ヘアケアにもヴィーガンの波?「ボタニスト」が参入の理由

動物性食品を一切口にしないヴィーガンのライフスタイルに注目が集まる中、シャンプーなどのヘアケア製品にも動物由来の成分不使用の商品が登場しています。

1月23日から「ヴィーガンライン」を発売したのは「ボタニスト」です。なぜヘアケア製品にヴィーガンを取り入れることになったのでしょうか。

同日に開かれたメディア向け発表会の内容から、国内ヘアケア市場でシェア3位を占めるというI-ne(アイエヌイー)の狙いを深堀りします。


ヴィーガンの認証を取得

植物由来成分や天然の保湿成分を配合したことで話題になったボタニストシリーズ。発売から5年を迎え、シリーズ累計で7,000万本を突破しました。20〜30代をメインターゲットとしており、その周辺の40代のユーザーも多くいます。

今回発売したのは「ヴィーガンシャンプー モイスト」と「ヴィーガントリートメント モイスト」(各2,400円、税別、以下同)。自社ECサイトと表参道にある旗艦店などで販売します。

アフリカの砂漠で自生する、保湿力の高い植物「ミロタムヌス」に含まれるという成分「グリセリルグルコシド」など、さまざまな植物由来原料を配合しています。

最大の特徴は「動物由来フリー」と「クルエルティフリー(動物実験をしていない)」。イギリスのヴィーガン協会と、動物愛護団体「PETA」の認証を取得しました。

また、二酸化炭素の削減が期待できるという、サトウキビ由来のポリエチレン素材のバイオマス容器を採用しています。

通常のボタニスト(1本1,400円)に比べるとやや価格は高いですが、藤岡礼記マーケティング本部長は、「原料は認証の基準に沿ったものを選ばなければならず、規模の経済に当てはまらない原料調達になります。中身だけでなく容器のチェックもあり、ヴィーガン認証を取るプロセスに1年かかりました」と、開発の苦労を説明します。

世界で増えるヴィーガン製品

世界でヴィーガン製品の割合は年々増加傾向にあり、2019年は前年比1.5倍になっているといいます。

世界中の2,000万以上のニュースサイトやSNSから消費者のトレンドを予測する、同社独自のAI予測システム「KIYOKO」の結果からも、今後の成長が見込めるようです。過去2年間のトレンドで、1年あたり10%の成長率で推移しました。

ヴィーガンというと、まず食をイメージしがちですが、「クルエルティフリー」という言葉と共に特に発言されていることから、化粧品や日用品のカテゴリでもヴィーガンのライフスタイルが拡大するとの予想です。

ヴィーガンのヘアケア商品を発売した理由について、梁悠梨・広報課長は「ジェンダーなど多様性が注目される中、日本国内で少数でも確実にニーズはあり、多様性を表現するものとして『ビーガンライン』があります」と語ります。

ヴィーガン商品はどれほど売れる?

5周年を迎えたボタニストのブランドキャンペーンで、同社は「共に生きる」というメッセージを打ち出しました。多様なライフスタイルに合った商品展開をしていく中で、ヴィーガンは象徴のひとつという立ち位置のようです。

「ブランドは何を掲げていて、どうコミットしていくかを消費者が見るようになってきた」と、梁広報課長は分析します。

しかし、ヴィーガン分野は成長しているものの、まだまだ実践している人の数は多くありません。どのようなユーザーに購入されるのでしょうか。

「ボタニストのファンになる方は、エシカルな意識が高いですが、必ずしもヴィーガンというライフスタイルを選んでいる方だけではありません。ヴィーガンと、そうでないものの壁を崩したい」(梁広報課長)

ボタニストシリーズの2019年の売り上げは前年比4%増。同社全体で見ても増収増益といいます。 藤岡マーケティング本部長は今後の戦略について、「一定以上に市場に広げると、値引きや安売りされたり、ブランドのコンセプトにフィットしないお店に並ぶ可能性があります」として、「いたずらに広げるより、セリングとブランディングのバランスをとりたい」と話します。

ボタニストでは「2025年までに定番ラインの40%以上でバイオマス容器を使用する」など、SDGsの取り組みに関する「マニフェスト」も発表しています。環境に対する人々の意識の高まりを、商品のブランディングに結びつける流れは、今後さらに加速するかもしれません。

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