私立高校の授業料は、所得に応じて無償化および軽減の対象となる世帯もありましたが、2020年度より制度が改正。年収590万円未満の世帯の生徒を対象に、支給の上限額が引き上げられます。今回は、独自の私立高校授業料の無償化制度を展開している大阪府の制度について紹介していきましょう。
私立高校の授業料無償化制度がスタートした経緯
私立高校は、国公立の高校と比べて学費がかかります。そのため、子供たちの中には高校の進路を選択する段階で、家庭の経済的理由により私立高校への進学を諦めてしまうということも。各世帯の所得に関係なく、だれもが私立高校の教育を受けるチャンスを手に入れるべく、授業料を実質無償化する制度を実施。
大阪府では、全国に先駆け2019年度の新入生から、従来よりも手厚い私立高校の授業料の補助制度を運用しています。
大阪府・私立高校授業料における無償化対象支援金
大阪府では、私立高校授業料に関して府独自の授業料支援補助金と、国が管轄する就学支援金の2つの無償化対象の支援金を展開しています。詳細については以下のとおりです。
高等学校等授業料支援補助金
大阪府では、「高等学校等授業料支援補助金」という独自の制度を運用しています。この制度は、家庭の年収に関係なく、子供が自らの希望や能力に合う高校を自由に選べるよう機会を与えつつ、保護者に対して授業料の無償化および軽減を図っています。
なお、この制度は、大阪府の私立高校へ通っている生徒だけでなく、府内の国公立高校に通う生徒も対象です。
就学支援金
「就学支援金」とは、国が展開している「高等学校等就学支援金」のことを指します。 保護者の経済的負担をなくしたり、軽減したりすることによって、私立高等学校等に通う生徒が卒業まで勉学などに打ち込める環境を提供しています。
所得基準および支給額
大阪府の私立高校の授業料について、どのくらいの基準で補助金が支給されるかは気になるところかもしれません。所得基準および支給額は次のとおりです。
こちらでは、授業料年間60万円と年間65万円の例をピックアップします。また、所得年収が590万円から910万円未満の範囲は、私立高校生の子供を含んだ扶養する子供の数で負担額に違いが生じます。
授業料が年間60万円・大阪府内の私立高校の場合
(単位:円)
世帯の目安年収 国の就学支援金 府の支援補助金 支給の年間合計 保護者負担額 250万円未満 297,000 303,000 600,000 0 250万~350万円未満 237,600 362,400 600,000 0 350万~590万円未満 178,200 421,800 600,000 0 590万~800万円未満 1人の子供を扶養する場合 118,800 481,200 600,000 0 2人の子供を扶養する場合 118,800 381,200 500,000 100,000 3人の子供を扶養する場合 118,800 281,200 400,000 200,000 800万~910万円未満 1人の子供を扶養する場合 118,800 381,200 500,000 100,000 2人の子供を扶養する場合 118,800 181,200 300,000 300,000 3人の子供を扶養する場合 118,800 0 0 481,200
(平成31(2019)年度以降に入学する皆さんへの授業料支援制度について|大阪府より筆者作成)
授業料が年間65万円・大阪府内の私立高校の場合
(単位:円)
世帯の目安年収 国の就学支援金 府の支援補助金 学校の負担額 支給の年間合計 保護者負担額 250万円未満 297,000 303,000 50,000 650,000 0 250万~350万円未満 237,600 362,400 50,000 650,000 0 350万~590万円未満 178,200 421,800 50,000 650,000 0 590万~800万円未満 1人の子供を扶養する場合 118,800 481,200 50,000 650,000 0 2人の子供を扶養する場合 118,800 381,200 50,000 550,0000 100,000 3人の子供を扶養する場合 118,800 281,200 50,000 450,000 200,000 800万~910万円未満 1人の子供を扶養する場合 118,800 381,200 0 500,000 150,000 2人の子供を扶養する場合 118,800 181,200 0 300,000 350,000 3人の子供を扶養する場合 118,800 0 0 118,800 531,200
(平成31(2019)年度以降に入学する皆さんへの授業料支援制度について|大阪府より筆者作成)
※上記の表の年収の目安は、夫婦のどちらかが働き、高校生1人、中学生1人の家族とする例
支給対象となる条件
支給対象の条件は、以下のとおりとなっています。
授業料支援補助金
府独自の制度「授業料支援補助金」は、対象の生徒および保護者(=親権者全員)が大阪府内に住所があり、かつ大阪府内の「私立高校生等就学支援推進校」として指定された私立高校等に在籍していることが条件です。ほかにも国の「就学支援金」を受給していることも支給対象の条件として含まれています。
なお、私立高校生等就学支援推進校に関する情報は、以下のページから確認できます。
参考
平成31年度 私立高校生等就学支援推進校(高等学校 全日制・通信制)|大阪府
就学支援金
国の制度である「就学支援金」は、保護者(=親権者全員)の都道府税所得割額と市町村民税所得割額を合わせた金額が507,000円未満となっている世帯の生徒が対象です。
全日制高校へ通っている場合、支払われる就学支援金は、月額9,900円(年額:118,800円)と定められており、最大で支給額が2.5倍となります。
ただし、保護者の所得が所得制限額を超えた場合は、支給の対象から外れることになります。
参考
高等学校等就学支援金の申請はマイナンバーで!|大阪府
申請手続きに必要なもの
大阪府の場合、「就学支援金」の申請は、スムーズに手続きができるようマイナンバーを申告して行っています。
入学時にマイナンバーを提出し、支給の審査が通り、その後も所得制限の対象から外れることがなければ、卒業まで原則手続きが不要となります。東京都などのように毎年決められた時期に手続きすることがなくなるとともに、課税証明書を取得する手間も省けます。
申請には以下のいずれかのものを用意しておきましょう。
- マイナンバーカードの裏面
- マイナンバーの通知カード(※緑色の用紙に印字)
- マイナンバーが記載された住民票(※住民票記載事項証明書でも可)
また、生活保護受給世帯で税の申告をされていない方は、「生活保護の受給証明書」も必要となります。
そして、府の制度「授業料支援補助金」の申請に関しては、該当年度の「都道府県民税所得割額と市町村民税所得割額」の合算額を証明する書類(※「就学支援金」でマイナンバーの情報を添付してたら書類不要)と住民票(※生徒名および保護者名が記載されているもの)を申請前に用意します。
留意点
大阪府の私立高校授業料の無償化または軽減に関しての留意点は、支援金を受給する前に学費の納期が来る場合は授業料をいったん納付する必要があるという点です。申請してもすぐには、各個人に支給というフェーズには至らず、まずは在学校へ振り込む流れとなります。
また、入学金および実費精算を行う教材費や修学旅行積立金などの授業料以外で使う納付金は、支給の対象から外れます。
まとめ
大阪府の私立高校授業料の無償化の制度は、府独自の「高等学校等授業料支援補助金」と国の「就学支援金」の2つで運用されています。ただし、「高等学校等授業料支援補助金」に関しては、大阪府内の在住でないと適用されないので注意が必要です。
支給金額に関しては、世帯の年収だけでなく、申請対象となっている生徒の兄弟姉妹の年齢と数により違いも発生します。また、申請の手続きはマイナンバーの提示が必須。一度手続きをしたら変更がない限り、卒業まで毎年更新の手続きもないのが特徴です。
参考
補助金と奨学金|大阪私立中学校高等学校連合会
平成31(2019)年度以降に入学する皆さんへの授業料支援制度について|大阪府
高等学校等就学支援金制度|文部科学省
私立高等学校等の授業料無償化制度の手続きについて|近畿大学附属高等学校・中学校