クルマ好きだからこそ興味を持ってくれて、ドライブの誘いにも乗ってくれた
美容師の名前は、清瀬まち。「清瀬さん」と呼んでいた頃は、もちろん「まち」という名前は知らなかった。しかし、それなりに会話を交わすようになり、20代の女性なのにクルマに詳しいことを知って、クルマはシルバーかブラック系のボディカラーが好みという私との共通項を見つけた頃には、自然と「まっち」とあだ名で呼ぶようになっていた。
「僕のクルマ、ちょっと変わったシルバーなんだ」
「本当ですか? 実際に見てみたいな」
という言葉を交わした時を見計らい、ドライブに誘った。美容師という仕事柄、土日に休みをとるのは難しいらしく、ドライブは火曜日となったが、平日の郊外の道路はかなり空いていて、巨大なボディサイズのレクサス LXで走るには十分なほど快適だった。
LXについて知ってる知識を彼女に問うと、「ランクルのレクサス版ですよね」と、至極まっ当な答えが返ってきた。このクルマを表すにはこれ以上ない的確な表現に多少面食らったが、クルマ好きだからこそこのクルマに興味を持ってくれて、ドライブの誘いにも乗ってくれたのだと、逆に感謝すべきなのだろう。
それでも「ランクルと違って、5.7リッターV型8気筒エンジンに8速ATを組み合わせてるんだよ」などと違いを説明してしまったが、「あ、そうなんですね。排気量が大きいとパワフルですよね」さほど興味がなさそうな態度を示された。けれど、これくらいで不満を感じるのはオジサンのわがままだろう。
よく見ると、彼女は素っ気ない表情をしていたが、そこはあえて気づかないふりをして、今の若い女性が興味を持ちそうな話題をいくつか挙げてみた。
しかし、どの話もいまいち彼女の興味をひけていない。
一方で、彼女はそんなオヤジの苦労を無駄にしないよう、如才なく振る舞う術を身につけていた。さすが一流の美容師だ。
残念な気持ちになるくらいなら、はじめからデートの誘いに応じない
「なんかごめんね」
「どうして謝るんですか?」
「いや、僕の話がつまらないかなと思って」
「そんなことないですよ。わたしドライブが久しぶりなんですよ。だからすこし戸惑っているだけです」
「けど、久々のドライブの相手がオジサンじゃ、楽しくないよね」
「そんなに言うほどオジサンでもないですけどね(笑)」
「そりゃ一応まだ30代だけど、キミみたいな女性と比べたら違い過ぎるくらい違うし。今、まさに輝いている時期の君を残念な気持ちにさせていないか、気になって仕方ないよ(苦笑)」
僕がそう言うと、彼女はにこりと口角を上げてこう返してくれた。
「残念な気持ちになるくらいなら、はじめからデートのお誘いに応じませんよ」
「ランドクルーザー」といえば、“砂漠のローロス・ロイス”との異名を持つ、日本が世界に誇る本格オフローダーだ。
どちらかといえば、ランクルと同じような走行性能を備えていて、内外装に高級感があるこのLXのほうが、本物のロールス・ロイスに近いだろうと僕は思う。
だからそのあたりも彼女に尋ねてみたのだが、彼女はセミアリニン本革のシートやセカンドシート電動スライドより、車高調整サスペンションや4WDシステムのほうに興味を示した。
しばらく走り、ついに目的地の海に着いた。彼女のリクエストに従ったまでだが、やはり海は男と女が過ごすにはロマンチックな場所である。
まっちは砂の上を普通の舗装路を歩くかのように歩き、その細く長い足に砂がついても、気にせず笑っている。彼女が動くたびに、美しく輝く髪の毛が揺れるのが印象的だった。
就職氷河期だった大学時代を経て、なんとか就職をしたが、そのあとはひたすら目の前の仕事をこなしてきた。今の年齢にしては高望みし過ぎなくらいの肩書ももらったし、独身だから金だって使いたいと思う以上に持っている。
だが、これといった趣味もなく、情熱と時間を振り分けるものが手元になかった。そんな僕だから、夢中になっている唯一の存在である彼女に振り向いてもらいたい一心で、意味のない話をして盛り上げようとしてしまう。それに対して、彼女は健気な従順さで対応してくれている。
実は男の人と一緒にドライブ行くの初めて
「まあ、乗り心地がいいと言っても、やっぱりLXはSUVだから、高級セダンみたいな重心が下にあるクルマのほうが乗り心地いいんだろうね」
「大丈夫ですよ、他のクルマの乗り心地なんてわたし知らないですから」
彼女は、遠くの海を見つめながら事もなげに言った。
「他のクルマを知らない?」
「うん、実は男の人と一緒にドライブ行くの初めてなんです」
人気の女性美容師が、今まで男性とドライブへ行ったことがなかったなんて。他の女性だったら別に驚かないが、清瀬まちの答えとしては、驚く言葉である。僕が不可解な表情をしていると、さらに彼女は続けた。
「あ、もちろんクルマにも興味があったんですよ。わたし、男っぽくて、本格的な悪路走破性能を持ってるクルマが好きなの」
はじめにドライブをOKしてくれた時、彼女はレクサスのブランド力やゴージャス感に興味を持ったのだろうと決めつけていたが、彼女の口から今の言葉を聞くと、本当にクルマが好きな、クルマの走りが好きな人なんだと気づかされ、不思議な気持ちになった。
「だってすごいじゃないですか。LXって絶対に悪路なんか走る必要もないし、走ることもないのに、これだけすごいオフロード性能を持ってるんですよ? ……信条は、“必要なくてもフルスペック”ですよね?」
「え?」
「ほら、前によくお店で言ってたじゃないですか。わたしのクルマの好みもそれなんです。“必要なくてもフルスペック”!」
「そうか。そうだったんだ」
……そう言って自分の髪を撫でた瞬間、まっちは、私の顔を見て吹き出した。
「うふふ、ドライブ中にわたしが硬かったのは、実はあなたの髪型のセットが気になってたんです。一度気になったら笑いそうになっちゃって、必死に堪えてたんです。自分が切ってるのにこんなこと言うのなんだけど、それだとセットのバランスがおかしいの!」
そう言うなり、プロの優しくも可憐な指先が、僕の頭に触れてきた。夕陽が映し出す影のほうを見ると、まるで二人は抱き合ってるようにも見えた。
[筆者:安藤 修也/撮影:小林 岳夫/モデル:清瀬 まち]
Bonus track
清瀬 まち(Machi Kiyose)
1991年3月23日生まれ(28歳) 血液型:B型
出身地:岡山県
日本レースクイーン大賞2016 グランプリ受賞
SUPER GT LEXUS TEAM SARD 2019 KOBELCO GIRLS
SUPER GT LEXUS TEAM SaRD 2018 SaRDイメージガール
SUPER GT エヴァンゲリオンレーシング2017
2018 RIZINガール
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