未来の利益は票にならない?! 選挙ドットコムちゃんねる #10-1

今回の選挙ドットコムちゃんねるは、前回お休みだった松田さんが登場しいつもの3人でお届けします。
定番コーナーの「選トピ」で最新の選挙情報をお伝えするほか、ついに始まった第201回通常国会で気になるポイントについて、いくつかピックアップ!

すると「現世利益」なる、聞きなれない選挙用語まで飛び出して、立候補する政治家はもちろん、今後の国の方向性や自分たちの生活をその政治家に託す私たち有権者の投票時の姿勢についてまで話が広がっていきました。
「将来のためにも、選挙に行かなくちゃ!」と考えさせられるトークは必見です!

ではダイジェストでその内容をお伝えしていきましょう。

松田氏は、思わず正座して見た!

乙武 「前回は松田さんがお休みだったから、JX通信社の米重さんが出演してくださったんですよ。何してたんですか?」

松田 「あっはっははは」

乙武 「初回からずーっと出てきて、松田さんの予想をもとにした議席予測の回だけ来ないなんておかしいでしょ! 逃げた?」

松田 「お、おかしいですね。いや別にあの逃げたわけじゃなくてですね」(笑)

乙武 「ホント? タイミング良すぎでしょ!」

松田 「もともと僕、毎回出るっていうお話じゃなかったんですよ。選挙ドットコムのジャイアンみたいな社長さんに『松田さん、月1くらいでいいから』って言われてたのに、気が付いたらなんか毎回出てるなって」

乙武 「まあ前回は、米重さんをゲストに迎えて松田さんの予想を見ていったんだ。番組的には松田さんの予想をメッタ斬りしてもらったほうが盛り上がったんだけどさ、意外に高評価でしたよ」

松田 「そうなんですよね。もう、ドキドキしながら番組見ました。『欠席裁判』とか言われてるし、どうしようって思ったら……米重さん、いい人だなあって思いましたね」(笑)

乙武 「でもなんかヨイショしている感じじゃなくて『選挙の予測をされる方は、名前だけ見てテキトーに丸つける人も多い中、松田さんはきちんと数字をもとにして分析されているので、私がやってもそう遠くない予測になると思います』っておっしゃってた」

松田 「ありがとうございます、米重さん! たしかに彼と私の予測は似てるとは思います。過去の選挙結果をもとに数字の積算で見ていくという予測の仕方をしているので。

各陣営の動きとか人間関係とかだけでは予測しないという点では、米重さんの手法と共通していると思います」

千葉 「すごいですよね。一つ一つ選挙区全部を予測していくのって」

松田 「289の選挙区に一つの選挙区あたり5分以上は時間をかけて、じっくり予測を立てていくので、年末の12月20日くらいから作業を始めたんですけど、年末年始ずーっとかかりっきりになってやってました。

発表した予測については、いろいろとご批判もあると思うんですが、予測してほしいと雑誌社の方に依頼されても、現時点ではまだ誰が立候補するかさえきちんと決まっていないので『そりゃちょっとできないですよ』っていう感じではあったんです。

でも、現段階で僕なりに仮定というか条件を細かく設定して予測を立てたわけです。『全選挙区で野党間の選挙区調整がついて、野党が合流して、共産党がほとんどの選挙区で候補者を立てない』というような、野党にとって理想的な状況になったらどうなるか、という予測をしてみたわけです。

ただ実際の選挙になれば、僕が仮定した環境に近いものになるのではないかと思うので、一定の正確性についてはきちんと考えてやりました、ということです」

乙武 「なるほどね」

松田 「でも番組はすごくドキドキしながら見ましたよ。あ~自分が出てないとこんな感じなんだぁって思って。正座して見ました」(爆笑)

千葉 「松田さんの衆議院選議席予想をまだ見ていらっしゃらない方は、前回の放送をぜひご覧ください!」

大津市市長選、小西氏の落選原因は「オヤジギャグ的キャッチコピー」?

