ハリー・スタイルズ『ファイン・ライン』 歌詞とサウンドの見事なマリアージュ

ハリー・スタイルズ『ファイン・ライン』

 ワン・ダイレクションのハリー、2年半ぶりのセカンド・ソロ・アルバムです。アイドル・グループのメンバーという制約から離れ自らの名前をアルバム・タイトルに冠した前作では6分に及ぶサイケデリックなロック・バラードを披露、本格的なシンガー・ソングライターとしての才能を見せてくれました。新作ではそれをさらに昇華、多彩なサウンドと成長した彼の詞が見事に融合した作品が出来上がりました。

 内省的であった前作に比べポジティブで開放感溢れるサウンドが印象的ですが、ここで注目されるのは詞の内容にぴったりなサウンド作りをしている点。フリートウッド・マックを連想する「ゴールデン」、ジョニ・ミッチェルを思わせる「キャニオン・ムーン」などオリジナルなサウンドにこだわらず70年代のレジェンドたちのレガシーを前向きに取り入れ、詞のイメージを膨らませます。「トリート・ピープル・ウィズ・カインドネス」(思いやりをもって人に接する)と題された一曲からはLGBTや社会問題に取り組む彼の心意気が感じとれます。

(ソニー・ミュージック・2200円+税)=北澤孝

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