「年上婚」「年下婚」の難易度は? 人口減少社会で「年下好き」はイバラの道

残念ながら統計データをもって説明していても、「最近、年の差婚って多くなってる」という言葉をまだ耳にします。この「結婚難民の羅針盤」を通読している読者の皆さんは、すぐに少なくとも男性年上婚については統計的には逆、であることがわかると思います。


初婚夫婦の年齢差は平均1.7歳

1952年(全婚姻ならびに初婚同士の年齢差がともに公開されている)では夫婦の年の差が全婚姻3.4歳、初婚同士2.8歳でしたが、1999年には全婚姻2.3歳、初婚同士1.9歳に縮小し、2010年以降は全婚姻2.2歳と初婚同士1.7歳で推移しています。つまり、初婚同士の男女が結婚を目指すとすると、年齢差は1.7歳が平均相場、となっています。

また、これも繰り返しになりますが、男女でどちらが上であっても3歳差までの婚姻が7割を占めています。

年の差婚活の難易度

さて、少子化人口減少下での婚活、と聞くと、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか?

生物学的には、成人男女になったときに、ちょうど男女がほぼ同数となるように赤ちゃんが誕生します。少子化人口減少下の日本を300人の村として考えてみましょう。人口の比率をおおまかに例えると、人数が親世代200人、子世代100人となります。

その男女の内訳はだいたい、親世代100:100、子世代50:50ですので、同じ世代の中でなら、いきなり出会いが難しくなることは起こりません。しかし、「時代が変わっても出会いの難易度は同じ」といえるかというとそうではありません。

日本では急激な少子化が発生しており、団塊ジュニア世代(1971~1973年生まれ)の出生数が年間約200万人だったのに対して、昨年は90万人を下回りました。つまり、半世紀も経過しないうちに、出生数が半数以下に減少しているのです。

ということは、下の年齢にいくにつれて人口がどんどん減っていきます。このことは婚活において、何を意味しているのでしょうか。

年下ほどどんどん数が減っているのに、「絶対、年下がいいなあ」「できれば下ほどいいなあ」という考えだとすると、マッチング可能な相手がそもそも少ない層に対して、自分のパートナーとなることを期待している、ということになります。

人口減少下の婚活は、「年下希望が強い人ほど、その希望を叶えることが難しくなる」という状況がセットでついてくるのです。

もし少子化ではなく多子化していて、人口が年下ほど多くなっている場合はこの逆で、今度は、年上の人とマッチングするほうが、椅子取りゲームの椅子が少ないため、より難しくなります。いずれにしても、少子化人口減少社会においては、少子化していない社会に比べると年下選好は確実に不利です。

言い方を変えるならば、少子化による人口減少社会では、年下好きが多いほど未婚化が進展しやすい、ともいえます。2015年の国立社会保障・人口問題研究所の独身者調査を見ると、未婚女性はほとんどが年下男性を希望していませんが、未婚男性は圧倒的に年下女性の希望です。

統計的にも今の日本の状況(毎年出生数が万単位で減少)では男性の方が未婚化しやすい、ということが指摘できます。

実数で見るパートナー候補人口

2015年の国勢調査の結果を見てみましょう。

日本の年齢別の人口は、

20歳 121万人
25歳 121万人
30歳 140万人
35歳 156万人
40歳 187万人

となっています。

これを40歳から見た人口割合でみると

20歳 65%
25歳 65%
30歳 75%
35歳 83%
40歳 100%

となります。

次に世代人口でみると、

20代 1,238万人
30代 1,561万人
40代 1,840万人

となっており、40代と比べると20代は67%、30代は85%の人口です。

つまり、自分より年下の男女が全員結婚していない状態だったとしても、年下との年の差婚を希望したとたんに、(男女とも)人口比から空席が不足し、その分、結婚できない人が多くなるわけです。

少子化が加速していることで、親世代よりも子世代の方がはるかに年の差婚が難しくなっている、ということは間違いありません。こういった状況と、年の差婚が1.7歳に縮小してきていること、また、かつては少なかった年上妻婚が4組に1組にまで増加してきていることは整合性がある結果、といえます。

年下女性狙い男性よりも年上女性狙いの男性の方が、近い年齢の女性なら未婚率もあまり違わないため、対象数が多いからです。

なぜ、年下との結婚を強く期待してしまうのか

男性年上婚が55%にまで減少し、年上妻婚が同年齢婚を上回る時代。それでも年の差婚を強く期待してしまう人がいるのは、「年下ほど未婚者が多い。だから望みはある!」という思いからかもしれません。

確かに、2015年国勢調査を未婚者の数だけでみるならば、

20歳 114万人
25歳 93万人
30歳 65万人
35歳 49万人
40歳 47万人

となります。これだけみれば、40歳は20歳の43%しかいないから、40歳にとっての20歳の隣に座る空席はたくさんあるのでは、となります。

しかし、同じ現象を逆に既婚者(有配偶者)の数でみると、

20歳 3万人
25歳 20万人
30歳 65万人
35歳 95万人
40歳 124万人

となり、実に40歳では、20歳の41倍も有配偶者がいます。少子化人口減少のもとではたとえ同じ割合でも、上の世代の方が数でかならず凌駕します。

このような社会状況において、20歳から見た40歳は「46倍、家族を持っているお父さん、お母さん」というイメージになります。割合でみても、20歳であれば、95%、40歳は25%が未婚者なのですが、さらに実数でみると、圧倒的に家庭をもった集団、それが「20歳の男女から見た40歳の姿」です。

相手が自分をどう見るか、というのは、どう抗おうと、やはり自分が所属している「社会的集団の状況」に支配されます。ある結婚相談所で、60代の男性が20代の女性にひたすら申し込むものの、反応がなく、「どうして反応がないんですかね?」と支援者が聞かれて困っている、という相談を昨年受けました。

これに対する統計的な結果に基づく回答としては「人口構造的には、彼が20代女性から見て、彼氏イメージはなく、そろそろ孫もいるおじいちゃんイメージであるからです」ということになります。これに対して、「社会的イメージなんてどうでもいいじゃないか」というのは、それは自身の考えであって、ほとんどの「パートナーとしたいと思う条件にある『相手の気持ち』」ではないゆえに、関係が成立しないのだろうともいえます。

「自身の希望はさておき、いかに(自身の希望条件にある)相手の立場になって想像し、決断できるか」。これは年齢を問わず、婚活における成果を出すための重要なポイントとなります。

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