乙武 「今週の選トピでは、まず選挙結果から見て行こうかな。注目されていた大津市長選はどうなったかな?」

千葉 「こうなりました。さとう健司さんが当選です」

乙武 「おお、けっこう差が開きましたね」

松田 「予想外の大差になりましたね、最終的に。さとう健司は自民党の県議会議員だった方で、大津市の選挙区で連続トップ当選されている知名度・人気ともにあるような方でして。

一方、こにしさんはやはり新人で知名度がなかったと。とくに出馬表明が11日30日と非常に遅れてしまったことも影響しているのかなと思います。

立憲や国民などの野党がこにしさんを支援して現職の越市長の後継者ということで、継続か刷新かというのが選挙のテーマの一つになったわけですけれど、その現職の越市長が実はあまり支持率が高くなかった。

5年前の選挙では、越さんは2期目の当選をされているんですが、そのときは新人が乱立したので得票率が42%くらいで当選されたんです。いわゆる新人の票割れで2期目もなんとか勝てたというところもありまして。現職の絶大な人気を持って、こにしさんを後継指名したわけじゃなかった。

また、元自民党県議のさとうさんは、今回は完全無所属で立候補されました。これまでの実績を考えれば、普通なら自民党県連が推薦するところを支援にとどめて、ある意味自民党色を少し薄めて無党派層にも食い込んだから、大きく差がついたということだと思います」

乙武 「僕は、こにしさんサイドの最大の敗因は『コシからコニシへ』っていうオヤジギャグみたいなだっさいキャッチコピーなんじゃないかと思うけど。客観的にだだ滑りだなんだけど、中にいるとイケるって思っちゃうのかな?」(笑)

松田 「なんかね~、選挙の現場ってみんな好きなんですよね、そういうオヤジギャグ的なやつ。
『意外と覚えやすいんじゃないの?』なんて。とにかく知名度がないから、名前を憶えてもらいたいっていうのがあって、必死に考えたんだと思うんですけど。なにか工夫しなきゃいけない厳しい選挙だったってことだと思います」

乙武 「気になるのが投票率。39.77%! 低いね~」

松田 「大津市という土地は『大津府民』という言葉があるような場所で。これは『埼玉都民』と同じような意味なんですけど、大津市は京都駅まで10分、大阪駅にも40分くらいで出られるので、その両方のベッドタウン的な側面があるんですよね。

そうすると、住んでいる大津市自体にはあまり関心がない『新住民』という言われ方をする無党派層が多くて、あまり投票率が上がらないんです。

逆に大津の奥の方は、古くから住む人が多い周辺の旧町と合併している地区という側面があるので、その辺の住民の方は積極的に選挙に行くし、そういう地域では自民党が強いという側面もあるんです」

乙武 「なるほどね」

「しょぼい政党」からも候補者が出た八王子市長選

千葉 「続いては今後の注目選挙です。1月26日には八王子市長選がありますね。3選を目指す現職に3人の新人が挑むという構図になっています」

乙武 「ん? この『しょぼい政党』ってなに?」

松田 「これ、僕も最初、誤植かと思ったんですけどね」(笑)

乙武 「パッと見て『間違うにしても失礼すぎるだろ』って思ったんだけど、ご本人たちがそう名乗ってんの?」

松田 「そうなんです。えらいてんちょうこと、えらてん氏が率いるということで、ネットでも少し話題になっていますね」

編集部注:えらてん氏 「えらいてんちょう」こと、えらてん氏は、YouTuber。シェアハウスの共同運営やリサイクルショップのほか、「イベントバーエデン」などをオープン。「しょぼい自己啓発シリーズ」など著書も執筆しており、2019年には単行本「NHKから国民を守る党の研究」がベストセラーに。

松田 「政党というか政治団体ですね『しょぼい政党』を旗揚げされて、今は立派なホームページもできて運営されています。

えらてんさんはYouTubeのご自身の動画でもN国をいろいろ批判されていて、本も出しておられますが、その中でご自身も政治団体を立ち上げて、新人の方が立候補するという流れですね。

名前は『しょぼい政党』なんだけど、掲げている政策や理念はかなり本格派というか、問題を単純化せずにしっかり議論していくという姿勢を打ち出しています。

こういう姿勢がネットや若者世代にどう受け入れられるのか興味がありますし、八王子市長選挙に実際に立候補する方が、どういう主張をしていくのかにも注目です。

また、今回は『市』という基礎自治体の長の選挙なんですが、これまでN国の立花さんなんかはこうした基礎自治体の選挙に、党の知名度を上げるという目的でいろいろ出ていましたが、しょぼい党もN国同様、知名度UPを意図して候補者を立てたのか、それとも八王子に関することで主張したいことがあるのか、そういったところを見ていきたいなという感じですね」

