これが太陽の表面。ハワイの太陽望遠鏡が高解像度画像と動画を公開

全米科学財団(NSF)がハワイのハレアカラ山(マウイ島)に建設を進めていた「ダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡」。1月29日、完成した同望遠鏡によって撮影された太陽表面の画像と動画が公開されました。

■太陽望遠鏡としては世界最大、直径4mの主鏡で観測

こちらがダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡によって撮影され、今回公開された画像のひとつです。太陽の表面における3万6500km四方の範囲を写したもので、ガスの対流によって生じる「粒状斑(りゅうじょうはん)」と呼ばれる模様に表面がびっしりと覆われている様子が写し出されています。太陽の赤道における直径はおよそ139万kmとされていますから、画像の一辺の長さはおおむね直径の38分の1ということになります。

粒状斑が変化する様子を捉えた動画もあわせて公開されています。粒状斑は一つ一つの幅が1000kmほどで、ガスが上昇してくる部分は明るく、沈み込んでいく部分は暗く見えています。太陽の表面をこれほど高精細に観測できるのは同望遠鏡が初めてで、ディレクターをつとめるThomas Rimmele氏はSky & Telescopeに対し「期待を上回る画像だった」と喜びを表現しています。

標高3067mのハレアカラ山頂に建設されたダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡は2010年に建設が始まり、2019年に完成。先の画像と動画は2019年12月に撮影されたものとなります。太陽にはおよそ11年の活動周期があることが知られていますが、同望遠鏡では2060年代まで、少なくとも4回分の太陽活動周期に渡り観測を実施することが予定されています。

同望遠鏡は太陽望遠鏡としては世界最大となる直径4mの主鏡を備えています。主鏡のベースとなる素材には加熱されても膨張しにくい性質を持つドイツ企業製の「ゼロデュア」というガラスセラミックを採用。主鏡が反射した光を副鏡へ到達する前に大幅にカットすることで観測機器の負担を抑えている他に、万が一に備えて太陽光を遮断する安全システムを用意するなど、熱への対策も入念に施されています。

なお、望遠鏡の名称は、ハワイ出身のアメリカ合衆国上院議員であったダニエル・イノウエ氏に由来します。同望遠鏡による本格的な科学観測は、今年2020年の後半から開始される予定です。

Image Credit: NSO/AURA/NSF
Source: NSF/ Sky & Telescope
文/松村武宏

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