借入額は適正か?世帯年収1500万の共働き夫婦の住宅購入

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、世帯年収1500万円の30代共働き夫婦。マイホーム購入のために8700万円の借り入れを考えているといいますが、はたして適正な額なのでしょうか。FPの横田健一氏がお答えします。

現在の住居が手狭になってきたので、新しく住居を購入しようと考えていますが、ローンの借入金額が適正か不安です。アドバイスいただけると幸いです。

<検討している物件と住宅ローン>

物件所在地:東京都内

物件種類:マンション

借入金額:8700万円(諸経費込み)

金利:0.43%予定(変動)

方法:ペアローン

配分:住宅ローン控除額が最大になるようにシミュレーションし、配分を検討。

その他:ローン金利より投資の利回りの方が高いため、諸経費含めてフルローン予定。

ちなみに、これまで家計簿をつけたことはなく、節約もせずにわりと好きに使ってきたので、記載した各支出はざっくりとしたものになります。価値を損なわない範囲で、できるだけ無駄をなくし(格安SIM、電力・ガス自由化、ふるさと納税、医療費控除を活用、大きな買物は比較検討してからなど)、使う時にはパーっと使う(海外旅行年2回、国内旅行年4回、過去には輸入車の所有など)という価値観です。

子どもは1人で、親としては小学校から大学まで国公立を希望していますが、子どもの希望によっては私立や海外の学校も行かせてやりたいと思っています。

現在のところ、税込年収で夫1000万円、妻500万円。夫は比較的ビジネス環境や職種に恵まれている企業に勤めているので、手堅く見ても30代後半で1500万円、40代前半で1800万円程度までは昇給する見込みです。妻の年収は微増程度で、大きくは変わらないと思われます。退職金は、夫4500万円、妻は数百万円程度だと思います。

年収からすると、少し背伸びをしている借入金額のように思えて不安が大きいです。よろしくお願いします。

〈相談者プロフィール〉

・男性、33歳、既婚(妻:34歳、会社員)

・子ども1人:4歳

・職業:会社員

・居住形態:賃貸

・毎月の手取り金額:75万円

・年間の手取りボーナス額:360万円

・毎月の世帯の支出目安:50万円

【支出の内訳】

・住居費:10.4万円

・食費:10万円

・水道光熱費:2万円

・教育費:3万円

・保険料:1万円

・通信費:0.5万円

・車両費:1万円

・お小遣い:10万円

・その他:10万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:不明

・現在の貯蓄総額:1700万円

・現在の投資総額:400万円

・現在の負債総額:なし


横田:ご相談いただきましてありがとうございます。株式会社ウェルスペントのファイナンシャルプランナー、横田健一です。

住居を購入されるにあたり、住宅ローンの借入額が適正か確認したい、というご相談ですね。

住居購入に伴う「住宅ローンの返済額」と「発生する費用」

まずは住宅ローンの返済額がどのくらいになるか、さらにはマンションということで、どういった費用が発生するのかを確認していきます。

返済年数が記載されていませんが、ここでは35年(420回)で返済すると仮定して計算してみます。8700万円を借入金利0.43%で借り入れ、35年で返済する場合、毎月の返済額は22.4万円(千円未満切り上げ)となります。

また、不動産を所有することで、今後は固定資産税・都市計画税が発生しますので、ここでは年額15万円(月額1.3万円 ※千円未満切り上げ)と仮定。さらに今回はマンションということで管理費・修繕積立金が発生します。ここでは月額3万円と仮定させてきます。

つまり、マンションを購入することで、今後の住居費(住宅ローン完済までの35年間)は、以下のようになります。

22.4万円+1.3万円+3万円=26.7万円

長期的には、固定資産税・都市計画税は低下していき、管理費・修繕積立金は増加していくことが一般には想定されますが、ここでは一定と仮定しておきます。

住宅購入後に支出が増加するも、黒字は継続?

住宅購入後は、住宅を維持するために最低でも月額26.7万円ほどの負担になりますから、現在の住居費10.4万円と比べると、住居費は16.3万円増加することになります。

つまり、毎月の支出目安が現在の50万円から、66.3万円に増加するわけです。

しかし、現在の手取り収入は月額75万円で、それに加えてボーナスで手取り360万円ということですので、家計としては今後も年間464万円ほどの黒字になることが期待されます。

今後の収入、支出は変動する可能性も

単年度の家計としては大幅な黒字になることが期待されますが、今後の収入や支出としてはどのような変化がありうるのか、少し長期的な視点で確認してみましょう。

主な変動要因としては、次のようなものが考えられます。

・ご主人様の昇給

・ご夫婦の退職金

・住宅ローン控除による税額控除

・住居購入・団体信用生命保険加入に伴う生命保険の見直し

・マンション専有部(主にエアコン、給湯器、水回りなど)の修繕費用

・お子様の教育費 大学まですべて国公立であれば1000万円程度

このうち、40代前半までで800万円程度は増加するというご主人様の昇給が想定通り実現すれば、家計としてはかなり安全な状況になります。

一方、支出として最も大きく増加すると思われるのはお子様の教育費です。大学まですべて国公立であれば1000万円程度と言われていますが、私立や海外といった場合には、2000万円、3000万円といった金額になることも十分考えられます。

またマンションの専有部の修繕費用が長期的には発生してきます。エアコンや給湯器の交換(一般的には10~20万円)、またキッチンや浴室などが老朽化したときの交換工事は100万円単位の負担が発生することになります。

このようにプラス要因、マイナス要因とそれぞれありますが、現時点ですでに貯蓄と投資をあわせて2100万円お持ちであることも含めて考えると、家計的に苦しくなる可能性は低いのではないでしょうか。

リスクに備えてすべきこととは?

ご主人様の収入アップが想定通りになれば、もちろん問題はないと思いますが、何らかの事情により想定通りにならない可能性もゼロではありません。そういった状況に備えて、リスク管理を適切に行っておくことは重要です。

社会保険(遺族給付や障害給付)や職場の福利厚生(死亡退職金、死亡弔慰金、遺児育英年金、健保の付加給付など)を確認の上、足りないと思われる場合には民間の保険などを利用してリスク管理をしておくことが大切です。


以上、ポイントをまとめますと以下のようになります。

1.現在想定されている住宅ローンを借りたとしても、家計的には十分な黒字が維持できると考えられます。

2.住宅購入後のライフプランをイメージしながら、収入、支出の大きな変動要因を確認しておきましょう。

3.様々なリスクに備える際には社会保険や職場の福利厚生をきちんと確認の上、足りない分については民間の保険などを活用しましょう。

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