乙武 「立候補した小柳さんって方自身はどんな履歴なんですかね?」

松田 「まだ情報が少ないですね」

千葉 「最近『しょぼい』ってちょっと流行ってますかね? 最近『しょぼい起業』っていうフレーズを耳にしましたけど」

松田 「なんですかね。あんまり無理をしないとか」

乙武 「いきなりハードル上げないっていうような意味なのかな」

松田 「いわゆる意識高い系に対するアンチテーゼというか。謙虚な感じなんですかね。不思議な語感だなとは思いますけど。ちょっと注目していきたい」

京都市長選では、れいわが新人の共産党候補を推薦

千葉 「続いては、京都市長選を見ていきましょう」

松田 「何度も取り上げてきた注目選挙ですが、いよいよ告示されましたね。2月2日投開票。
4選現職に新人2人が挑む形です」

乙武 「何か新しい動きや情報はあるんですか?」

松田 「ひとつはれいわ新撰組の山本太郎さんの動向です。山本さんがどの候補を支援するか注目されていたんですが、共産党の福山さんを推薦されました。

今回、現職の門川さんに対して自民、公明の府連だけじゃなく、立国や国民などの府連も推薦しているということで、国政での与野党が相乗りしているという少々わかりにくい構図なんです。そこに、共産党と市民派が推薦する福山さんをれいわ新撰組が推薦することが確定して、山本代表も応援に駆け付けたと。

京都は歴史的に見ても非常に共産党の勢力が強いという中で、ほかの与野党共闘の地域とは少し別の力軸があるんですね。参院選でも京都には共産党が独自候補を立てて当選させていますし」

乙武 「れいわの推薦は、福山さんにとっては当然、追い風になるわけですよね?」

松田 「追い風になるとは思いますが、れいわ新撰組自体は各社の世論調査であまり支持率が伸びていない。NHKの調査では逆に下がっていますし。

もちろん山本太郎さんが演説すれば、ものすごい人が集まって盛り上がった雰囲気にはなるんですけど、それがどの程度得票に影響が出るかはちょっとわからないですね。

一方、現職の門川さんは組織をまとめている分、有利なんじゃないかって言われていますけど、もう一人の新人の村山祥栄さんも京都を地元としてずっと活動してきた実績のある方なので、どのくらい村山さんが票を伸ばしてくるのかということも含めて、非常に混戦模様ですね」

予算100兆円越え? 桜を見る会やIR追及は? 見どころいっぱいの通常国会がスタート

千葉 「続いてのトピックスは、始まったばかりの第201回通常国会についてです。会期延長がなければ6月17日まで行われるわけですが、今回気なるポイントはありますか?」

乙武 「年末までずーっと桜を見る会問題をやってましたし、さらにIRの汚職なんかも出てきて、そのあたりの追及にどのくらい時間が割かれるのかなってところはひとつ、注目だと思いますが」

松田 「野党側は桜やIR問題をしっかり追及していくと言っていますね。その追及の中で、今まで知られていなかった事実が明らかになったりとか、適法だっていってたけど実は違法なところまで踏み込んでいたとか、進展が欲しいところですよね。

IRについても実際に名前が挙がっている人以外に2,000万円という大金を受け取った議員がいるなんていう噂もありますが、捜査の進展友絡んで野党側が的確に追及できるかというところが大事なのではないかと。

追及の仕方を失敗しちゃってグダグダになると『批判ばっかりで物事がさっぱり進んでいない』とネガティブな見方をされるリスクもあります。これは野党の支持率にもダイレクトに影響してくると思いますね」

乙武 「不祥事問題の追及は、野党にとっては諸刃の剣ってわけですね」

松田 「ええ。一生懸命批判しても支持率が上がらないっていうのは、これまでも傾向としてあります。内閣不信任案を出しても、支持率が上がるどころかむしろ下がっちゃったりね。こういう調査結果もあるので、野党としてはこうした機会に実のある追及や真相がちゃんと明らかになるような追及ができるかどうかってところがとても重要になってきます」

乙武 「千葉ちゃんが気になるのは?」

千葉 「2020年の予算案が注目だって聞いたんですけど、100兆を超えるかっていうのは、実際どのくらい大きな金額なのかなって、気になっています。けた外れの大金だということはわかえるけど、ちょっとイメージできないですよね、100兆円って」

松田 「すごいですよね、金額。約25年前は66兆くらいだったかな」

乙武 「そっからほぼ1.5倍になってるわけですね」

松田 「予算が膨らんだ理由として言われるのが社会保障費の増大。年金、健康保険、介護などの保健福祉関係の費用がどんどん増えていっていると。高齢化がそれだけ進んでますからね。

こうしたなかで増える支出を補うために消費税増税が必要だというのもあったんですけど、組まれた予算が何にどの程度使われるのかってところも、今後我々も真剣にチェックしていく必要があると思います」

乙武 「僕いつも不思議に思うんだけど、この社会保障の増大は喫緊の課題ではあるんだけど、今現在の政治家の怠慢っていうよりは、これまでの政治家たち何やってきたの? っていう疑念がわいてくるわけですよ。

