日常生活から認知症検知 IoTとAIを活用 行動データ把握分析 長崎大が今月から実証実験を開始

会話型知能ロボットを使い、生活行動のデータを集めるデモンストレーションを行う関係者=長崎市文教町、長崎大

 長崎大大学院工学研究科の小林透教授と、同大学病院脳神経内科の辻野彰教授の研究グループは、会話型知能ロボットとモノのインターネット(IoT)、人工知能(AI)を活用し、高齢者の生活行動のデータを集積して認知症の予兆を検知するシステムを開発した。今月から同病院で実証実験を始める。

 目的は早期発見。認知症を専門とする同内科の宮崎禎一郎助教によると、現在は認知症が完治する治療法はない。ただ、早い段階で治療を始めれば進行を遅らせることはできるという。小林教授は「長崎に多くある離島では専門医の数が限られる。実用化し、症状の出始めを検知したい」と話す。システムで予兆を捉え、その後に専門医の診断を仰ぐ効率的な医療サービスを構築したい考えだ。
 研究グループはこれまでも会話型知能ロボットが高齢者に年齢や日付などを質問し、回答内容からAIが「認知機能障害」を検知するシステムを開発。昨年度の実験では医師の診断と85%が合致した。
 今回のシステムは、認知症の診断で重要となる「生活機能障害」を把握、分析する。室内の家電などに動きを感知できる約3センチの小型センサーを取り付けてIoT化。冷蔵庫のドアやカーテンを開けた回数などのデータを会話型知能ロボットを介してクラウドサーバー上に集積するほか、ロボットがカメラの機能を使って、きちんと服薬できているかなども確認する。
 ウエアラブル端末を身に着けてもらい、外出の回数や歩行量、会話量、活動範囲などのデータも集める。家での行動データと合わせて数値化し、認知症の予兆となる▽外出が減る▽会話が減る-などの傾向がないかAIが分析する。
 小林教授は「近い将来、ぜひサービス化に挑戦したい。新年度までに実験を終えて、普及に向けた手をうちたい」と話している。

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