政府は28日、中国湖北省武漢で発生した新型コロナウイルスによる肺炎を感染症法に基づく「指定感染症」とすることを閣議決定した。中国での死者が100人を超える一方、日本国内でも武漢からの観光客を載せたバス運転手の感染が確認されるなど、猛威がおさまる気配はない。2014年の中東呼吸器症候群(MERS)以来となる指定は感染拡大を防ぐのが狙いとされる。具体的にどのような対応が可能になるのか。ポイントをまとめた。(共同通信=松森好巨)
▽強制的入院
患者や感染した疑いの強い人に入院を勧告でき、拒否すれば強制入院させることができる。入院先は設備や態勢が整った全国約400の指定医療機関で、入院中の治療費は公費で負担する。
▽就業制限
患者が接客業や食品加工業など感染を広げる恐れの高い仕事に就いている場合、業務に就くことを制限できる。
▽消毒、医師の報告義務
汚染が確認された場所の消毒が可能となる。患者を診断した医師には保健所への報告が義務付けられる。
▽過去の事例
感染症法が施行された1999年以降、指定感染症となった事例は4例ある。
・重症急性呼吸器症候群(SARS)=03年=
・H5N1型鳥インフルエンザ(06年)
・H7N9型鳥インフルエンザ(13年)
・中東呼吸器症候群(MERS)=14年=
感染症法では、危険性に応じて五つに分類し、それぞれ対策を定めている。指定感染症はその五つのどれにも分類されていないが、それの拡大によって生命や健康に重大な影響を与える恐れがあり、迅速な対応が必要と認められた感染症が指定される。
指定によってエボラ出血熱などの「1類感染症」や重症急性呼吸器症候群(SARS)などの「2類感染症」などと同レベルの措置が法改正を経ずに可能となる。「1類」では流行地域への交通遮断や建物への立ち入り制限なども行えるが、今回の新型肺炎はそれより1段階低い「2類」と同等の扱いになる 。
「指定感染症」の指定期間は最長1年間。必要に応じて1年に限り延長することができる。これまでに指定された感染症はその後、いずれも2類感染症へ分類されている。
新型肺炎について政府は28日、空港や港で感染が疑われる人の検査や診察を指示できる「検疫感染症」にも指定した。指定感染症と合わせ、2月7日に政令を施行する。