<解説>遺構保存へ妥当な判断 県庁跡地の文化ホール整備断念

 長崎市が県庁跡地での「文化芸術ホール」建設を断念したのは、県市ともに同跡地で見つかった遺構の価値を理解し「現時点で建物を建てていく判断は難しい」(中村法道知事)との見方で一致した結果といえる。同跡地の活用を巡っては、整備方針の検討に手間取った経緯がある上、県市はようやく打ち出した方針の再検討を迫られることになり、一連の判断の甘さは批判されるべきだ。ただ、開発による重要遺構の破壊を回避し保存・活用を模索する上で、建設断念の選択自体は妥当と評価していいだろう。
 県庁跡地でのホール整備が現実味を帯びた一昨年秋、歴史専門家から遺構破壊を懸念する声が上がり始めた。県は「既に壊され遺構はほぼ残っていない」とみていたが、「残っている」とする専門家らが昨年5月「長崎県庁跡地遺構を考える会」を発足させ世論を喚起。昨年10月からの調査で江戸前期の遺構が出土し、県が委嘱した専門家が高く評価したことで、市は早い時点で同跡地での整備断念を考えていた。
 県は今後、見つかった遺構などの詳細な調査を進める考え。同会は「同跡地の価値や重要性を理解した上で、何を造るか考えるべきだ」と主張してきた。長崎の「発祥の地」にふさわしい活用策を再度、しっかり見極める契機とすべきだ。

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