WEC:ポルシェ、最高峰クラス復帰に関心示す。トヨタ含む他陣営もLMDhプラットフォームを注視

 ポルシェは1月24日にデイトナで発表されたACOフランス西部自動車クラブと、IMSA国際モータースポーツ協会によるグローバル・プラットフォーム『LMDh』に関心を示し、「詳細について評価」することを明らかにした。これはドイツの名門ブランドがプロトタイプカーの最高峰カテゴリーへ復帰する可能性があることを意味する。

 2017年限りでWEC世界耐久耐久選手権/ル・マン24時間レースの最高峰カテゴリーであるLMP1クラスから撤退して以来、ポルシェはLMHル・マン・ハイパーカーと、IMSAのDPi 2.0プラットフォームの初期段階のワーキンググループに参加していたことが知られているが、2019年夏以降はこの場から一歩退いた。
 
 しかし先週、デイトナ・インターナショナル・スピードウェイでACOとIMSAによる共通グローバル・プラットフォームの採用合意が発表されたいま、ポルシェはこの議論に復帰しようとしている。

 ポルシェAG研究開発部門の取締役メンバーのひとりであるミハエル・シュタイナーはSportscar365との独占インタビューの中で、ル・マン24時間とデイトナ24時間、セブリング12時間で同じプロトタイプ・プラットフォームのクルマが総合優勝を争えるとした、2022年からの収束プラットフォームを「高く評価する」と述べた。

「これは私たちのスポーツにとって歴史的な瞬間であり、スポーツカーレースや我々の業界、そしてファンにとって非常に前向きなメッセージだ」とシュタイナー。

「我々はIMSAとWECのトップカテゴリー規制の収束によって誕生する新しいプラットフォームを高く評価している」

 シュタイナーは、ポルシェがLMDhプラットフォームを評価することを認め、運営予算がGTE/GTLMと同じかそれ以下であれば、コミットメントの最終的な呼びかけを「ずっと簡単にする」ことを認めた。

「私はモータースポーツ部門の同僚たちに新しいプラットフォームについてのすべての詳細、特にそのようなクルマを開発しこの興味深い、新しいプラットフォームに参加するのにどれだけの労力が必要になるのかを評価するように依頼した」

「まだ詳細や規則そのものが明らかにされていないため、(最終的な)判断を下すのは時期尚早だ。しかし、(彼らが新たに生み出す)アイディアは正しい決定だと考えている」

「これは、現在のGTE/GTLMの概念と似ている。935s、956/962、さらには911 GT1が活躍した時代の規則と同様に、歴史的な重要性を持ったものだ」

 なお、シュタイナーはポルシェのLMDhプログラムが、WECおよびウェザーテック・スポーツカー選手権でシリーズチャンピオンを獲得したワークスGTE/GTLMプログラムを犠牲にして実現するのか、という問いに答えるのは「早すぎる」と述べた。

「まず、我々が意見を述べるためにはすべての詳細を知る必要があります」と彼は言う。「しかし、それとは別に、私はIMSAとWECにこの歴史的な決定を下したことを祝福したいと思う」

2020年のデイトナ24時間レースに参戦したポルシェ911 RSR。912号車と911号車がGTLMクラス2位、3位となった。

■BMW、ランボルギーニ、トヨタも慎重に注視していく姿勢

 現時点ではトップカテゴリーに参戦していないが、新しいプロトタイプ規則に興味を示しているとされてきたBMW、ランボルギーニ、トヨタ・レーシング・デベロップメント(TRD)の3社は、LMDhに関するさらなる技術情報の開示を待っている。

 週末に行われたデイトナ24時間で、2019年大会に続くGTLMクラス2連覇を達成したBMWのGTEプログラムは2020年シーズンまでウェザーテック・スポーツカー選手権に留まることが確認されている。そのためBMWモータースポーツのイェンス・マルカルト代表は「すぐに行動を起こす必要はない」と述べる。

「我々は(IMSAの)プラットフォームをよく理解している。また、WECについても知っているし、あらゆるものの浮き沈みや欠点についても分かっている」と彼はSportscar365に語った。

「我々はLMDhの動向を見ていく必要がある。だが、それは私たちの側からすぐに行動を起こすという意味ではない」

「BMWは今後、規則や戦略についてすべてが展開されるのをじっくりと見ながら新しいプラットフォーム上で何ができるのか、将来のレギュレーションと戦略について議論を進めていくことができる」

BMWチームRLLは2年連続でデイトナ24時間GTLMクラス優勝を達成。2019年は25号車、2020年は24号車BMW M8 GTEがレースを制した。

 IMSAのDPiプログラムを評価していたイタリアのスーパーカーブランドは、このグローバル・プラットフォームが「本当に有益なもの」として捉えている。
 
 Sportscar365は最近、ランボルギーニがDPi 2.0プログラムの取締役会への提案を中止したことを理解しているが、ランボルギーニモータースポーツのボスであるジョルジョ・サンナは、いかなる形の決定にも「近づいていない」と強調した。

「DPiは非常に優れたカテゴリーであり、とてもによく組織され、マーケティング指向でリーズナブルなコストであるため、メーカーはカスタマーレーシングのビジョンを持ってこのカテゴリーにアプローチできる」と語ったサンナ。

「今後数カ月をかけて、ふたつのコンセプトのクルマをどのように管理していくのかが分かる。我々はそれを注視していく予定だ」

「もちろん検討する。このようなグローバル・プラットフォームのクルマを持つことは我々にとっても非常に有益なことだからね」

 一方、トヨタ・レーシング・デベロップメントの社長兼ゼネラルマネージャーを務めるデビッド・ウィルソンは、同プラットフォームが2021/22年シーズンのWECでデビューすることがOEMにとって「難しい側面」のひとつになることを認めた。

「この発表に先立って、IMSAは2022年の新規則デビューを見込み、2020年第1四半期(に規則を最終決定すること)を約束した」と述べたウィルソンは「それは厳しいスケジュールである」と続けた。

「このシリーズのファンであり、明らかにこの分野に興味を持っている人間として、私たちはセブリング(での発表)を楽しみにしている。皆、より詳細な情報がテーブルに示されるのを待っているんだ」

 またウィルソンは他メーカーと同様に、レクサスもLMDhへの注視を続けるものの、現時点では新規定に対してコミットする立場にないことを強調している。

2020年デイトナ24時間レースのGTDクラスウイナーとなったポール・ミラー・レーシングの48号車ランボルギーニ・ウラカンGT3 Evo
IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のGTDクラスに参戦しているエイム・バッサー・サリバンの14号車レクサスRC F GT3

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