だって、統計の数字を見ればさ、間違いなく将来こういう時代になるっていうのは予測できたはず。少子化とか高齢化とかね。

少子化問題で言えば、どうやったらみんなが子育てしやすくなる環境を作れるかだったり、高齢者が増えていくんだから予防医療に力を入れて健康寿命を増やしていく施策が必要だみたいなことって、今になってようやく語られるようになってきたけど、ちょっと手遅れ感あるんじゃないのと。

なんで20年前、30年前の政治家はそこやっておいてくれなかったの?ってすごく思うんですけど」

松田 「少子化っていうのはずっと前から言われていて、出生率が2を割ったときも報道で大きく取り上げられたりして社会的に関心も高まったんです」

編集部注:出生率が2.0を下回ったのは1975年のこと。

松田 「それでもなかなか政治的に有効な政策が取られなかったのは、いろんな説がありまして。たとえば小泉進次郎議員の育休問題でもいろんな意見がありましたけど、基本的に国会議員をやられている方っていうのは男性が非常に多くて、かつ早くから多忙な議員活動をしていて、あまり子育てを自分でしていない人が非常に多いんです。

そして官僚も同じ傾向にある中で、子育てに関しては『女性の仕事』っていう古い古い価値観が支配的でもあって、政策的に手当てをして少子化対策するっていう姿勢になかなかならなかったというのは言われてますよね」

目先の利益を誘導する公約だけで選ばない、賢い有権者になろう

**

乙武** 「なるほどそう考えると、今の政治家の皆さんには、今現在の社会課題を解決していくのはもちろん大事だけど、30年後50年後の日本社会の構図を見据えてそこに打つべき手を今から打っていく、ということも大事になってくるわけですね」

松田 「非常に大切だと思います。そういうことを政治家から積極的に発信してほしいし、メディアもそこを取り上げてもらいたい。

また我々、有権者もやはり考え方を少し変えていかないといけないと思いますよ。よく選挙現場だと『現世利益』という言い方をするんですけど、有権者に訴えるときに目の前で困っている人の課題を解決するすることこそ、票につながるみたいな考え方があるんですよ。

目の前のあなたに、私を選べばこんなメリットがありますよという政策を出さないと、なかなか票を入れてもらえないという現場の議員さんや関係者の実感なんですが。

我々の代表である政治家から将来についてもしっかり発信していただきたいと思いますが、一方で有権者も将来を見据えた政治家や政策の選び方をしていかないと、10年後20年後、どんどんじり貧になっていくというのは乙武さんのおっしゃる通りだと思います」

乙武 「現世利益には票が付くけど、未来の利益には誰も票を入れてくれないってわけですね」

千葉 「実際、そうですよね。自分に関係あることしか考えなくなっちゃう」

乙武 「でもそうやってると国が先細っていくんだよってことを、我々も深く肝に銘じなくちゃいけないですね」

松田 「そのとおり。たとえば、いろいろな投票形式の議論の中にね、実験的なものですけど『デーメニ投票方式』というのがありまして。お子さんがいらっしゃる場合は、子ども1人で0.5票、2人子どもがいると親は子どもの分を含めて2票投票できるようにする、という提案もあるんですよ。

年代のバランスが非常にいびつなので、未来の世代が影響を受けることも決める選挙では、投票権のない未来の世代の分として親が代わりに子供の票を投票して1とか0.5票分でカウントしていこうというね。子育てをしている世代の意見がより反映される投票形式ですね」

編集部注:デーメニ投票方式 別名ドメイン投票方式。選挙年齢未満で選挙権のない子供の親権者に対し、その子供の数だけの投票権を追加して付与する投票方式のこと。子供にも投票権を与え、親がその投票権を代行することになる。ドイツでは2003年、2008年にデーメニ投票方式(子供投票権)の導入について議会で議論されたが実現には至っていない。

乙武 「おもしろいですね。我々は、将来の子どもたちのためにもしっかり政治家を選ばなきゃいけないんだから、やっぱり投票に行かなくちゃいけないよね。今回、すごくそれを実感しました。では、今日はここまで!」

 

選挙ドットコムちゃんねるは毎週火・水・木曜日に配信中!

新感覚の選挙・政治情報チャンネル「選挙ドットコムちゃんねる」は毎週火・水・木曜日に新しい動画を公開しています!

選挙の裏側や真相系のネタは、「なるほど」とためになると同時にワイドショーよりも新鮮でおもしろく、エンタメ性も抜群かも…?!

ぜひチャンネル登録をよろしくお願いします!

チャンネル登録はこちらから>> 

© 選挙ドットコム株式会社