スーパーGT:「まずは一勝」伊沢と大津が加入したModulo Nakajima Racingが始動

 1月23日から、マレーシアのセパンサーキットでミシュラン主催のウインターテストがスタートし、いよいよ本格的に2020年シーズンに向けて動き出したスーパーGT。すでに東京オートサロン2020で体制発表を行ったホンダNSX-GT勢では、今季若手ドライバーが数多く起用されたほか、移籍も多くフレッシュな顔ぶれとなった。そのうちの一台、唯一ダンロップを履くModulo Nakajima Racingは、新たに伊沢拓也と大津弘樹というコンビを起用する。

 2019年はナレイン・カーティケヤンと牧野任祐というコンビで参戦していたModulo Nakajima Racingは、シリーズ戦では第7戦SUGOで2位表彰台を獲得したが、その他のレースで思うようにポイントを重ねられず、ランキング12位という結果で終えていた。

 そんなModulo Nakajima Racingは、2020年にドライバーふたりが入れ替わることになった。TEAM KUNIMITSUに移籍した牧野、そしてスーパーGTから退くことを表明していたカーティケヤンに代わって、ARTAから伊沢、そして2019年までGT300クラスで戦っていた大津が加入したのだ。

 1月の体制発表後、チームはマレーシアのセパンで行われたウインターテストに参加し、2020年モデルのホンダNSX-GTをシェイクダウンした。テストではシェイクダウンに由来するトラブルもたびたび起きたが、ダンロップタイヤの開発など濃密なメニューをこなしていった。

 メインにステアリングを握ったのは、その開発力を買われチームに加わった伊沢だ。「僕はスーパーフォーミュラでも乗っていた(2018年)ので、チームのメンバーも知っていますし、中嶋(悟)さんとレースができるのが好きなので、今シーズンは楽しみです」と伊沢は2020年に向けて語った。

「クルマはトラブルも出たりしましたが、ダンロップタイヤは乗った印象としては、クセがなくて比較的乗りやすいです。パッと乗って、自分が合わせたりしなければいけない部分はないですね」

■ルーキー大津が驚いた伊沢のコメント力

 そして、伊沢が「若い世代のなかでちゃんとしている」と評するのが、今季初めてのGT500でのシーズンに挑む大津だ。過去にもセパンテストでGT500のステアリングを握った経験もあり「夜はコースが見えない部分もありながらやっていますが、思っていた以上にクルマには馴染めていると思います」とテスト前半を振り返った。

「今回は64号車のシェイクダウンということで、トラブルもあってメカニックさんも大変な中でやっていますが、昨年もSFのテストでも乗らせていただいていますし、知っている人が多いので、チームの雰囲気もやりやすいですね」

 また、大津が何より驚いたというのは、大津が小学生の頃から知っている存在だという伊沢の“コメント力”だ。レーシングドライバーで重要なのはもちろんスピードだが、的確に車両の状態を感じ取り、それを表現することも求められる。

「初めて一緒にやって、無線を聞いていると、伊沢さんのコメント力や表現がすごいんです。指摘するポイントも細かいですし、エンジニアに伝わりやすい表現をしています。そこは本当に見習わないといけません」と大津は興奮気味に伊沢の“すごさ”を語った。

「シェイクダウンだからいろいろなところに気をつけないといけませんが、僕が走ってコメントするよりも、伊沢さんは何倍も細かいところに気付くんです。メカニックさんも作業がしやすいと思いますし、すごさを感じました」

■同じ目標を掲げるふたり。そして速さをみせたい大津

 そんなModulo Nakajima Racingのふたりにそれぞれ目標を聞くと、「まずは一勝」と同じ答えが返ってきた。

「もちろん全ドライバーが一勝はしたいと思いますが、この恵まれた環境でレースをさせてもらえることがありがたいですし、まずは優勝を目指していきたいと思います」と大津は言う。そして、大津がその目標とともに目指すのが、自らの速さをアピールすることだ。

「僕自身としては、予選でトップを獲りたいという部分もあります」と大津。

「ポールポジションと優勝を必ず獲りたい……という強い気持ちで戦いたいです。今年はルーキーの同世代のドライバーが多いので、比べられる対象がいっぱいいる。そのなかで速さをみせたいですし、タイヤ開発の面など、能力として上げなければいけない部分もいっぱいあるので、伊沢選手と組めるこの一年でできるだけ吸収して、成長したいと思っています」

 2019年は、カーティケヤンがスーパーGT×DTM特別交流戦で優勝を飾ったが、公式戦での勝利は得られなかったModulo Nakajima Racing。伊沢の開発力と円熟味を増した速さ、そして大津のフレッシュな勢いで、昨年果たせなかった目標を掴み取りにいく。

スーパーGTセパンテストでのModulo Nakajima RacingのホンダNSX-GT

© 株式会社三栄