関であるとされている「国会」と比較しつつ「地方議会」の役割議員の仕事などを都道府県レベルの地方議員に選出されたこともある私の経験も交え、説明したいと思います。

地方自治の仕組み・二元代表制

1、国会との違いは「唯一の立法機関」でないこと

国民から選挙で選ばれた国会議員のみで構成される国会と違い、地方公共団体は地方自治法に基づいて首長制を採り、同時に議会の議員も住民から直接、選挙される形になっています。つまり、執行機関の長(=首長)と審議などを行う議会の議員とが、それぞれ住民により直接の選挙で選ばれる二元代表制となっているのが地方議会です。これにより、地方議会は国会と違い、唯一の立法機関にはなり得ません。行政側、つまり執行機関と議会は対等とされており、緊張関係を保ちながら相互に歩み寄ることで自治運営にあたるとされています。

2、議決権:首長提案に対する意思決定

選挙で選ばれた者が大きな権限を持つ地方公共団体の首長と異なり、地方議会は議員で構成される合議体となっています。首長は予算、決算、条例制定、条例改廃、大きな契約の締結などを議会に提案し、それを審議し、その可否を決める権限を有しているのが議会です。よく耳にする「代表質問」や「一般質問」、「総括質疑」などで、首長の提案に意見したり、選挙民を基調とした住民の声や意見を反映させ、審議の過程で様々な意見を出し合ったりします。地方議会によって、スタイルは多様になっており、「代表質問」や「一般質問」に関して、一括質問・一括答弁形式(議員が複数の質問をまとめて行い、行政側もまとめて回答する)や一問一答形式(質問ごとに都度回答していく)などが自治体によって、それぞれの形に合わせて導入されています。

ちなみに、私の所属していた議会は、本議会では一括答弁形式でした。質問を分けることが出来たうえ、執行機関側の答弁に要した時間はこちらの持ち時間に含まれなかったため、持ち時間が30分とかであれば、例えば3問用意した内の主要な1つの質問に最初の15分を掛ける、ということも戦術として出来ました。論戦なので、やはり戦術なのです。特に対面式の一問一答形式で、答弁時間も質問時間に組み入れられている場合は、執行機関側の使う時間が予測できないため、時間の配分も議員にとって「住民の声」を反映させるための重要な要素となってきます。

3、専門的・能率的審査機関としての委員会

議案を含め、重要な事項はすべて本議会で決定されます。ですが多くの議案などを専門的かつ能率的に審議し尽すために、部門ごとに分けて審査する機関として委員会が設けられています。法律や条例で、常任委員会と議会運営委員会は定められています。

私が以前所属していた議会では、現在(2019年度)、議会運営委員会と5つの常任委員会が設置されており、全議員が「常任委員会」の5つのどこかに振り分けられる形になっていました。配分は、構成する所属議員数の多い「会派」から割り振られていきます。委員会では各議員が、委員会を構成する所属「委員」となるので、呼び名も議員ではなく「委員」となります。
また、特別なことがらについて調査し研究するために必要に応じて、特別委員会が議会の議決に基づき設けられます。予算や決算に関する特別委員会やその自治体特有の課題を扱う委員会などがこれにあたります。

4、意見書の提出権

地方議会は、当該の住民の公益になるような事柄について、議会の意思を意見書としてまとめ、国会、または関係する行政庁になど関係行政機関に提出することができます。この意見書は、地方公共団体の機関としての議会の意思を決定し表明するものであって、その地方公共団体の意思を決定・表明するものではありません。簡単にいうと、意見書に発案する権利は当該の地方公共団体の議員が有するもので、首長にはない、ということです。

5、検査権・調査権

当該の地方公共団体の仕事が議会で決められたとおりに行われているかどうか、事務に関する書類及び計算書を調査したり検査する権利を有します。報道でもよく耳にする「監査請求」とは「住民監査請求」のことで、住民からの直接請求を受け、当該議会の議長が任命した監査委員が監査を行います。

同じくよく聞く「百条委員会」とは、当該地方公共団体の事務に関する調査を行い、必要によって、選挙人、その他の関係者を呼んで調べたり、意見や説明を聞いたりしますが、その権利の行使をゆだねられた委員会のことを指します。(調査権を規定している法律が地方自治法第100条のため「百条委員会」)

6、請願受理審査権

当該の途方公共団体の利益になると考えられる事象について、議員の紹介により住民から議会に提出されたものを「請願」といいます。議員紹介のないものは「陳情」といいます。地方議会は、採択した請願で当該の地方公共団体の執行機関において措置することが適当と認められるものは、当該地方公共団体の政策に反映させるように努めています。
(オフィス・シュンキ)

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