県内私立中入試始まる 首都圏の受験者数は増加、多様化も

湘南白百合学園中学で算数1教科入試会場に向かう受験生ら=1日午後、藤沢市

 私立中学入試が1日、県内でも始まった。2020年度に公募する県内私立中は58校で、うち50校がこの日に集中。首都圏1都3県の受験者数は、少子化にもかかわらず大学入試改革も見据えて増加傾向が続く。社会の変化に伴い重視される学力育成に呼応する私立が、今年も人気を集めている。

 複数の女子校がある横浜市中区山手町では1日朝、受験生が保護者に付き添われ志望校の試験会場に向かった。塾関係者も沿道に並び激励した。

 大手進学塾・栄光ゼミナールの推計では、首都圏の20年度中学受験者数は前年比約3%増の約5万1千人と見込んでいる。同・日能研によると、東京への人口集中が特に進み、首都圏の小学校卒業生数は29万人台を回復した19年より今年は約3千人増加。保護者世代に中学受験経験者が多いことも背景にあるという。

 入試の多様化も拡大している。首都圏では4教科が主流だが、算数1教科入試も年々増加。栄光ゼミナールの集計では、湘南白百合学園中学(藤沢市)が1日午後に新設するなど48校で実施、約6校に1校が導入している。

 日能研の中学受験専門誌「進学レーダー」の井上修編集長は「今後は文理融合の時代なので理数系にも力を入れていることをアピールできる」と分析。午前受験との併願が可能となる上、受験生負担軽減の側面もあり1日午後に集中しているという。

 湘南白百合学園中学では、4教科入試(2日午前、募集人員45人)とは別に15人募集の算数1教科入試に147人が出願した。「一定の割合で医学部に進学する生徒がいる。理数的な能力・論理的な思考力を身に付ける学びをサポートしたい」とする同中学は「新しい入試形式がプラスに受け止められた」とみている。

 県内の今年の私立受験について、井上編集長は「6年間多様な力を身に付け、いろいろな形の大学入試に対応できる中高一貫校の人気が続いている。英語や海外留学を含めた国際教育、高大連携に力を入れている横浜女学院中学(横浜市中区)の志願増などが目立つ」という。

 大学定員の厳格化などによる付属校人気が継続する中、井上編集長は先を見据えた学びの形として高大連携にも注目。「時間をかけて、自分に合った大学を選ぶことができる」とした上で、「社会に出て活躍できる素地を作るキャリアガイダンスに力を入れている学校が人気を集める」と展望している。

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