新型肺炎「早く収束してほしい」 中国人を見掛けない 長崎ランタンフェス2020

新型肺炎の影響が懸念される長崎ランタンフェスティバル=長崎市新地町

 新型コロナウイルスの感染が世界中に広がっている。政府は28日、感染症法上の「指定感染症」に指定。「もし感染者が出たら」。県内でも自治体などで対応が加速した。折しも、長崎市では春節(旧正月)に合わせた「長崎ランタンフェスティバル」が開催中。観光や経済への影響を心配する声も上がる。

 24日開幕した「長崎ランタンフェスティバル」。例年大勢の中国人観光客が訪れるが、今年は新型肺炎の影響で「街中で中国人の姿をほとんど見掛けない」との声も聞かれる。会場周辺を歩いた。
 28日午後。同フェスのメイン会場湊公園。平日の昼間とあって人影もまばら。ある露店店主は「こんなに人出が少ないことはあまりない」。長崎市の公務員の男性(36)は「観光は痛手でしょうね。書き入れ時なのに…」と言って、閑散とした場内を見渡した。
 中国政府は新型肺炎の感染拡大を食い止めるため、海外への団体旅行などを一時停止。27日、中国発着のクルーズ船の長崎寄港が突如中止になり、28日には、同フェスに出演予定だった中国の二つの芸術団の公演中止も決定。余波は広がっている。
 街中で中国人と思って声を掛けると、台湾や香港の人ばかりだった。量販店で買い物中だった香港在住の女性(20)は「新型肺炎は怖い。(消毒用の)アルコールのミニボトルを持ち歩いている」と警戒。単身アジア旅行中のカナダ人男性(23)は「友人からアジア各地を巡っていることを心配されている」と苦笑した。
 街中から少し離れたところで中国出身の留学生の女の子たち4人と出会った。出身地はバラバラだが、新型肺炎の“震源地”とされる中国・武漢からはいずれも遠い。学生の一人は「深刻には受け止めていない」。
 だが、武漢出身で長崎大に留学している女子学生(25)は事情が違った。約1カ月前から親戚が新型肺炎に似た症状で入院。他の家族は自宅から一歩も出ない日々が続いている。毎日電話で状況を尋ねているが、不安は消えない。
 女子学生は「2月に帰国する予定だったが、家族に『危ないから帰ってくるな』と言われて中止した」と声を落とした。
 日が暮れ、ランタンの明かりが街を照らしだすと、中華街や湊公園周辺に人々が集まり始めた。「早く収束してほしかね」。同フェスの関係者が漏らした。この日、何人もの人たちから聞いた言葉だった。

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